フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアント 2.0T (FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアント 2.0T (FF/6AT) 2006.04.29 試乗記 ……428万2500円 総合評価……★★★ 6代目に進化したミディアムセダン「パサート」。主力ともいえるワゴン「ヴァリアント」の上級グレード「2.0T」は、中身以外のトコロに“プラスアルファ”があるらしい……。
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頑張りすぎないほうがいい
長いことフォルクスワーゲンに乗っているとわかるが、このブランドのクルマ、なかでも主力モデルのゴルフと暮らしていると、「次は絶対ひとクラス上へ!」といったステップアップ願望が湧いてこない。それが嫌かというとむしろ私はその反対で、ステップアップの強迫観念にかられないのが心地イイくらいだ。
しかし、それはゴルフオーナーが次も必ずゴルフを買うという意味ではない。ひょっとしたらパサートかもしれないし、あるいはポロかもしれない。クラスを意識せず、自分のライフスタイルにあったサイズが選べるということである。だから、子供が独立して夫婦ふたりに戻った瞬間、パサートからポロに乗り換えてもなんら不思議ではないのだ。パサートのデビューにあたり、VWジャパンは「クラスレス」というキーワードをよく口にするが、たしかにそのとおりだと思う。
そして、トータルバランスの高さもVWの大切なバリュー。ただ、今回の試乗車については、ややバランスを損ねている部分があった。頑張りすぎず、カジュアルな雰囲気を大切にするほうが、このクルマにはお似合いだとおもうのだが。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行パサートは、2006年4月に導入された6代目。新型は「ゴルフ」とコンポーネンツを共有する。先代の「アウディA4」ベースから、「VWゴルフ」をもとにつくられた新型では、エンジンが縦置きから横置きとなったのもトピック。ゆえにサスペンションも、前マクファーソンストラット式、後4リンク式とゴルフと同じ形式となる。新型から、ワゴンモデルに欧州で使われる「ヴァリアント」(英語でいうヴァリエーション)という名前が与えられたことも新しい。
セダン、ヴァリアント両方に、2リッター直4(150ps、20.4kgm)搭載「2.0」、2リッターターボ(200ps、28.6kgm)「2.0T」のFFモデルと、3.2リッターV6(250ps、33.1kgm)+4MOTION(4WD)を設定。FFは6段AT「ティプトロニック」仕様で、4WDは2ペダル6MT「DSG」が組み合わされる。
機能、装備面では、電動パーキングブレーキを採用。ボタンにタッチすることで最大傾斜度30%までの坂道でも車両を停止させるブレーキがきく。また通常のフットブレーキは「オートホールド機能」を備える。これはブレーキ操作で停止したあともブレーキ圧を保持する仕組みだ。
装備面では、左右で温度設定が可能な2ゾーン式フルオートエアコン、クルーズコントロールなどを備えるほか、安全装備では、リアサイドエアバッグ、衝突時の衝撃の大きさに応じて2段階で作動する2ステージフロントエアバッグなど8つのエアバッグを装着。前席にはアクティブヘッドレストも装着する。
(グレード概要)
2006年4月現在パサートヴァリアントに「V6 4モーション」は存在せず(秋に導入予定)、ベーシックな「2.0」とターボユニットを積むスポーティ版「2.0T」の2本立て。
2.0Tは車高が15mmローダウンされるほか、2.0の215/55R16に対し、235/45R17インチとファットなタイヤを装着する。標準で販売されるのが、スポーツシートやウッドパネルなどのセットオプション(34万6500円)装着車で、オプションが備わらない2.0T(381.0万円)は受注生産である。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
標準では黒を基調としたインテリアカラーに、メタル調のパネルがダッシュボードとセンターコンソールに配置されるパサートヴァリアント2.0T。試乗車にはウッドパネル、レザーシート、バイキセノンヘッドライトなどが含まれるセットオプション(34万6500円)が装着されていた。実はこのセットオプションがない標準車は受注生産で、セットオプション付きが事実上の標準モデルという位置づけである。「素のままでいい」という人にとっては、ちょっと迷惑な話だ。
さらに、この“リフレックスシルバー”のボディカラーを選ぶと、トリムやレザーシートは自動的にブラックになり、明るいポプラのウッドパネルとのバランスはいまひとつである。
これは一例に過ぎないが、最近のVWの仕様・装備の設定には買い手の気持ちよりも売り手の都合を優先したのではないか……と思われる部分が散見される。もう少しユーザーの目線で日本仕様を決めてほしいものだ。
(前席)……★★★
ぶ厚いドアを開けると、スポーツタイプのレザーシートがドライバーを待ち構えていた。サイドサポートがやや大きめとはいえ、乗り降りの邪魔になるほどではなく、座っても窮屈な感じはしない。厚手の革は適度に張りがあり、硬さも適切だ。運転席にパワーシートは標準で、さらにオプションのレザーシートならメモリー機能やシートヒーターが備わるし、助手席にもパワーシートが奢られるようになる。ステアリングのチルト&テレスコピックとあいまって、相変わらずポジション調整の自由度は高い。
電気式のパーキングブレーキを採用したおかげで、センターコンソール部分に余裕があるのもこのパサートのいいところ。運転席まわりに比較的大きな収納スペースが確保されているのもうれしい。
(後席)……★★★★
新旧ワゴンどうしで比べると、旧型よりも105mm全長が伸びた新型パサートは、エンジンを縦置きから横置きに変更したことも手伝って、居住空間の拡大が著しい。とくに足元の広さは感動的で、身長168cmの私なら余裕で足が組めるほどだ。ヘッドルームも不足はない。
バックレストは肩まですっぽり覆われるくらい十分な長さが確保されているので、とても安心感がある。
(荷室)……★★★
全長4785mmの堂々たるボディサイズ相応の広いラゲッジスペースも、パサートバリアントの美点である。狭い部分でもその幅は105cmほどあり、奥行きも通常で110cm、リアシートを倒せば180cm超と文句ない広さだ。いまどき珍しくダブルフォールディング方式を採用するのも好感が持てる。
一方、荷室のフロアと敷居のあいだに段差が残るのは使い勝手が悪く、また、本国ではフロア部のレールと可動式のフックによる荷物の固定システムが用意されるのに、日本で利用できないのが残念だ。これだけ広い荷室だからこそ、荷物が動かないような工夫が必要だと思うのだが……。オプションでも構わないので、ぜひ用意してほしい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
現時点で日本のパサートヴァリアントに用意されているのは、2リッターNAと2リッターターボの2タイプ。いずれもVWが誇るFSI(直噴ガソリン)エンジンで、この2.0Tはそのモデル名からも推測できるように、後者のターボ版である。
FSIの恩恵で10.4という比較的高い圧縮比が設定できたことから、低回転域で「スカスカする」なんてことはなく、1500rpmあたりでもトルクが豊かで、排気量の大きい自然吸気ユニットのような感覚である。もちろん、回せば3000rpm付近から本格的にトルクが湧き出し、高回転域までスムーズで力強い加速が続くのは、すでにゴルフGTIでも証明済みだ。
アメリカ市場を考慮して、トランスミッションはDSGではなく、オーソドックスなトルコン式ATが組み合わされるが、シフトアップ、シフトダウンともショックが小さく、素早いのも高く評価できる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
“スポーティグレード”として位置づけられる2.0Tには、スポーツサスペンションや235/45R17サイズのタイヤが標準で装着となる。そのため、やや硬めの乗り心地に加えて、一般道ではタイヤがドタバタする印象があり、また、高速でもバネ下が小刻みに動いているようなやや落ち着きのないマナーを示す。ハーシュネスの遮断もあまり褒められたものではない。
高速の直進性や高速コーナーの安定感などはたしかに優れるが、快適性を犠牲する必要はないはずだ。今後の熟成に期待したい。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年4月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:3513km
タイヤ:(前)235/45R17 97W(後)同じ(いずれも、ブリヂストン POTENZA)
オプション装備:バイキセノンヘッドライト/スタティック&ダイナミックコーナリングライト+ヘッドライトウォッシャー+オートライトシステム/レインセンサー付きフロントワイパー/自動防眩ルームミラー+メモリー機能/カミングホーム/リビングホーム機能+ウッドパネル+フロントレザースポーツシート+フロントパワーシート&シートヒーター=34万6500円/チルト機構付き電動ガラススライディングルーフ=12万6000円
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:341.7km
使用燃料:32.0リッター
参考燃費:10.7km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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