ロータス・エキシージ(MR/6MT)【試乗記】
文化的スポーツカー 2006.05.17 試乗記 ロータス・エキシージ(MR/6MT) ……627万9000円 ロータスのロード向けレースカーと謳われる「エキシージ」は、トヨタエンジンを搭載する第2世代へ生まれ変わった。元から高回転チューンのトヨタ・ユニットを採用したことで、ロータス風味に違いはないのか?低い視線に安心感
小さなドアを指で摘んで開け、高いサイドシルを跨ぐようにして、鴨居に頭をぶつけないように注意し、身体をねじ曲げるようにして室内に潜り込むと、そこにはタイトながらも十分に手足を伸ばせる快適居住空間が待っている。シートの下は薄い床板1枚でその下は路面。手を外に出せば手の平が直接路面に届くほど低く座る。シートはバケットで前後移動しか調整機構はないものの、すっぽりはまって横方向のサポートは良好、ちょっとランバー部に隙間はできるが、タオルを畳んで当てればいい程度だ。
前方の眺めが素晴らしい。フェンダーの膨らんだ稜線が両側に立ち、中央谷間の路面はアスファルトの粒々が間近に見え、前のクルマのナンバーの高さが自分の目の高さとなる。やはりスポーツカーは低く座るほど安心感がある。
つり下げられたアルミのペダルは踏力も軽く、ストロークも適当だ。床から生えるタイプと違って角度変化も少なく感触はごく自然。ギアシフトは操作力も軽く、ストロークも短めで角度変化も普通になった。初期型のエキシージはこのあたりの造りが、ロータスの名にふさわしくないほど未消化だった。やはりこの種の手作り的な少量生産車は、時を経るほどに細部にわたって熟成されて行く。ボディスタイリングは基本的には変わっていないが、どことなくフィニッシュが綺麗で試作品感覚が無くなってきた。
日常性が犠牲になっていない
この日は神保町の編集部まで「メルセデス・ベンツS350」に乗っていき、そこからエキシージに乗り換えて出発した。まったくもって、180度異なる状況変化ながら、「やっぱりコッチだよなー!」と、いまさらながら自動車本来の魅力みたいな、原点に戻った歓びを味わえた。イイナーこれ!
エンジンはトヨタの量産型実用品を流用したものである。これまでも量産品をつかってきたのがロータスだから、方法としてはコレでいいのだ。
エンジン自体は、とりたてて感激するような回り方こそしないものの、信頼性は十分。それがなによりといえる。もうすこし時間がたてば、パワー/トルクの絶対値は下がっても、トルクカーブをいじってピークを持たせるなど、キャラクター作りが始まるかもしれないし、自分で悪戯チューンする楽しみもありそうだ。ギアボックスも操作性が普通になったから、シフトワークを存分に楽しめる。これも余裕ができたらギアレシオをもっとクロースさせるなどして、本物のスポーツカーの楽しみ方ができるようになるだろう。
とりあえず現状で、取り立てて不満なところは無くなった。これも量産効果というか学習効果の賜物だろう。Kシリーズより新設計、しかも日本製の量産品を応用した利点でエアコンが普通に使えるなど、日常性がまったく犠牲になっていない点もうれしい。遮音材が期待できないエンジンとの隔壁も、エンジンが背中にある利点で、走行中はほとんど騒音は気にならない。
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お母さんもつき合ってくれる
エキシージの美点は車重900kgという軽さにあり、パワーはこれで十分以上。逆にもっとパワーが少なくして、ギアボックスを駆使する楽しみを残しておいてほしい、と思うほどだ。
もちろん、そう思う向きには、素のエリーゼも用意されている。2006年5月の時点ではラインナップも豊富だから、楽しく迷えるだろう。
ノンパワーのラック・ピニオン式ステアリングの操舵力もけして重くない。各種アシストに頼って間接的な感覚になってしまっている現代のクルマに比べ、フィールがダイレクトなことによる操る楽しみが大きいのも魅力だ。
装着タイヤのヨコハマADVAN-A048は、いわばサーキットも走れるグリップ指向のタイヤであるが、不当に乗り心地が悪いわけではなく我慢できないレベルでもない。しかしもっと普通のグレードのタイヤを履き、むしろグリップを落としてズルズル滑るぐらいで車両のコントロール性を楽しむのも面白そうだ。
その昔に、「スーパー7」のようなスパルタンなスポーツカーを愛したお父さんは、今ならこのエキシージのような、少し文化的になったスポーツカーに興味を持つに違いない。このクルマなら、奥様もドライブに付き合ってくれるだろう。ちょっと苦笑混じり……かもしれないが。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏/2006年5月)

笹目 二朗
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