ポルシェ911ターボ(4WD/6MT)/911ターボ(4WD/5AT)【海外試乗記(後編)】
漂う“王者の風格”(後編) 2006.06.08 試乗記 ポルシェ911ターボ(4WD/6MT)/911ターボ(4WD/5AT) ポルシェブランド、カタログモデルの“最高峰”に据えられた「911ターボ」。見た目の風格、走れば速さ、乗り味などからもその風格を感じさせるという。また、GT3との明確な違いも……。コレが高出力ターボ車の振る舞いか?
(前回からの続き)グラマラスなリアフェンダー部分にクーリング・エア取り込み用のインテークがぽっかりと口を開いた新しい911ターボのルックスは、「大迫力ではあるけれどもフラッグシップらしい威厳も漂う」、そんな雰囲気のものだった。遠目には一見GT3と共通か? とも感じる開口部の大きさが目立つフロントマスクも、改めて目にすればこちらのほうがややシャープさを抑えた、より上質なイメージを意識したデザインであることがわかる。ファットなシューズをワイドなフェンダーで覆ったリアビューもしかり。GT3の“ボックス型”に比べてはるかにおとなしい造形のリアスポイラーや、バンパーにビルトインされたエグゾーストパイプの処理などによって、“最高峰”にふさわしい堂々とした佇まいが演出されている。
もっとわかりやすく表現すれば、全身にエキセントリックなムードが漂うGT3のルックスに対して、こちらは「より高級で高そうなクルマ」に見えると言ってもよい。実際、両者の価格は軽く200万円以上も開いているのである。
さて、走り出してみると、最高出力480ps、最高速度310km/hに達するスーパースペックが「掛け値ナシ!」と思える、とんでもない速さの持ち主だった。
いや、速さについて、詳しくは後述することにしよう。イベント会場となったホテルを抜け出し、幹線道路を抜けて“スペシャル・ステージ”へと向かうまでは、むしろエンジンのあまりのフレキシブルさに驚かされたのだ。
最初はMT車でスタートをしたのだが、1000〜2000rpm台を多用する街なかでの走りは、「まるで“普通のカレラ”と同じではないか……」とあきれるほど、トルクの出方が素直で扱いやすい。高出力ターボは低回転域で扱いにくいのが普通だが、いかにも大出力型の大型ターボを備えるエンジンらしい、レスポンスの鈍さを意識せざるを得なかった従来型とは印象が大きく違う。もちろん、こんな感触が得られたのは、新採用の“可変タービン・ジオメトリー”なるデバイスの威力が大きいに違いない。
違う世界の“300km/hカー”
“スペシャルステージ”に到着。アクセルペダルを深く踏み込み、タコメーターの針が“頂上”の4000rpmを越えて右側ゾーンへと踏み込む領域に達すると、そこでまさにパンチの効いたターボパワーが炸裂する。いや、炸裂という表現ではもはや物足りない。「爆裂」と言ったほうがイイくらいだ。その瞬間、さしもの太いリアタイヤが2速、そして3速ギアですらグリップ力を失いそうになるものの、今度は瞬時にやはり新たに搭載の電子制御式の電磁多板クラッチが多くのトルクを前輪側に分配し、4輪すべてがしっかりと地面を蹴るのを実感する。新しい4WDシステムは従来型のビスカスカプリング方式に比べて、必要に応じた際にレスポンスよく前後のトルク配分をコントロールできることが新型の大きな特徴だ。
とはいえ、基本的には後輪側に多くのバイアスがかかったトルク配分が行われる事実に変わりはない。それゆえ、タイトターンなどでうかつにアクセルペダルを踏み込むと、後輪はやはり外側に張り出そうという挙動を示す。
今回のテストドライブでは実際に300km/h近くまでの速度を体験する機会があったが、特に200km/hを大きく超える速度での安定感の高さは、もはや「向かうところ敵ナシ」という感触だった。そこまで超高速度域になると「手に汗握る……」感じになってくるGT3とは、同じ“300km/hカー”でも印象が大きく異なる。シャープな動きという点では当然GT3に敵わない一方、どんなシーンでも“王者の風格”を漂わせるのが新型ターボの走り味なのだ。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン/2006年6月)
・ポルシェ911ターボ(4WD/6MT)/911ターボ(4WD/5AT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018229.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。







































