フォルクスワーゲン・パサートヴァリアント2.0T/パサート2.0/パサートV6 4モーション【試乗速報(前編)】
プレミアムよりクラスレス(前編) 2006.03.23 試乗記 フォルクスワーゲン・パサートヴァリアント2.0T(FF/6AT)/パサート2.0(FF/6AT)/パサートV6 4モーション(4WD/2ペダル6MT) ……428万2500円/333万7000円/439万円 フォルクスワーゲンのミディアムセダン「パサート」がフルモデルチェンジされ、6世代目となった。「ジェッタ」とともにセダン市場での存在感を増すべく投入されるモデルを、宮崎での試乗会でテストドライブした。親しみのわくブランド
フォルクスワーゲンというブランドのイメージは、今とてもいい感じの位置取りになっているのだと思う。「ビートル」「ゴルフ」という世界中で愛されるモデルを2台続けて送り出したことで、自動車の歴史に名を刻んだことは、誰もが認めるところだ。小型車づくりにかけてはリーディングカンパニーの地位は堅固たるものである。ゴルフは大きくなってしまったけれど、その代わりに「ポロ」「ルポ」というコンパクトカーがしっかりと用意されていて、この出来がまたすこぶるいいのだ。特に「ポロGTI」の実用とスポーティを兼ね備えたマルチプレーヤーぶりには感心した。
日本の市場での認知度も絶大なもので、クルマに興味がない人でもなんとなく「ワーゲン」という名は知っている。さりながら、ギラギラしたこれ見よがしな「ガイシャ感」が薄いところがいい。日本車とは違うんです、とお高くとまっているのではなく、製品の質で真正面から勝負しようという姿勢に好感が持てる。
小型車の枠にとどまらず、上級セグメントにもウイングをのばしているのだが、そこでも一歩引いた構えに親しみがわく。プレミアムSUVたる「トゥアレグ」だって、居丈高にすごみを利かせる様子はない。ミディアムセダンの「パサート」ともども、そのたたずまいには一種知的な印象がある。そこそこの高級感と信頼性を獲得しながら、むやみに敷居の高いところがない。ほかの輸入車ブランドには見られない、いいバランスである。
ワゴンはヴァリアントに
美点を並べたのだが、VWにとっては痛し痒しなのかもしれない。「小型車のトップを堅持しながら上級セグメントに確乎たる足場を築いていく」というテーマを実現していかなくてはならないからだ。要するに、もう少しプレムアム度を高めていきたい、という願いがある。いつまでもゴルフのイメージに頼っているわけにはいかないのだ。そこで、先日発表された「ジェッタ」とこのパサートの2枚看板で、セダンのブランドとして定着を図っていこうとしている。だから、あまり控えめな態度でのんきに過ごしてもいられない。
そこで、今度のパサートである。巨大化は昨今のDセグメントの倣いとはいえ、一見してずいぶん大きく立派になったと感じる。VWの新アイデンティティたるワッペングリルはもとより、さまざまなパーツにクローム仕上げが施されている。エレガント、ラクシュリーなどの属性を強調するための常套手段ではあるけれど、一昔前は日本車の得意技だったような記憶があるのは気のせいだろうか。
初めに乗ったのは、「パサートヴァリアント2.0T」だった。これまでパサートワゴンと呼ばれていたが、今回のチェンジを機会に欧州での呼び名に合わせた。日本に導入されるパサートはセダンとワゴンの2車形に、それぞれ2リッターFSI、2リッターFSIターボ、3.2リッターV6という3種のエンジンが積まれて計6モデルとなる。ただし、ヴァリアントに関してはV6モデルだけが遅れて秋の発売になるので、すぐに購入が可能なのは5モデルだ。
ゴルフと同じターボエンジン
従来は、2リッター直列4気筒、2.3リッターV5、2.8リッターV6、4リッターW8というすべてNAのエンジンラインナップだった。ゴルフやジェッタに採用されているターボが、パサートにも搭載されるわけである。乗ってみての単純な印象を記せば、速い、と感じた。低回転域から豊富なトルクが供給されていて、パサートにとっても動力性能としては十分だ。
ただ、ジェッタに乗った時に感じた少々暴れん坊という印象はなく、マイルドな走りである。これは、組み合わされるトランスミッションの影響が大きいのだろう。DSGが与えられたジェッタではラフな動作に対して時にホイールスピンなどの直截的なレスポンスをよこしたが、パサートではずいぶん丸い印象を受ける。よくできた6段ATがしっかりとパワーを受け止めていて、このクラスのクルマにはふさわしい躾けだと言えよう。
パサートヴァリアントは、セダンモデルとは違ってリアシートがダブルフォールディングとなっている。これによって最大長1960mmを確保し、通常でも従来より108リッター増えて603リッターの容量を持つ荷室が、最大ではこれも131リッター増の1731リッターまで拡大する。隆盛のライフスタイルワゴンではなく、実用性を担保するという姿勢が見てとれる。ただ、このシートの折りたたみには、結構気合と力を要した。他のVW車も同様なのだが、各部の操作に骨が折れる場合が多い。それだけ堅牢で強靭な作りなのだろうが、日常使いにはすこしばかり過剰な気もする。(後編につづく)
(文=NAVI鈴木真人/写真=高橋信宏/2006年3月)
・フォルクスワーゲン・パサートヴァリアント2.0T/パサート2.0/パサートV6 4モーション【試乗速報(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017969.html

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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