BMW335iカブリオレ(FR/6AT)【海外試乗記】
クーペ以上の贅沢 2007.02.09 試乗記 BMW335iカブリオレ(FR/6AT)初の直噴ツインターボを搭載した「クーペ」に続き、セダン/ワゴンも発売された「3シリーズ」。そして新たにオープンモデル「カブリオレ」が登場した。砂漠のまち、アリゾナからの最新リポート。
クーペ・カブリオレとは違う
我々が作ったのはあくまでもオープン状態が本来の姿である真の『カブリオレ』。ルーフを閉じればクーペに変身するという、巷で流行のいわゆる”クーペ・カブリオレ”を目指したつもりは毛頭ない――
誰かがそれにまつわる質問をしたというわけではないのに、プレゼンテーションの場でことさらにそこにこだわったスピーチがなされた。今から丸々20年前の1986年にデビューした初代モデルから数えて4代目となる、新型「3シリーズ・カブリオレ」のことだ。
もっとも、BMWが強くこうしたアピールを行う理由はすぐに思い当たる。それはもちろん、現行3シリーズのバリエーションに、2006年追加されたばかりの「クーペ」の存在だ。
BMWにとって避けなければならないシナリオは、このリトラクタブル・ルーフ付きモデルのリリースによってクーペの売り行きがマイナスの影響を受けてしまうこと。
だからこそ、BMWは両者の”時差発売”を行ったわけだし、ルーフからリアエンドへと流れるラインを明確に変えて、異なるキャラクターをアピールしようと懸命に努力していたのだ。
リトラクタブル・ルーフ式の採用
今でもおりたたみ可能なハードトップでなく、伝統的なソフトトップ式を支持するユーザーが存在するのを承知の上で、敢えてリトラクタブル式ルーフを採用した。そこには、商品戦略的な意味合いを多分に感じる。
耐候性に長け、防盗性に優れ、静粛性など快適性面でも「ソフトトップ方式以上」が期待をできるリトラクタブル・ルーフ式ボディの採用は、今や世界のオープンカーの潮流と言えるもの。特にヨーロッパではそうした動きが顕著で、主流はすでにこちらに移りつつある。
率直なところ、ライバル各車の動向もかなり気になるというのも本音だろう。なかでも、初代「メルセデス・ベンツSLK」のヒットを契機に、メルセデスがこのタイプのルーフを各車に積極採用の動きを見せているのが、新型3シリーズ・カブリオレにリトラクタブル式ルーフの採用を決断させたといえよう。
また新たなエンジン戦略
アメリカは砂漠の街、アリゾナ州フェニックスを基点に開催された国際試乗会に用意をされたのは、ディーゼルを含め様々なエンジンバリエーションのうち、3リッターの直6ガソリン・ユニットに2基のターボチャージャーをプラスした心臓を積む「335iカブリオレ」に限られた。
実はこの新型カブリオレの発表と同時に、BMWでは新たなエンジン戦略を発表。それによれば「BMWはこの先まず、3シリーズのすべての自然吸気ガソリンエンジンを基本的にリーンバーン直噴化。排ガス浄化に必要な低硫黄燃料が入手困難な市場に向けては直噴ではなく“バルブトロニック”を用いる」とする。
前述のように今回の試乗会にはそうした自然吸気モデルの用意がなかったのは残念だったが、「近いうちに乗る機会を用意する」というからこちらも楽しみだ。
クーペに負けないカブリオレ
335iカブリオレは、リアウインドウを含むルーフ周りを3分割とし、それを電動油圧パワーでおよそ22秒でトランクルーム内に収容するという凝ったシステムを採用した。そうしたルーフシステムの採用やオープン化に伴うボディ補強による重量増は200kgに及ぶ。走りの軽快感は、クーペのそれに少々及ばない。
ルーフを閉じた状態でも70km/h程度までの速度でブルブルとした比較的低周波のボディ振動が認められる。バイブレーションは、ルーフを開くとさらに大きくなる。理詰めで走りの良さを追い求めるのであれば、クーペにはやはりかなわないのがカブリオレだ。
とはいえ、低回転域では”ターボ付き”を感じさせない自然で力強いトルク感を生み出し、高回転域ではツインターボならではのパワフルさを演じてくれる3リッター直噴エンジンのおかげで、動力性能には現状でも何の不満もない。
足元がやや狭く、シートバックも直立気味とはいえ、リアシートには大人2人がそれなりの長時間を過ごすにも耐え得るスペースを確保。「リアエンドの位置ではクーペよりも13mmの低下」という低くフラットなベルトラインが、オープン時の解放感の高さをさらに後押ししてくれる。
BMWがアピールする「クーペ以上のエレガンス」がルックス上で表現されているか否かは、見る人によって評価が分かれそう。が、オープンエア・モータリングを筆頭としたクーペ以上の贅沢を求め、それを彼らが理想とする高いレベルで見事にまとめあげた。その点に関しては、異論を挟むのは難しそうだ。
(文=河村康彦/写真=BMW/2007年2月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。





























