オペル・アストラカブリオ(4AT)【試乗記】
ジェンダーも年齢をも問わない 2002.04.04 試乗記 オペル・アストラカブリオ(4AT) ……339.0万円 オペルとベルトーネの独伊合作オープン「アストラカブリオ」。電動ホロを備えた4座モデルに、webCGエグゼクティブディレクター大川悠が乗った。ドイツ人はカブリオレがうまい。
「ドイツ人はカブリオレを知っている」、アストラカブリオに乗ってそう感じた。
4座のカブリオレというのは、いま世界的にブームで、特にヨーロッパを中心に増えている。2座でハンカチのような幌を持った、「ロードスター」や「コンバーチブル」がイギリスオリジン、カッコで迫る「スパイダー」がイタリア発だとしたら、4座で分厚い幌を備えた「カブリオレ」は、やはり戦前からドイツものに定評がある。
ドイツは寒いからオープンカーでも厚い幌が要るとか、ドイツ人は何でも実用にならないと気が済まないからリアシートが必要なのだ、などと昔からもっともらしく語られていたが、そういう蘊蓄はさておいても、アストラのカブリオは予想外に良くできていた。
ドイツ車たるオペル・アストラ、だがそのカブリオはイタリアのベルトーネが、共同開発だけでなく製造も手がけるというところがミソ。もっともこの種のクルマは大抵、外部のボディ架装専門ショップが請け負っている。
律儀なオープン
ともかくオープンシステムはよくできている。当然現代のカブリオレとして開閉は全自動、車外でもキー操作できるのが特徴で、実際に計ったら開閉ともに35秒を要した。このクラスとしては標準的。つまり信号停止中に操作してはいけません。
いいのは分厚い幌。3層構造だが、一番上の層がさらに3素材から成っており、遮音、遮熱、そして走行中に膨らむバルーン効果も最小という。
幌を上げて走ってみても、100km/h程度ではそんなに膨らむ様子はなかった。が、やはり風切り音は多少出るし、いかにガラスのリアウィンドウを使っているとしても、分厚いリアクォーター部分やハイデッキのおかげで後方視界は悪い。
個人的な好みはともかくとして、このクルマは幌を下ろして走る方がずっと気持ちがいい。ワンタッチ・スイッチで4枚の窓を上げ、リアのデフレクターを上げれば、日本の公道の速度域ではほとんど風は入ってこない。ドイツ人らしく律儀だと思ったのは、幌を上げているときは全自動の空調が、オープンにした瞬間にマニュアルになること。この日は比較的寒かったが、シートヒーターを入れ、空調を強めれば全然辛くはなかった(この歳でも)。
リアシートもクーペ程度のスペースはあるが、ここにはオープンの時はあまり乗りたくない。多分風が直接顔面にぶつかるだろう。リアに人がいれば、もちろん、後席にフタをするカタチで使うウィンドウディフレクターは立てられない。立派な幌を収納しながらトランクルームが広いのは感心した。4人では無理だけど、2人でゴルフに行ける。
オジサンが乗っても恥ずかしくない
機械はしっかりしている。2.2リッター147psの4気筒ツインカムはすごく気持ちよく回るし、中低速トルクもかなりある。それに4ATの応答性がいい。オープン化に対して安全性と剛性を高めるべく、ウィンドフレームは強化され、バルクヘッドも追加されているから、そんなにヤワな感じはない。ウェイトは1400kgとクーペから100kg以上増えているが、充分身軽に走るし、セダンより堅くクーペよりやや柔らかいサスペンションは、適度にスポーティな感覚を与える。
「確かにイタリアやフランスものの小さなカブリオレは洒落ているが、大の男が乗るにはちょっとね?」 という雰囲気もある。その辺に比べると、色気では落ちるかも知れないが、ゴルフほどは無骨ではない。だからアストラカブリオは、ジェンダーも年齢もを問わない、適度なサイズのカブリオレとしては、これはかなりいい線を行っていると思う。
(文=webCG大川悠/写真=高橋信宏、郡大二郎/2002年2月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。