ダイハツ・コペン アルティメットエディション(FF/4AT)【試乗記】
山道を幅一杯に使える面白さ 2006.07.27 試乗記 ダイハツ・コペン アルティメットエディション(FF/4AT) ……194万2500円 新車で買える唯一の軽2シータースポーツカー「ダイハツ・コペン」に、“究極”の特別仕様車が加えられた。デビューして4年、スポーツカーとしての魅力は、いまもなお色あせていないのか?欲しいアイテムがそろったお買い得車
60年代のライトウェイトスポーツカーのサイズは、我が国の軽自動車枠でも再現できる大きさであり、「ホンダ・ビート」や「スズキ・カプチーノ」など、当時の雰囲気を醸しだしながら近代のハイテクを以て再来したスポーツカーは、中古車になった今なお人気の車種である。
2002年に登場した「ダイハツ・コペン」は、小さいながらも電動のアクティブトップを備えたスポーツカーだ。この種のクルマの最先端にあり、今なお現行生産車として可愛い姿を路上で見かけることができる。
スポーツカーは少数派であることは初めからわかっているのに、途中で止めてしまうメーカーもあるが、長く造り続けてこそ意味があるものだと思う。コペンはノスタルジックな雰囲気を再現したスポーツカーではなく、まさに現代感覚のスポーツカーであり、シンプルな造形もあいまって、長寿をまっとうできる資質を備えているといえるだろう。
そのコペンに特別仕様車として「アルティメットエディション」が追加された。
その内容は、クルマ好きなら誰もが欲しがるであろうアイテムを装備したもので、言うなれば常識的ではあるが、あと付けで装備しようとすると結構高い。最初から全部装備しているメーカー仕様となれば、それは「お買い得」である。ビルシュタインダンパー、アルカンタラ表皮のレカロシート、モモステアリングホイール、BBS15インチアルミホイール、これら全部含めて189万円。標準車の157万2900円より30万円強高いわけだが、とてもそんな価格で揃う装備とは思えない。
スポーツカーは速くなくてもいい
この手の小さなスポーツカーを、言葉で否定するのは簡単だ。しかし逆に肯定できる人にとっては納得することばかりだろう。
それは実際に乗ってみるとすぐわかる。「小型軽量」はスポーツカーにとって何物にも代えがたい要素なのだ。室内は狭い、が、それゆえにクルマとの一体感がある。薄手のレカロシートを一番後ろに下げれば、身長174cmの筆者にはピッタリで、大好きなストレートアームも可能。アクティブトップを閉めても、ヘッドクリアランスにはなお余裕がある。
ツインカム4気筒16バルブエンジンはターボを得て64psを発生。ATが4段なのは今や効率的とはちょっといいがたいが、絶対的なパフォーマンスを求めなくてすむのがスポーツカーだ。1速は発進用、2/3速は加速ギア、4速がクルーズ用と考え、山道で楽しむのは2/3速でいい。積極的にシフトしたければ、同価格の5段MTを買えばよいだろう。
このエンジンにはめいっぱい回転を上げて、リミットまで引っ張っぱれる楽しさがある。排気量が大きくなってくると、公道ではスピードが出すぎていっぱいまでは回せない。「全開にする」ことの意味は大きい。機械と戦って降伏させうるわけで、プリミティブなクルマほどそれをコントロールする楽しさがある。コントロールを楽しむクルマがスポーツカーだ。それが今では、トラコンに邪魔されて「全開にできない」場合が多く、クルマが勝手に限界を決め、楽しんでいるところに介入してくる。スポーツカーは速くなくたっていいのだ。自分にとって速く感じられればいい。そんな極めて主観的な乗り物がスポーツカーなのだ。
軽量な車体の恩恵
使い切れないほどのエンジンパワーを持つよりも、スポーツカーはむしろパワーが足りないくらいがいいと思う。それをギアシフトで補い、アシやタイヤをいじめることこそが面白さだ。ビルシュタインのダンパーは平静時にはやや硬い乗り心地を持つものの、BBSの軽いホイールと相まって接地性をよく助け、油圧のパワーステアリングは操舵力が軽すぎない範囲にアシストしてくれる。このくらいの軽量車ならばマニュアルステアリングでも軽く作れるが、低速と高速ではその操舵力の差は大きくなる。それを適当な範囲に纏めてくれるのが今のパワーステアリングだ。
車体の軽さは、加速や減速時だけではなく、コーナリング時にも効いてくる。イナーシャが予定のラインを狂わせた時、(アンダー/オーバーステアはクルマ固有の特性ではあるが)軽いクルマであれば体勢を整えやすいのだ。だから軽さこそスポーツカーにとって重要。
狭い山道の道幅では車幅が広すぎてはコーナリングラインなど意味をなさない。小型サイズであればこそ幅一杯に使える。だからコペンは面白い。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏(T)、荒川正幸(A)/2006年7月)

笹目 二朗
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