第53回:カーマニア、堕落の選択
2017.08.08 カーマニア人間国宝への道「3シリーズ」の安全技術に注目
自動ブレーキとアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が装備されたステキな足グルマを、なるべく激安で購入したい!
そのような怠惰かつ欲望丸出しな思索を繰り返した結果、「BMW 320dセダン」の中古車にターゲットを絞った私だったが、これら安全装備は、現行モデルの登場以来、何度か変更を受けていたはず。編集部およびBMW広報のご協力により、その変遷を追ってみた。
●2012年1月/新型「3シリーズ」が登場。衝突回避・被害軽減ブレーキシステム(単眼カメラにて制御)はオプション装備で、作動範囲は10km/h~60km/h。上記速度範囲にて作動し、システムは衝突被害の軽減のみ。
「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)」もオプション設定。なお、BMWはACCをアクティブ・クルーズ・コントロールと呼ぶ。
●2012年8月/「320d」追加。
●2013年8月/3シリーズに「ドライビングアシスト」が標準装備。ちなみにドライビングアシストとは、レーダーやカメラなどで車両の周囲を監視し、衝突事故を回避、もしくはその被害を軽減するもの。具体的な機能の内容は、車線の逸脱をドライバーに警告する「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」、衝突の危険性が高まった際にドライバーに警告を発する「前車接近警告機能」、追突事故が避けられないと判断した場合に自動でブレーキをかけ、衝突を回避するか被害の軽減をはかる「衝突回避・被害軽減ブレーキ」の3種類。システムには歩行者検知機能も採用されており、歩行者への接近に対しても、ドライバーへの警告と衝突回避・被害軽減ブレーキを作動させる。
前期型でも安全性能は十分
●2014年8月/3シリーズにアクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)が標準装備。
●2015年8月/3シリーズがマイナーチェンジ。衝突回避・被害軽減ブレーキ、アクティブ・クルーズ・コントロールは引き続き標準装備。だが、自動ブレーキはミリ波レーダー+単眼カメラでの制御に進化。作動範囲は5km/h~ 210km/hに拡大され、完全停止まで行う。
●2016年5月/「レーン・チェンジ・ウォーニング」が標準装備。
新320d登場。184psから190psに出力アップ。
つまり自動ブレーキの機能変更は1度だけで、当然新しい方が魅力的である。なにせ作動範囲が210km/hまで広がり、完全停止まで行うようになったのだから! もちろん210km/hから停止はできないでしょうが、ACCの機能には変更はないようだし、個人的には前期型でも十分満足のいく安全性能だ。つまり、現行型320dの自動ブレーキ・ACC付きならなんでもOK!
しかし現実には、12年~13年式は該当する中古車が非常に少ない。3シリーズの導入当初は、これら装備を付けると納車が大幅に遅れるという事情もあったようだ。近辺4都県で検索すると、たったの数台しか引っかからない。
しかしそれはかえって好都合かもしれぬ。私とて、いかに激安を望んでいても、年式は新しい方がいいし、走行距離は少ない方がいいのだから、迷わずに済むというものだ。
ターゲットは14年式
狙いは自動的に14年式に絞られた。3年落ち、車検寸前のタマである。
走行距離はできれば3万km未満。今度こそ還暦までは絶対乗るつもりなので!
私としてはですね、3年前に買った走行6.2万kmの「335iカブリオレ」が、納車当日にATがブチ壊れてオーバーホールになりましたので、「BMWは耐久性が低い」と警戒しておるのです。イタ・フラ車なら断然安心なんですがフフフ~。
その条件で再検索したところ、「これは!」という個体が引っかかった。
14年式「320dスポーツ」 自動ブレーキ&ACC付き 走行2.4万km 車両本体223万円(支払総額非表示)
223万円という価格は、新車価格を考えると十分激安だ。なにせいま320dスポーツを買おうと思ったら555万円! 14年当時でも527万円だったようだ。3年で半額を大きく割り込んでいる。
私に言わせれば、3年落ちなんてのは新車みたいなもん。それが半額以下で買える! BMWが! エリートの乗り物が! これは安い! 安いでちゅ!
ボディーカラーは黒。3シリーズ セダンは“杉並区のカローラ”だが、黒ならそれなりのワル感が出るはず。しかもシフトパドル付きの「スポーツ」! シフトパドルがあるとエンジンブレーキがかけやすい。ACCとあわせて、ブレーキ踏むのをなるべくサボろうという怠惰な魂胆だ。カーマニアも堕(お)ちるところまで堕ちたものです……。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。