街は黙ってグッドデザイン 大矢アキオの「ミラノ・デザインウイーク2026」
2026.05.18 画像・写真派手なインスタレーションより印象的だったもの
2026年4月20日から26日まで、世界屈指のデザインイベント「ミラノ・デザインウイーク」がイタリアのミラノで開催された。
個人観覧が可能な催しが限られるファッションウイークと異なり、デザインウイークは多くの市内イベントが一般入場可能、かつ無料だ。したがって例年どおり、期間中の宿泊施設は高騰し、満室が相次いだ。飲食施設も大きな賑(にぎ)わいをみせた。イタリアの商業団体、コンフコメルチョの地域支部によれば、2026年は前年比14.5%増の2億5500万ユーロ(約469億円)の経済効果を生み出したという。
いっぽうで、関税や地政学的リスクが暗い影を落とす昨今、それをもろに受けている自動車業界は参加が減るのではと、筆者は危惧していた。だが実際には、OEM(完成車メーカー)やメガサプライヤーなど、筆者が確認できただけでも約20社が参加していた。
開催前に発信されたフィアットからの第一報は、2025年に続いて靴下ブランド、ガッロとのコラボレーションだった。それを聞いてやや複雑な心境に陥ったが、続報として別の会場で「CIAO FUTURO!(こんにちは未来)」と題した企画もあることがわかった。内容はトリノとローマのデザインスクール2校の学生による、フィアットをテーマにした研究発表である。学生たちは“巨匠”ジョルジェット・ジウジアーロ氏や、今日のフィアットデザインでヘッドを務めるフランソワ・ルボワン氏の講評を仰げるという、貴重な機会を得た。派手なインスタレーションに走りがちなデザインウイークのなかで、若い才能を発掘する企画を大切にしたのはおおいに評価すべきだ。
いっぽう、街なかで印象的だったものがある。ドゥオモに続く街路に駐車していた「メルセデス・ベンツW201(190シリーズ)」と、屈指のデザイン街区、トルトーナの壁際にたたずんでいた「ホンダ・スーパーカブ」だ。前者は長年大切にしているオーナー、後者はその新しさから“おしゃれピープル”のものとみた。いずれも優雅やモダンというより、武骨という言葉が近い。それでも「良質で永続性のある造形とは」という、今、最も論じられるべきデザイン的疑問を、無言のうちに私たちに問うていたのである。
(文と写真=大矢アキオ ロレンツォ<Akio Lorenzo OYA>/編集=堀田剛資)
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1/24フィアットは鮮やかな配色で知られる靴下ブランド、ガッロと2025年に続きコラボレーションを展開。ラッピングしたマイクロカー「トポリーノ」を街なかに走らせた。
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2/24フィアット×ガッロによる「トポリーノ」。ベスパに乗る女子2人にとって、ちょっとしたサプライズになったようだ。
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3/24フィアットが開催した、デザイン学校の生徒による研究発表会「CIAO FUTURO!(こんにちは未来)」は、トルトーナ地区のイベントスペース「マンガ・パルス」で開催された。最初に迎えてくれたのは“ヌオーヴァ500”こと2代目「フィアット500」だった。まずは「過去」からいざなう仕掛けだ。
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4/24ステージには初代「パンダ」の空冷仕様「30」が。スクリーンにはそのデザイナーで、今回は学生デザインの講評を務めたジョルジェット・ジウジアーロ氏が投影されていた。
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5/24「CIAO FUTURO!」より。デザインスクールIEDの学生、ガブリエレ・メノッツィ氏が提案した「フィズ」のスケールモデル。速く走ることを追求せず、街の駐車時間をいかに開放的な“マイ・スペース”(オフィス、安らぎ空間など)にできるかを研究したものだ。
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6/24「CIAO FUTURO!」の会場にはテーブルサッカーゲームも。フィアットが若者に支持されるブランドであり続けようという努力とみた。
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7/24これも「CIAO FUTURO!」より。会場の一角ではナポリのエスプレッソマシン企業、アロマとの共創による新機種「ドルチェヴィータ」が公開され、来館者にコーヒーが振る舞われた。
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8/24イタルデザインの展示ホールで。同社が手がけたTKエレベーター社製家庭用モデル「H300NXT」。「レッドドット・デザインアワード2026」のウィナーである。
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9/24イタルデザインによる「TKE H300NXT」のキャビン内。シンプルを突き詰めた操作パネル部分に注目。
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10/24連載「マッキナあらモーダ!」の第960回で紹介したルノーのフラッグシップストア、Rnltより。「トゥインゴE-Techエレクトリック」のオフィシャルグッズが並んだ一角。パーツを切り離す前のプラモデルを想起させる。
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11/242024年には発表直後の「アルファ・ロメオ・ジュニア」を展示して話題をさらった紳士ファッションブランド、ラルスミアーニ。今回のコラボレーション先はヒョンデの高級ブランド、ジェネシスだった。
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12/24ラルスミアーニのブティック内で。展示車は世界耐久選手権(WEC)に2026年から参加しているジェネシスの競技車両「GMR-001ハイパーカー」である。
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13/24GAC(広州汽車集団)のミラノ・デザインスタジオは、同施設が開発を主導した電気自動車「アイオンUT」を展示した。欧州仕様は委託先のマグナ(オーストリア)で生産され、イタリアでも2026年中の発売が予定されている。
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14/24ミラノの中心部に位置するサン・バビラ教会からの風景。ビルの間にはアウディによる謎の巨大ビルボードが。
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15/24そしてモンテナポレオーネ通りにも。いずれもアウディとザハ・ハディド建築事務所によるインスタレーションの告知である。詳しくは筆者による連載「マッキナあらモーダ!」第960回を参照いただきたい。
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16/24トヨタ紡織は2011年からミラノにスタジオを有し、毎年、自動車用シートの未来を提示している。今回は製作に熱可塑性ポリウレタンと3Dプリンターを駆使した「T-CORE」を出展。座圧マッピングも設計プロセスに統合し、「コンフォート」「リラックス」「スポーツ」という3種のシートを用意した。
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17/24トヨタ紡織の展示「T-CORE」。旅客機用シートへの応用も視野に入れているのがわかる。参考までに、同社はすでに、ANAと普通座席の開発実績がある。
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18/24以下7点は、ミラノの街なかで印象に残ったものを。屈指のデザイン街区トルトーナに出現したケロッグのポップアップストア。同社は2025年7月からチョコレート菓子で知られるイタリアの食品メーカー、フェレッロの傘下となった。
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19/24ステランティスのイベント会場かと勘違いするような光景。実際は欧州製ジープとしては空前のヒット作となった「レネゲード」と、ミラネーゼの足として人気の「フィアット・トポリーノ」が偶然ペア2組で並んだものだ。
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20/24期間中、市内には出展企業がチャーターした送迎車が縦横に走り回っている。黒い「メルセデス・ベンツVクラス」はその超定番である。そればかりか、さっそくこのイタリア第2の都市で“いちばん目撃頻度が高いメルセデス”になってしまった。
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21/242026年のミラノは「ホンダ・ジャズ(日本名フィット)ハイブリッド」のタクシーが一気に増えていた。
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22/24ミラノ中央駅で。馬車の時代から車寄せだった部分を活用して2025年に設営された“カプセル”は、かつてイタルデザインの建築部門だったジウジアーロ・アルキテットゥーラによるもの。10店舗がテナントとして入居できる設計である。
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23/24「メルセデス・ベンツW201(190シリーズ)」。“サッコ・プレート”がドアに付加される前の初期型である。
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24/24ポルタ・ジェノヴァ駅近くで。鉄道用地の壁をバックにたたずんでいた「ホンダ・スーパーカブ」。






























