マツダ・デミオ SPORT(FF/CVT)/13C-V(FF/CVT)【試乗速報(後編)】
デミオというよりマツダ2(後編) 2007.07.27 試乗記 マツダ・デミオ SPORT(FF/CVT)/13C-V(FF/CVT)……174万0650円/148万6400円
広島が主導権を握って開発されたフォードグループ内のコンパクトモデル「マツダ・デミオ」。ミラーサイクルエンジンにCVTを組み合わせた燃費重視モデルに乗った。
100kgの軽量化
3代目となった「マツダ・デミオ」のプレス試乗会は、神奈川県は横浜のホテルを基点に行われた。
会場に赴くと、ホワイトボディことデミオのドンガラが置かれ、前後足まわり、エンジン+CVTなどが展示されている。机の上にはサスペンションのパーツが新旧ならべられ、それぞれに説明が付く。「フロントロアアーム:8.8→5.6kg」「リアトーションビーム:23.1→17.5kg」と、いかに軽くなったかが示される。
「もってみてください」とエンジニアの方にうながされ、「フロントスタビライザー:2.9→1.3kg」と書かれた新旧スタビライザーを交互に手にすると、なるほど、新型用は軽い。
「今回は、中空にしたんです」とエンジニア氏は胸をはる。
新しいデミオは、これまで以上にグローバル化を目指したコンパクトハッチだ。欧州名は「マツダ2」。モデル全体の燃費の向上が図られ、軽量化に注力された。そのため、代が替わるたびに大型化するクルマが多いなか、新デミオのボディサイズは、全長×全幅×全高=3895(-40)×1695(+15)×1475(-55)mmと、むしろ小さくなっている(カッコ内は先代比)。
車重は、970〜1070kg。先代は1060〜1180kgだから、ほぼ100kg軽くなった。厳しくなる一方の衝突安全性を確保しての数値だから、立派だ。カタログ燃費は、16.0〜17.8km/リッターから17.8〜23.0km/リッターに向上。これまた、立派だ。
「ロードスター開発時の“グラム作戦”に匹敵するきめ細かな努力を積み重ね」とプレスインフォメーションには記される。「ボンネットのヒンジ小型化(-0.69g)」「シフター周りの板厚変更(-0.85g)」「ワイヤリングハーネス経路の見直し(-2.86g)」といった具合。いかにもスポーツカーに関して一家言あるマツダが手がけた5ドアハッチである。
「スタイル」と「実用」のせめぎ合い
ニューデミオ、2490mmのホイールベースは変わらないが、フロントにより多くのクラッシャブルゾーンを取るため、前輪車軸より前は5mm延びた。一方、リアのオーバーハングは45mm短縮され、全体として40mm短くなった。“凝縮したダイナミズム”をテーマにしたボディデザインは、これまでと一転、すいぶんとスタイリッシュに。
欧州仕様そのものといっていい上級版「デミオSPORT」(1.5+CVT)に続いて、いわゆる燃費モデル「13C-V」(1.3+CVT)に乗った。
ドアを開けると、「カームホワイト」と呼ばれる白地のシート。柔らかい座り心地。黒いパイピングが施され、なかなか洒落ている。使われるファブリックは“クリーナブル”と謳われ、コーヒーやジュースをこぼしても染み込みにくく、拭き取りやすい加工が施されるという。とはいえ、実用車として長年使った場合どれだけ汚れるかは、“ちょい乗り”リポーターにはわからない。
おもしろいと思ったのは「マガジンラック付グローブボックス」で、これはグローブボックスのリッド手前上面を四角く切り抜いて、地図や雑誌を縦に差せるようにしたもの。ありそうでなかったアイデアである。
センターコンソールには抜き差しできる仕切板が備わり、前席左右間のスペースがちょっとしたモノ置きになる。灰皿はカップ式のオプション装備となった。
ところで、新しいデミオは車高が低くなったうえ、天井左右にカーテンエアバッグを収納できるようにしたため、室内高は、フロントで30mm、リアで21mm低くなった。ここらへんは「スタイル」と「実用」のせめぎ合い。
後席は着座位置を下げて頭上空間を稼ぐことで、大人用としてなんとか使えるレベルになった。ただしクッションは平板。中央にはヘッドレストも3点式シートベルトも備わらないから、実質2人用となる。
グローバルな3代目
テスト車の「13C-V」は、“ミラーサイクル”エンジンを搭載した燃費重視モデルである。10・15モード燃費は、23.0km/リッターとスペック表に記載される。
専用の1.3リッター直4ツインカムは、圧縮過程で吸気バルブが閉じるタイミングを遅らせることで、実質的に膨張比率を上げ、高効率を狙った。ノーマル1.3の圧縮比が10:1であるのと比較して、こちらは11:1(膨張比)。前者の91psと12.6kgmに対し、アウトプットはやや控えめな最高出力90ps/6000rpmと最大トルク12.2kgm/4000rpmを発生する。
かつてマツダは、過給機付きエンジンの効率の悪さとミラーサイクルエンジンのトルクの細さを相互に補完させるV6を、「ユーノス800」に搭載したことがあった。今回は、デミオの車重の軽さと、同社の普通車としては初めて採用したCVTのフレキシビリティの高さで、ミラーサイクルエンジンの弱点をカバーできると判断。「13C-V」のワングレードながら、カタログに載せた。
……といった説明を受けたあとで試乗にのぞんだのだが、直前に1.5リッター(113ps、14.3kgm)の「SPORT」を試乗していたこともあり、「1.3+CVT」モデルは「正直に遅い」と思った。特に、アクセルペダルを踏んだ際、実際の加速が始まるまでにタイムラグがあり、せっかちなリポーターはまだるっこしく感じた。おっとりした性格のドライバーにはいいかもしれない。国内専用モデルである。
フォードグループ内のコンパクトモデル用プラットフォームを使ったクルマとして、先陣を切って市場に投入されたマツダ・デミオ。これまではフォード主導のもと、英国ダントンでベースが開発されたが、今回は特に軽量化技術がかわれ、広島が主導権を握った。グループ内の「マツダの地位向上がうかがわれる」というのは、昨今のブルーオーバルの苦境を見た場合、楽観的にすぎるか。
「マツダ2」として、生産の7割を輸出にまわすことを目論む新型デミオ。クリーンな外装とシンプルな内装をもつ3代目が、どれだけ国内で受け入れられるか。興味あるところだ。
(文=webCGアオキ/写真=峰昌宏、マツダ)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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