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【スペック】全長×全幅×全高=4415×1740×1475mm/ホイールベース=2620mm/車重=1400kg/駆動方式=4WD/2リッター水平対向4DOHC16バルブツインスクロールターボ(250ps/6000rpm、34.0kgm/2400rpm)/価格=252万円(テスト車=295万500円/スポーツパッケージ+CパッケージII+VDC=43万500円)(写真=郡大二郎)

スバル・インプレッサS-GT(4WD/4AT)【試乗記】

優等生の心配 2007.06.28 試乗記 河村 康彦 スバル・インプレッサS-GT(4WD/4AT)
……295万500円

5ドアハッチで登場した新型「スバル・インプレッサ」。2リッターのターボモデルに試乗。フットワークの良さは実感したが、快適さが重視されて気になることもあるという。
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それにしても……

「ドライバーズカーからの脱却」。新型「スバル・インプレッサ」の開発陣から発せられたコメントの真意は、「ドライバーだけではなく、乗る人すべてが快適さを共有できるクルマにする」ということのようだ。

しかしそうしたメッセージを耳にして、少々ショックを受けた“スバリスト”もいるだろう。そもそも、スバル自らが“ラリーフィールド生まれのハンドリングマシン”といったキャラクターを売り物としてきたフシがあるのだから、いまさら急に“軌道修正”を謳われても、「にわかには納得しがたい!」という声があがるのも無理はない。

なかでも、「インプレッサ=WRX」という思考回路ができ上がっていた人にとっては、新型のバリエーション展開そのものが戸惑いを感じさせるはず。何しろ、これまでのモデル全体のイメージリーダーだったターボ付きエンジンを搭載するのは1グレードのみ。しかも、「S-GT」という名称を名乗るそのモデルが積む心臓の最高出力は「わずかに250psに過ぎない」のだ。

6段MTの設定はなく、ブレンボ製ブレーキや可変コントロール機能を備えたセンターデフなど、従来のWRXシリーズがイメージづくりの基盤としてきたアイテムの存在もナシ……、という具合だから、これまでのWRXシリーズのファンにとっては、「もはや自分たちは見放されてしまったのか!?」と、不安の念が募るのも無理はない。

ここでタネ明かしをしてしまえば、実はそうした人々への回答は、後に控えている新しいSTIバージョンがまかなうことになる。現在鋭意開発中のこちらのモデルが、いわばこれまでのWRXの後継シリーズというわけだ。
「それにしても……」と、それでもまだ何となく腑に落ちない人は多いはず。自分もそのひとり。ひとまずそうしたコンプレインの気持ちを飲み込みつつ、件の「S-GT」をテストドライブしてみた。

標準では、16インチアルミホイール&205/55R16タイヤとなるが、テスト車には、スポーツパッケージの17インチホイール&205/50R17タイヤがオプション装着される。写真は16インチ。
標準では、16インチアルミホイール&205/55R16タイヤとなるが、テスト車には、スポーツパッケージの17インチホイール&205/50R17タイヤがオプション装着される。写真は16インチ。
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(写真=郡大二郎)
(写真=郡大二郎)
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少々惜しい

テストできたのはAT仕様のみ。そのオートマが、もはや“旧態依然”の感がある4速タイプというのが、「ツッコミどころ」のひとつ。
スタートシーンでの力強さに文句はないが、2速へとアップシフトされる段階でのショックは大きめ。各ギア間のステップ比が大きくなりがちな4段仕様である影響に違いない。シフトパドルは用意されないが、そもそもシフトのたびに大きなエンジン回転数の変動が生じる4段ATでは、たとえそれが用意されていても、マニュアルでのシフト操作を積極的に行う気にはなりづらいはずだ。

1.4トンを下まわる重量に250ps、34.0kgmを発生するエンジンの組み合わせゆえ、アクセルペダルを深く踏み込めば、十二分に強力な加速が得られるのはいわずもがな。
ただし、7000rpmに設定されたレッドラインに向けての高回転域のパンチ感は、率直なところ「従来型ターボのユーザーを乗り換えさせるにはやや不足気味」だった。“実用ターボ”としてはやや過剰で、“スポーツ・ターボ”としては刺激に欠けた気味ではあるのが、惜しいところだ。

(写真=郡大二郎)
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どうにも心配

一方、感動モノだったのは従来型を確実に凌ぐフットワークの接地感。特に新作サスペンションを用いた後輪側の接地性はすこぶる高く、路面の荒れたコーナーでガンガン追い込んでも、破綻の兆しすら示さない。グリップ感が失われない。
同時に、そうした走りの高性能ぶりを実現させつつ、際立つしなやかさを味わわせてくれる点を特筆をしたい。冒頭に掲げた「乗る人すべてに……」というフレーズを納得させる。
もっともそれで、やはりこれまでのWRXユーザーには、そんなフットワーク・テイストも「刺激が足りない……」と受け止められてしまう懸念はある。

テスト車は、オートマチックモデルで、MT仕様であればさらなる加速が得られたはず……といった点を考慮に入れても、新しいインプレッサターボには、もうすこし“演出”が必要だと思った。
新しいリアサスペンションの安定性をもってすれば、ステアリングのギア比をもうすこし高めて、よりシャープなハンドリング感覚を強調しても不安を感じさせないはずだ。加えて、高回転域にかけてのパワーの伸び切り感を増して、スポーツ派ドライバーの心をもっと巧みにくすぐる方法もあったろう。

運転視界がすっきりと開け、後席居住性は従来型を圧倒。しかも高度なフットワーク能力を備え、常にしなやかな乗り味と両立させた新型インプレッサ。たしかに優等生だ。
が、それだけに「優等生なんか欲しくない!」という人が大勢を占めたはずの従来型WRXユーザーをS-GTに引っ張ってくるのは至難の技。そこのところがどうにも心配になってしまう“新生”インプレッサ・ターボである。

(文=河村康彦/写真=郡大二郎、webCG)

(写真=郡大二郎)
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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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