シボレー・コーベット クーペ(4AT)【試乗記】
深い満足 2002.05.09 試乗記 シボレー・コーベット クーペ(4AT) ……598.0万円 「ツアー」「スポーツ」「パフォーマンス」と3つの走行モードを備えるコーベット。シボレーの誇るスポーツカーに乗った自動車ジャーナリスト、金子浩久は、5.7リッターV8のリズムとトルクにのって、決意?を新たにするのであった……。イグニッションオンと同時
「シボレー・コーベット」の実力は過小評価されている。1997年に登場した「C5」型こと5代目にあたる現行モデルに乗るたびに、そのスポーツカーとしての魅力の大きさにいつも感心させられてしまう。
「世のクルマ好きたちは、いったいこのクルマの良さをちゃんとわかっているのか!」“私設コーベット応援団員”としては、乗るたびに切歯扼腕せざるを得ない。今回も、そんな想いを抱きながら、エレクトロンブルーという鮮やかなボディーカラーの2002年モデルで都内から箱根を往復した。
まず、なんといってもコーベットの魅力のひとつはスタイリングにある。ダイナミックな「ロングノーズ・ファストバック」スタイルでありながら、フェンダーとボディのつながり具合、ルーフ、テールなど各部の造形が引き締まっているのは、旧型以前のコーベットから大きく変身したところだろう。4555mmの全長は、同じシボレーの「カマロ」より355mmも短く、カマロのライバルたる「フォード・マスタング」より100mm短い。1870mmの全幅もカマロより20mm細いのだ。実際の寸法も引き締まっているのである。
見るだけで気分を高めてくれるコーベットだが、運転席に座ってキーをひねると、ドライバーの気持ちをさらに盛り上げてくれる。大径の「速度」と「エンジン回転」メーターを中心に、その左右に2個ずつ、計6個配置されているメーターの赤い針が、イグニッションオンと同時に一旦リミットまでシュンと振れ、ゆっくりと戻ってくる。これが、カッコいい。こちらのヤル気をかき立ててくれるのだ。
独特のリズム
5.7リッターのV8は静かにアイドリングし、4段ATのギアセレクターを「D」に入れて、発進する。外に立つと幅が広いように見えるボディも、フェンダーの“峰”が盛り上がっているので、ドライバーズシートからは車幅感覚を掴みやすい。
ガスペダルに置いた足をちょっとでも動かすと、V8は「ウォン!」と「ファン!」の中間の排気音を伴いながら吹き上がる。レスポンスが鋭い。都内の細い路地をゆっくりと進む分には、アイドリングだけでこと足りてしまう。49.8kgmもの太いトルクは伊達じゃない。
東名高速道路に乗る。100km/hは、4速トップでエンジン回転1700rpmに過ぎない。そこから踏み込んでいけば、見えない巨人に引っ張られるような、強烈な加速が待っている。
2速でも、3速でも、アイドリングから3000rpmぐらいまでが、このエンジンの最も魅力的なところだ。もちろん、355psの最高出力を発生する5200rpmまで一気に回転を上げていくのだが、アイドリングから3000rpmぐらいまでが最も甘美なのである。エンジンが、次にダッシュするためのクラウチングポーズをとっているようだ。
このV8は、整っていながらも1発ずつの爆発のビートが明瞭で、他の気筒数と配列のエンジンでは感じられない独特のリズムを奏でる。だから、意味もなくシフトダウンしてその音楽を楽しんでしまう。
3つのモード
コーベット(とコーベットコンバーチブル)のセンターコンソールには「切替式リアルタイムダンピング」スイッチが装着されている。「ツアー」「スポーツ」「パフォーマンス」の3つの中から、ドライバーが選択したモード、および車速や路面状況に合わせて、ショックアブソーバーのダンピング特性を10〜15ミリセカンドで切り替えることができる。
東名高速を速度制限の範囲内で走る限りでは一番柔らかいツアーと中間のスポーツの差はほとんど感じ取ることができなかった。最も硬いパフォーマンスでは舗装の継目をビシビシと拾う。
ツアーとスポーツの違いが明瞭になったのは、傾斜の急な箱根ターンパイクを上り始めた時だ。加速時に、ツアーではテールが大きく沈み込むのに対し、スポーツではグッと踏張る。当然、踏張る方がターンパイクのようなところでは走りやすい。同様に、コーナーでのロールもスポーツの方が小さく、総じて好印象を受けた。もっともハードなパフォーマンスモードは、おそらくサーキット走行などのような限界的な状況で効果を発揮するのではないだろうか。
それにしても、安定した姿勢を保ち、太いトルクでワインディングロードをグイグイと上っていく様は、他のどんなスポーツカーでも真似できない。ヨーロッパ製の一流スポーツカーと方法論は異なっていても、走りの質においては最終的に深い満足に到達することができる。僕は今後も私設コーベット応援団員を続ける決意を新たにした。みなさんも、ぜひ入団しませんか?
(文=金子浩久/写真=河野敦樹/2002年3月)

-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。