第36回:9月2日「ドイツ、ベルギー、フランス」
2007.07.15 「ユーラシア電送日記」再録第36回:9月2日「ドイツ、ベルギー、フランス」
『10年10万キロストーリー4』刊行記念!
「トランスフィンランディア号」の旅もようやく終了。ドイツ・リューベック港に到着する。ロシアとは違い、交通環境がよいヨーロッパの道。カルディナは一路、リューベックからパリに向かう。
リューベック入港
前夜、スチュワードの“ブロンソン”から朝7時に食事の招集がかかっていたので、6時半に起きる。窓の外は、もう陸地が至近距離に見える。海図で見ると、リューベックは細長く入り組んだ入り江の、さらに奥に位置している。「トランスフィンランディア号」が通ると、他に何も通れないぐらいギリギリだ。朝焼けを背にして静かに遡航していく様は、映画『地獄の黙示録』のウィラード大尉の気分だ。
ブロンソンからパスポートを返してもらい、下船。3日ぶりにカルディナを動かし、船の外へ。ADAC版の地図をくれたドイツ人トラックドライバーに、Tシャツのお返しをする。
サンクトペテルブルクのリサイクル・コンテナとは違って、ここの税関はちゃんとした建物だ。建物の前にカルディナを寄せると、グリーンの制式セーターを着たお爺ちゃん職員による、車両チェックが始まる。テールゲートを開け、ザッと見るだけで放免。ホンの1、2分で終了した。
そのあと、建物の中のFinnlines(バルティック・トランスポート・システム)の親会社で、運賃を支払う。カルディナ400ユーロ、乗員ひとり255ユーロ、合計910ユーロ(約11万8,000円)を現金で。
まぎれもないドイツ
港を出た途端に、景観の整理整頓ぶりに、強くドイツを感じる。標識、信号、車線、走行区分帯、クルマの停め方等々。すべてが人間の意志によってコントロールされている。野放しのロシアとは大違いだ。
ロータリーと信号をひとつ越え、アウトバーン「A1(E22)」に乗る。
十分な長さのランプウェイ、中央分離帯のある片側2車線路、130〜140km/hで流れている走行車線。追い越し車線は、150km/h以上だ。ときには、200km/h以上でスッ飛んでいく、アウディやBMWもいる。まぎれもない、ドイツ。まぎれもない、ヨーロッパの高速自動車道路。カルディナはどうかといえば、鏡のような路面と、良好な視界に助けられ、130〜140km/hをキープしている。
「A1」を南下し、ハンブルク、ブレーメン方面に進み、標識を見間違えたり、進路を迷ったりすることなく、すぐにケルン、ドルトムント。13年前に泊まったことのある、アーヘンを過ぎたら、もう先はベルギーだ。
アーヘン方面へのインターチェンジで、「ケルペン」と標識が出ていた。ケルペンにはミハエル&ラルフ・シューマッハー兄弟の生家があることを思い出し、カメラマンの田丸さんと話していたら、その先の道路際から見えた。ブリヂストンやビットブルガー(ビール)などのスポンサーロゴが描かれた建物が増えていた。
アーヘンには、かつてベルギーグランプリを取材するために宿を取ったことがある。スパフランコルシャンにホテルが取れなかったので、アーヘンから40〜50分かけて、国境を越えて通っていたのを思い出す。
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一気にフランスまで
何もないベルギー国境をそのまま過ぎ、アーヘン同様の懐かしい街、イオペンの脇を過ぎて、どんどん行く。真西に走れば、その先はもうフランスだ。
道路の良さもさることながら、ガソリンスタンドに“ヨーロッパ”を感じる。先に給油し、後払いなのだ。ロシアでは、頑丈なオリに入った小屋で、5リッター刻みに前払いしなければならなかった。ここでは満タンにしてからゆっくりとキャッシャーに向かい、店員が挨拶付きで会計してくれる。クレジットカードだって OK。サービスエリアのレストランや売店には商品が溢れ、清潔だ。当たり前のことが、日本を離れてたった1ヶ月なのに新鮮で、ありがたい。
インターネットで送稿する必要があるので、ネット環境の確実を期して、シャルル・ド・ゴール空港脇の「ibisホテル」にチェックイン。シングルルームが89ユーロ(約1万1,700円)だった。
(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

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