フォルクスワーゲン・ゴルフR32 3ドア(4WD/6MT)【試乗記】
アスリートチック、でもゴルフ 2006.04.12 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフR32 3ドア(4WD/6MT) ……440.0万円 ゴルフのハイパフォーマンスバージョン「R32」。6MTのみが設定される3ドアバージョンは、DSGを積む5ドアより“コア”な存在であり、もちろん走りは強烈。それでも「やはり、ゴルフである」という。さりげなく、さりげなくない
ゴルフR32がフツーのゴルフじゃないということは顔を見ればすぐわかる。VWが“ワッペングリル”と呼ぶ大型のフロントグリルが、GTIのブラック塗装に対し、R32は鈍く輝くシルバーメッキ塗装になっていて、目立つ。
室内に目を移す。ドアを開けると、ヘルメット着用も考慮したような大きなシートバックのレカロシートに驚かされるが、これは21万円のオプション。サイドサポートが小山のように高く、硬く、乗降性を多少犠牲にしてもドライビングプレジャーを高める形状。オプションを含めても、過去のどのゴルフよりも本格的なバケットシートだろう。
まだ走り出していないのに“おなかがイッパイ”になりそうだが、エンジンをかけると、これがノーマルのゴルフとは異なることを、今度は耳で知らされる。センター2本出しのマフラーから発せられるエグゾーストノートは野太く、ボリューム自体も大きい。どれくらい大きいかというと、試乗した西湖(山梨県。一周9.9km)の某地点からスタートし、クルマが湖を半周してもまだスタート地点で排気音が聞こえるくらいだ。演出過剰と感じる人もいるかもしれない。ただ、車内で聞くと、それほどでもない。
ことほどさように、R32は“さりげないゴルフ”との差別化を図るため、さりげなくないのだ。
走りは決定的に違う!
だが、ベーシックグレード及びGTIと決定的に異なるのはその走り。V6、3.2リッターエンジンは先代のR32と同じだが、マネジメントの変更によって、最高出力は先代に比べ9psアップの250ps/6300rpmを発する。ちなみに、最大トルクは同じだが、発生回転数は300rpm下がっている。
ヒトコトで言うと、強烈に速い。記憶上での比較になるが、体感的には排気量や価格の面でライバルの「BMW 130i」や「アルファ 147GTA」よりも、いろいろなシチュエーションで速いのだ。
スタンディングスタートでは、4WDの強みを最大限発揮して、ホイールスピンなしで背中を蹴られたような加速を見せる。そこから先も、つながりの自然な6段MTのギアリングによって、とんでもない勢いで速度を増していく。実に痛快。ただ、エンジンのフィーリング面で定評のあるライバル2台に一歩ヒケをとる、と感じるだろう。これは好みの問題だから、回転域が上がるに連れて音も実際の加速も盛り上がりを増すライバルより、ブオーンと一気呵成に吹け上がるR32のほうが好きという人がいても不思議はない。
それでも“ゴルフ”なのだ
R32が搭載する4WDシステム「4MOTION」は、ハルデックスカップリングを用いたオンデマンド型。前輪がスリップしない限りFF状態を保つ。よって、ハンドリングマナーも完全にFFのそれで、コーナリング中にリアが先にブレイクすることは絶対ない。……いや、正確には“僕レベルでは”絶対ない。しかし、フロントが滑ってそこからリアにトルクが伝わっても、よけいにプッシュアンダーを助長するはずだ。バリバリのLSDが入った機械式や、“ランエボ”の「AYC(アクティブヨーコントロール)」と方向性が異なるR32の4WDは、主にスタート時に、あり余るトルクを有効に伝えるためのものである。
運動性能のことばかり書いておいてなんだが、R32の最大の特徴は、これだけのドライビングプレジャーを享受できるクルマでありながら、ゴルフであること。つまり、大人4人と荷物を軽々飲み込む実用性を確保している、ということではないだろうか。家族を迎えにいく途中で見つけたボクスターを追いかけ回す! これが正しい(?)R32の使い方だと思う。
ちなみに、高速道路とワインディングをかなり飛ばして300km走り、燃費は7.56km/リッターだった。パフォーマンスを考慮すれば、ランニングコストもゴルフといえるだろう。
(文=NAVI塩見智/写真=峰昌宏/2006年4月)【Movie】これが史上最強の“アスリート・ゴルフ”「R32」だ!

塩見 智
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