キャディラックCTS 2.6(5AT)【試乗記】
底力と方向性 2003.05.29 試乗記 キャディラックCTS 2.6(5AT) ……495.0万円 高級セダンのキャディラックブランドに新しくラインナップされた「CTS」。新開発の「シグマアーキテクチャー」を採用したFRモデルだ。春爛漫の4月某日、日欧市場向けの2.6リッターモデルに、CG記者が試乗した。GMの野望
ヨーロッパ車が実は大好きで、そういうクルマにずっと憧れていて、いつか自分たちでもつくってみたい、自分たちにだってああいうクルマはつくれるんだ、そう思っていたアメリカ人がやっとの思いでつくったクルマ、というのが「キャディラックCTS」に乗って最初に感じた印象だった。
実際は、GMの高級車ディビジョンであるキャディラックを、アメリカ国内だけでなくヨーロッパやアジアでも拡販していきたいというGMの野望を担ったクルマである。ニュルブルクリンクを走り込んでサスペンションのセッティングを行なったなんてことを売り文句にしていることからも、ヨーロッパ車の、特にドイツ車を相当意識して開発したことが見て取れる。だから、ドロドロしたエンジンにフワフワした乗り心地のキャディラックこそ真のキャディラックであると思っている方の期待は、ことごとく裏切られることになるのでご注意を。
My First Cadillac
キャディラックの販売台数を増やすこと以外にもCTSに課せられた任務がある。それは顧客の平均年齢を下げること。現在のキャデラックの顧客平均年齢は限りなく60歳に近いという。つまり人生最後のクルマとしてキャディラックを選ぶ人が多いわけだ。それ自体、とっても光栄なことではあるけれど、できればキャディラックを何台が乗り継いでから終わりにして欲しい、というのがGMの願い。40歳代、欲を言えば30歳代後半の人に「My First Cadillac」として買ってもらえるようなクルマがキャディラックにあってもいいのではないか、そんな思いがこのCTSには込められているのである。
ターゲットはメルセデスのCクラスやBMW3シリーズあたりを欲しがる人たち。そうなると価格は500万円前後。でもなんらかの分かりやすい優位性を持たせたい。そこで価格は「Cクラス」や「3シリーズ」と同じレンジに設定し、ボディサイズをひとつ上のクラスの「Eクラス」や「5シリーズ」と同等とした。ただし、キャディラックにはこの手のサイズのシャシーの持ち合わせがないし、「Cクラス」や「3シリーズ」と競うならばそれなりの操縦性が不可欠となる。キャディラックは大英断を下しましたね。まったく新しいFR(後輪駆動)のシャシーをつくりあげたのである。
いい意味裏切り者
日本仕様は3.2リッターと2.6リッターのいずれもV6エンジンを搭載した2モデル。装備の違いはナビゲーションが標準か否かとその他少々。本革シートは両車に標準装備である。今回試乗したのは495万円の2.6リッター版だった。
インテリアの意匠は、ヨーロッパ車や日本車では絶対にお目にかかれない、なんとも斬新なもの。とにかくスイッチの数が多いことと、プラスチックの質感が低いことが気になる。CDを聞いていて次の曲に飛ばしたい時に触るスイッチは3カ所(センターコンソール上部にひとつ、中部に2カ所)もいらいないでしょう。プラスチックの質感は場所によってはトヨタ・ヴィッツのレベルだった。
こういうところは想像通りだったが、走った印象はいい意味で期待を大きく裏切られるものだった。
とにかくボディは強靱である。大きな段差を乗り越えてもみしりともしない。お見事。低速域ではゴツゴツした乗り心地とボディの重さが気になってあまりいい印象を受けないのだが、速度を増すにつれてどんどんよくなっていく。重いと感じていたステアリングは適度な手応えに変わりロードインフォメーションも充分。直進安定性にも優れていた。フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクのサスペンションはスムーズに動き剛性感も高い。「ソリッド」という言葉がふさわしい味付けである。
182ps、24.9kgmのエンジンは高回転までよく回り、動力性能に不満はない。何より、5段ATのできが秀逸。シフトアップもダウンも切れがあって気持ちがよかった。
総じてCTSは悪くない。むしろとてもいい。キャディラック部門の底力と今後の方向性を知らされた1台だったが、昔のようなアメリカンなキャディラックも引き続きつくって欲しいと思います。
(文=渡辺慎太郎/写真=郡大二郎/2002年4月)
※筆者は、2003年4月にCG編集部を退職しました。

渡辺 慎太郎
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。















