マツダCX-7 クルージングパッケージ(FF/6AT)/CX-7(4WD/6AT)【試乗速報】
「ロードスター」なSUV 2007.01.30 試乗記 マツダCX-7 クルージングパッケージ(FF/6AT)/CX-7(4WD/6AT)……340.0万円/332.0万円
2006年12月19日に発売された、マツダの新型SUV「CX-7」。 スポーツカーとSUVのクロスオーバーをコンセプトにかかげるニューモデルは、どんな乗り味なのか?
スポーティなデザインは“買い”
世界に数あるSUVのなかでも、いちばんスポーティなカタチじゃないだろうか。マツダCX-7を見てそう思った。スタイリッシュなSUVというと、日本には「日産ムラーノ」という強敵がいるが、あちらがエレガンス重視なのに対し、CX-7ははっきりスポーツマインドをアピールしている。ヨーロッパのプレミアムブランドを相手に出しても、ダイナミズムという点では勝っているように思える。
「RX-8」を思わせるフロントフェンダーまわりや、強く傾いたウインドスクリーン、リアドアのあたりでキックアップしたサイドウインドーが、躍動感を生み出している。それでいてボディカラーにはおとなっぽい色をそろえていて、サイドウインドーを繊細に縁取るクロームのモールと合わせて、上質な雰囲気を手にしている。
このデザインだけでCX-7を買う人がいても不思議ではないほど、カッコいい。
それほど高くないフロアとシートの運転席についてまず感じるのは、ウインドスクリーンの傾きの強さ。といっても圧迫感はなく、タイトな雰囲気だけを届けてくれる。インパネはシンプルかつスタイリッシュで、ステアリングを除けばスイッチも整理されている。「ロードスター」やRX-8にもこのセンスをとりいれてほしいと思うほどだ。
囲まれ感が強いインテリア
前席は背もたれの高さが不足気味であるものの、それ以外のサイズはたっぷりしている。素材はクルージングパッケージがレザー、ベースモデルがファブリック。どちらもセンターに細いストライプを入れるなど、スポーティさの演出がうまい。
サポートは腰のホールド感がタイトなのに比べ、上体は北米をメインとした車種らしくルーズだが、ファブリックを選べばコーナーでも横滑りすることはなかった。
後席もキックアップしたサイドウインドーのために囲まれ感が強い。前席もそうだが、スポーツカーとのクロスオーバーというCX-7のコンセプトが、このタイト感にしっかり表現されている。シートは平板だがサイズは前席同様ゆとりがあり、こちらは背もたれの高さも不満なし。座面は硬めだが厚みは感じる。身長170cmの自分が前後に座ると、ひざの前には15cmほどの空間が残った。
ふと横を見ると、フロントドアトリムにはあったアルミやブラックウッド風パネルが省略され、一面黒い樹脂であることに気づいた。
デザイナーは「後席を畳んだときのラゲッジスペースとの一体感を出したかった」といっていたが、少なくとも日本のユーザーは、後席は立てた状態で使うのがスタンダードであるはず。となるとこの処理は手抜きととられる可能性がある。
荷室は、フロアの高さはSUVとしては平均的。容量は455リッターと十分なスペースが確保されている。後席の折り畳みは背もたれを前に倒すだけの方式。それを荷室側にあるレバーを引くだけで行えるのは便利だ。
乗り味に「マツダらしさ」は光るが……
このクラスのSUVはトップグレードに3リッター以上のV6エンジンを用意するのが一般的。ところがCX-7は2.3リッター直列4気筒ターボ一本だ。
「MPV」や「マツダスピード・アクセラ」にも積まれる直噴ターボを専用チューン。238psの最高出力、35.7kgmの最大トルクは、ライバルのムラーノの3.5リッターV6をしのぐ。トランスミッションは6段ATのみだ。
実際に乗ると、たしかにターボが効いたときの加速は強力で、オーバー3リッター級の余裕を感じるけれど、その立ち上がりは2500rpmあたり。だから加速時はいつも3000rpmあたりまで回すことになる。しかしそのあたりから4気筒であることを意識させるサウンドが耳につきはじめ、回転を上げるにしたがいそのボリュームが大きくなっていく。
硬めの乗り心地はスポーティさの証として理解できるものの、つねに小刻みに上下に揺らされ、車重1.6〜1.7t級らしい落ち着き感、フラット感がない。ボディの剛性感は申し分ないのに、路面からの大きな入力はストレートに伝えてしまう。
いずれも洗練されたデザインとは対照的な感じがしたし、300万円を越える価格に見合う走り味とはいいがたい。
そんなCX-7が精彩を取り戻したのはワインディングロード。
ステアリングの切れ味はクイックといえるほどで、コーナーに入ってからもボディの大きさや背の高さ、重さを感じない素直な身のこなしに終始する。4気筒へのこだわりが、ノーズの軽さという好結果を生んでいるのだ。FFでもトラクション能力はすぐれており、ターボパワーを持てあますことはない。限界での滑り出しもマイルドなので、積極的にペースを上げていける。
CX-7の走りは、ロードスターのようだった。その意味ではマツダらしい。
でもこのクルマは300万円以上する。しかもスタイリッシュだ。だからこそ、エンジン音や乗り心地にも気を配ってほしかった。同じスポーツカーでも、RX-8のようななめらかでしっとりした走りに仕立ててくれればよかったのだが。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2007月1月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。