キャディラックSRX(5AT)【海外試乗会】
SRXに見るGMの変化 2004.01.27 試乗記 キャディラックSRX(5AT) “アート&サイエンス”を謳う新路線で、従来のキャディラックファンの度肝を抜いた「CTS」。続いて、新世代サルーンのプラットフォームを使ったSUV……ならぬ“クロスオーバー”モデルが登場した。自動車ジャーナリストの河村康彦が、北米はロサンゼルスで「SRX」に乗った。別の存在
一見、「最新キャディラック車に共通のシャープなマスクを備えた、新種のSUV」。キャディラックのブランド・マネージャー(?)であり生みの親でもあるGM社にいわせれば、「これはSUVではなく、まったく新たな“クロスオーバーカー”」。それが、ブランニューモデルの「SRX」だ。GMがあえてクロスオーバーとアピールする理由として、このクルマの構造上の特徴が挙げられる。
SRXは、「シグマ・アーキテクチャー」と呼ばれるFR(後輪駆動)レイアウトのプラットフォームを基本骨格とする。同じくキャディラックのセダン「CTS」としてデビューを果たした、GM社最新の乗用車用プラットフォームだ。
SUVなる記号が放つイメージといえば、アメリカ車の場合、「(ピックアップ)トラック・ベースの、頑丈なフレーム式の骨格を備える」というのが一般的。そうしたなかで、セダン・ベースのSRX、モノコックボディをもつ最新キャディラックは、「“トラッキー”なイメージが強い既存のアメリカンSUVとは別の存在」。そう強調したいのだろう。
こちらの方が人気者に……
冒頭述べたように、ちょっと彫刻的な「新世代キャディラックの顔」をもつSRX。本国では、最高出力324psを発生する4.6リッターのV8と、同じく260psの3.6リッターV6という、2種類のエンジンが設定される。710.0万円という価格で日本に導入されるのは、よりゴージャスな前者。ただし、V6モデルの輸入も「前向きに検討を続けている」というのが、日本ゼネラルモーターズの、2004年初頭でのコメント。近い将来、本国同様“2本立て”のラインナップが日本でも整う可能性は高そうだ。
北米はロサンゼルスで試乗した“V6”SRXは、想像していたよりずっと元気に走ってくれた。むろん、全力加速時の絶対的なパワー感やそのパワーの緻密さでは、V8エンジンにかなわない。が、回転フィールや静粛性面では“マイナス2気筒”とはいえ、決して大きく負けているということはなかった。むしろ「よりリーズナブルな価格で日本に導入されたら、こちらの方が人気モノになりそうだナ」という印象を受けた。
ちなみに、SRXに積まれる2つの心臓は、どちらもアルミ製の4バルブDOHCという最新スペックの持ち主。ここでも、ひと昔前のアメリカ車の常識を覆す……。
国際商品化
フットワークの味付けもやはり“乗用車的”で、かつ、ここでは“ちょっと欧州車風”というフレーズを加えてもよいと思う。
オールシーズン・タイヤを履く関係もあってか、たとえばBMWの「X5」や「ポルシェ・カイエン」のように、わずかなステアリングの操作がそのままリニアにクルマの動きとして反映される、というほどではない。
が、それでもこれまでのアメリカンSUVたちのような、「ブルルン!」としたバネ下の動きや、ウェット感の強い乗り味とは、確実に一線を画しているのが、SRXのフットワークテイストだ。「骨組みの上にゴムを介してボディを載せる」というアメリカンSUVが一般的に用いるフレーム式ではなく、乗用車同様のモノコック構造を採り、ボディの剛性感がそれなりに高いのも、しっかりした乗り味に一役買っている。ちなみに、SRXのタイヤは前後で異サイズを採用。このあたりにも、かつてのアメリカンSUVにはなかった“走りへの本気度”が感じられる。
やはりCTS譲りのダッシュボードなどを配したインテリアの仕上がり具合は、正直なところ「“キャディラック”と名乗るには、ちょっとシンプルでビジネスライクに過ぎる」と、ぼくには思えた。一方で、電動式のペダルアジャスター(スイッチでペダル類が前後する)を備えて、乗る人の体型を問わない、最適なドライビング・ポジション獲得を手助けするするなど、これまでのアメリカ車にはなかった新しい試みが見られる。“国際商品化”を目指しているのも、新世代“キャディ”の特徴なのだ。
事実GMは、SRXを含む最新のキャディラック車たちを「海外のマーケットで積極的に販売して行きたい」と語る。そんなアメリカンメーカーの考え方の変化を感じられる点でも、昨今のキャディラック・ブランドは興味深い。
(文=河村康彦/写真=日本ゼネラルモーターズ/2004年1月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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