フォルクスワーゲン・ゴルフGT TSI(FF/6MT)/TDI(FF/2ペダル6MT)【海外試乗記】
日本で乗れない高性能 2006.04.07 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフGT TSI(FF/6MT)/TDI(FF/2ペダル6MT) フォルクスワーゲン「ゴルフGT」に、新たに2種のエンジンが追加された。高出力、低燃費を狙った「1.4TSI」と「2.0TDI」の実力を、ドイツのウォルフスブルグから報告する。いずれも最高出力170ps
「ゴルフGT」。日本ではすでにおなじみのグレード名だが、今回まだ厳しい寒さの続くドイツはウォルフスブルグにて試乗してきたのは、それとはまったくの別のモデルである。まずは「R32」や「GTI」と共通の、しかしボディ同色とされた逆台形グリルや17インチホイールを履く外観に目が行くところだが、何より注目すべきは、その心臓だ。ゴルフGTが搭載しているのは、最高出力170psを発生する「TSI」ガソリン・ツインチャージャーと、「TDI」直噴ディーゼル・ターボの、いずれも最新のエンジンなのである。
TSIユニットのツインチャージャーとは、機械式スーパーチャージャーとターボチャージャーのこと。このふたつの過給器は、排気量1.4リッターの小さな直噴FSIエンジンに組み合わされる。狙いは高出力と低燃費の両立。それだけ聞くとありきたりなお題目という感じもするが、最高出力170ps/6200rpm、最大トルク24.5kgm/1750-4500rpmというスペックと、リッターあたり約13.9kmという低燃費ぶりを見ると、目を見張らないわけにはいかない。
7000rpmを超えて一気に回る
燃費向上に大きく貢献するのは、排気量の小ささとFSI。一方、パワー獲得にはターボチャージャーが搭載されているが、1.4リッターのエンジンには170psを発生させるだけの大きなタービンを回すのは荷が重い。そこで低速域ではクランクシャフトから直接駆動される機械式スーパーチャージャーによって、ラグなしで必要なだけのトルクをもたらすというのが大まかな構成である。ちなみに、その出力値は従来ボーラやパサートが積んでいた2.3リッターV5と肩を並べ、一方で燃費は約20%優れているというのがセールスポイントだ。
実際のパワー感も、基本的には2.3リッターあたりの自然吸気エンジンのようにナチュラル。それでいて、アクセルを踏み直した時などに素早くグッと立ち上がるトルクの頼もしさなど、過給ユニットらしい旨味もしっかり味わえる。無論、GTIの2.0リッターT-FSIと較べれば線は細いのだが、ショートストローク小排気量ということで回転上昇はより軽く、実際、回転計のレッドゾーンもGTIの6500rpmからに対して7000rpmからとされている。しかも踏み続けていると、その7000rpmを超えて7500rpmあたりまで一気に回ってくれるのだ。
この回すほどにパワーの高まる味わいは、個人的にはGTIより軽快でゴルフに合っていると思った。唐突に大トルクが立ち上がらない分、DSGとのマッチングもさらに良いに違いない。
ディーゼル人気の理由
もう1台のGTが積むTDIユニットは、最高出力の170psはTSIと同じだが、最大トルクは何と35.7kgmにも達する。もちろんDPF(ディーゼル微粒子フィルター)は標準装備で、排出ガスはクリーン。特にCO2排出量は、TSIに対して1割近く少ない。そして燃費もリッター当たり約17.0kmという好数値を実現している。
そんなデータ以上に驚かされるのが、そのパフォーマンスだ。DSGを1速に入れてアクセルを踏み込むと、回転の高まりを待つまでもなく、すぐさま強大なトルクが立ち上がり、まさにのけぞるような加速が始まる。4500rpmのレブリミットに到達すると、DSGが瞬時にシフトアップして、息つく間もなくどんどん速度が上がっていく。何しろ、溶け出した路肩の雪で路面がちょっとでも濡れていようものなら、3速だろうとホイールスピンが起こり、ESPランプがめまぐるしく点滅するほどの強烈なトルクなのである。
音や振動は従来より大幅に洗練されたものの、まだTSIほど静かではない。しかし、この力強さを味わってしまうと、あまり静か過ぎるよりかえってそれっぽいという気すらしてくる。ヨーロッパのディーゼル人気の理由が、改めてよくわかった。
このゴルフGT、日本導入についてはまだ未定だが、TSIについては「真剣に検討中」との回答を得た。ただし、今でもゴルフはすでに4つのエンジンを抱えているだけに、これ以上種類を増やすなら、ユーザーが混乱しないような手立てが必要だろう。一方、そのことを脇に置いて考えれば、TDIもぜひ日本で乗りたいと思わずにはおれない。とは言え、それは今後の状況次第ではあるが、しばらくは望み薄と思わざるを得ないのが、ちょっと残念である。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン/2006年4月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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