ミツオカ・オロチ(MR/5AT)【試乗記】
我流は点睛を欠かず 2007.08.31 試乗記 ミツオカ・オロチ(MR/5AT)……1100.0万円
“免許取り立ての人でもすぐに乗れるスーパーカー”がコンセプトの「ミツオカ・オロチ」。その真意を探る。
リアのツインショックはこだわり
2007年5月に国交省の型式認定を取得したことを受け、「ミツオカ・オロチ」のプレス試乗会が開催された。2001年の東京モーターショーでの初登場から6年の歳月を経て、本当に発売されることとなったのだ。そのコンセプトは、“免許取り立ての人でもすぐに乗れるスーパーカー”。パワーなどスペックを競うのではなく、まずはそのスタイルを楽しんでもらいたいとメーカーである光岡自動車はいう。
それにしても、撮影中や試乗中にここまで注目されたのは久しぶりのことである。「フェラーリ」や「ランボルギーニ」の比ではない。まわりのペースに合わせて走っているのに、前の車がどんどん道を開けてくれる。他のどんな車にも似ていない、どこから見てもオロチだとわかるこのデザイン、筆者は結構好きである。
そのボディの下は、光岡自身の手になるオリジナルのスチール製スペースフレーム。前後ダブルウィッシュボーンサスペンションで、リアは左右にそれぞれ2本ずつのダンパーを持つ。フロント部分にはラジエターを挟む形でアルミ製の衝撃吸収装置「クラッシュボックス」を採用。四角く囲まれたフレームの中に収まるエンジンはトヨタから供給される3MZ-FE(北米用「ハイランダー」や「ハリアーハイブリッド」などが搭載する)で、5段ATが組み合わされる。
誰もが乗れるスポーツカーを目指したのだから、性能面でフェラーリやランボルギーニはおろか、間違っても「ホンダNSX」とハンドリングを較べてもいけない。しかし、オリジナルのフレームを作ったことからもわかるように、手抜きは一切なく、我流を通す。
高速向きの足まわり
タウンスピードでのゴツゴツとした突き上げはけっして小さいものではなかったが、スポーツカーとして想像の範囲内。大きめの段差を超えた時など、FRPにスチールのドアをつけたボディが、まったくガタピシいわない、というわけでもない。
足まわりと後方から聴こえてくるエンジン音、アイポイントの低さ、ボディの大きさなどでオロチを運転していることを意識させられるが、その実、あまりにフツーに走り出したので、背の低い「クルーガーV」でも運転しているかのようだった。
100km/h走行時、エンジン回転数は5速でちょうど2000rpm。3.3リッターのV6エンジンは加速時に少々重たさを感じた。シフトノブに目をやると、MTモードを持たない、ODボタンの付いた5段ATがあるだけ。ここはレザーのインテリアに見合った色気が欲しい。
100km/hを超え、120km/hあたりから途端に足がしなやかになる。長距離ドライブも快適にこなせそうだ。140〜150km/hという速度域になると、もう少しリフトを抑えてほしいと思う。しかし、オロチはあくまでスタイルが命。ここはトレードオフということになるのだろう。
拡大
|
4年間で400台を受注生産
シャシーの開発責任者である寺尾公伸氏は元ホンダのエンジニアでATの開発を行なっていた。また、足まわりのセッティングをはじめ、開発アドバイザー/テストドライバーを務めたのは、元マツダで「RX-7」や「ロードスター」の操安性を担当していた小田昌司氏である。小田氏は特にリアのスクォットを抑えることに注力した。エンジンを囲むフレームは角型のパイプで、比較的剛性を取りやすかったという。
15名ほどの職人による手作りの車ゆえ、年間生産台数は100台、今後4年間で400台を受注生産する予定である。根っからのクルマ好きは見向きもしないかもしれない。おどろおどろしいまでのスタイルに魅せられた、いわゆるエンスーとはベクトルの異なるクルマ好きが主なユーザーになろう。
現在の受注状況は約50台。6月中旬現在で、正式注文すると来年の5月頃納車になるという。今欲しいという顧客も多く、新たな予約が入る一方で、すぐ手に入らないとわかると、キャンセルされるのがメーカーのもっぱらの悩みだとか。
(文=中村昌弘/写真=荒川正幸/『CAR GRAPHIC』2007年8月号)
拡大
|

中村 昌弘
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
NEW
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。

