トヨタRAV4 G(4WD/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタRAV4 G(4WD/CVT) 2005.12.30 試乗記 ……281万850円 総合評価……★★★ 11年振りに生まれ変わった、トヨタの街乗りヨンク、3代目新型「RAV4」。2.4リッター5ドアのみとなり、アメリカに向け大きくなった。乗ってみると……。
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手軽なアメリカン
月面車のような背高3ドアモデルと、若かったキムタクがカッチョよかった初代「RAV4」。ゆく川の流れは絶えずして、Recreational Active Vehicle 4wheel drive(おぼえてる?)もいまや3代目。衝撃的だったわりに売れ行き伸び悩んだ3ドアは、2代目で冷や飯、今回ついに捨てられた。ニューRAV4、5ドアのみの設定である。
車型の絞り込みは、「SUVからミニバンに人気が移って久しい国内マーケットに配慮か?」と思いきやさにあらず。2.4リッターに拡大されたエンジンと新開発CVTが組み合わされたパワーパックがブランニューのプラットフォームに載せられるという贅沢な内容。日本市場の約12倍、年間販売台数30万台と予想される北米をニラんでのことで、彼の地では、大型SUVから下方移行する顧客もとりこみたい。
アメリカでライバルと真っ向対決するため大きくなったとはいえ、それでも宿敵「ホンダCR-V」ほか、「フォード・エスケープ」「ランドローバー・フリーランダー」などより小柄なボディ。多彩なシートアレンジ。狭いニッポンで比較的苦労すくなく“アメリカン”を味わいたいヒトに。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヨンクといえばヘビーデューティという概念を覆し、街乗り重視のSUVのはしりとして1994年に産声をあげた「RAV4」。泥臭くないスタイリッシュなデザイン、コンパクトなボディ、四輪独立懸架の足まわりなどを盛り込んだこのクラスの先駆けが、2005年11月14日に3代目へと進化した。バリエーションに3ドアはなく、5ドアのみ。全長×全幅×全高=4335×1815×1685mm、ホイールベース=2560mmとほぼすべてのディメンションを大幅に拡大した。
先代まで1.8、2リッターと2種類あったエンジンは、VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)付き「2AZ-FE」型の改良版2.4リッター直4(170ps、22.8kgm)に一本化。トランスミッションは、マニュアル感覚で7段シフトできる「7速スポーツシーケンシャルシフトマチック」だけと構成はシンプルだ。サスペンションは前マクファーソンストラット式、後ダブルウィッシュボーン式。リアはアブソーバーを床下に斜めに配置し上部の空間侵食を極力避けたのがポイントという。
4WDは「アクティブトルクコントロール4WD」で、「S-VSC」(ステアリング協調車両安定性制御システム)とともに、車両安定に寄与すべく、電動パワーステアリング(EPS)とブレーキ制御(VSC、ABS)、駆動力制御(TRC)、前後輪トルク配分を行う電子制御カップリングを協調コントロールする。ヨンクのみならず2WDもある。
(グレード概要)
テスト車「G(4WD)」は、3グレードあるヨンクのなかの中間モデル、ベーシックな「X」の上級という位置付けで、XにUVカット機能付きプライバシーガラスやフロントフォグランプ、本革巻きステアリングホイール&シフトノブなどを追加した内容。さらにX専用装備として、キー携帯で解錠・施錠、エンジン始動ができる「スマートエントリー&スタートシステム」やクルーズコントロール、空気中のカビ菌の活動を抑制するなどの機能を持つ「プラズマクラスター」などを標準で揃える。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
派手に2段になったインストゥルメントパネル。わかりやすく彫刻的な造形のドアオープナーまわり。いまひとつ品はないが、デザイナーの頑張りが表に出たインパネまわり。一方、速度計を真ん中においた3眼メーター、高い位置に置かれたナビゲーション用ディスプレイ、大きな空調スイッチ類と、使いやすくコンベンショナルな機能面。ケチをつけるとすると、エアコンのオンオフスイッチと、風量調整用スイッチが離れていてまぎらわしい。27万5100円のオプション装備となるHDDナビは、“一見さん”にも迷うことなく使える。ぜひ付けたい。
(前席)……★★★
アメリカ向けに、サイズがやや拡大されたフロントシート。運転席側には、レバーを上下することで座面の高さを調整するラチェット式ハイトコントロールが備わる。座面、背もたれ、サイドサポートと、凝ったカタチを採るが、みかけほどホールド性が高いわけではない。むしろあたりがソフトな、安楽志向のシート。SUVとして順当なものか。
(後席)……★★★
ニュープラットフォームの成果のひとつが、背もたれ上部横のレバーをひくだけで、座面が前方下に沈み、バックレストをきれいにたためるようになったリアシート。着座位置は低めで、フォールディング機能とひきかえに(?)、クッションは薄い。輸出メインの車種ゆえか、センターシートにも3点式シートベルトが備わるのがプラスポイント。
(荷室)……★★★★
今回RAV4は、シートアレンジに有利なフラットな床面と荷室高を稼ぐため、プロペラシャフトをまたがない平型燃料タンク、同様に形状を工夫したマフラー、さらに寝かしたリアダンパーの取り付け方法が採用された。5名乗車時のラゲッジスペースは450リッター(VDA法)。大型スーツケースが4コ積めるという。床下にも深い収納あり。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
VVT-iこと連続可変バルブタイミング機構を搭載した2.4リッター直4ツインカムは、170ps/6000rpmの最高出力と、22,8kgm/4000rpmの最大トルクを発生する。大きめのアウトプットに対応して組み合わされたトランスミッションが、注目のスーパーCVT-i。加速時の、回転の急激な上昇を抑えた自然なフィールと、ショックすくなく、しかしギアチェンジが明確に感じられる、あたかも多段式ATのようなシフトアップ、ダウンを実現。そもそも「なんのためのCVT機構か?」の疑問なしとはしないが、機関類が前面に出ない黒子ぶりはさすが。完成度は高い。今後、ほかのモデルにも展開されるはずだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
フロントに新開発のマクファーソン・ストラット、リアをダブルウィッシュボーンとした3代目のアシまわり。「キビキビ軽快に」と謳われるほど、ダイレクトに、俊敏に走る感じはない。高めの重心、どこかトロンとした乗り心地。そもそもRAV4は、“乗用車ベースのSUV”というジャンルの先駆者であった。新しいRAV4のドライブフィールも、トヨタの乗用車らしいといえばいえる。視点が高いだけで。都市部でも構えることなく運転できる。車速感応型電動パワーステアリングは、ブラシレスの大型モーターを使い、アシスト量の制御も洗練され、違和感がなくなった。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2005年12月6〜9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:15101km
タイヤ:(前)225/65R17(後)同じ(いずれも ブリヂストン DUELER H/T M+S)
オプション装備:SRSサイドエアバッグ(運転席・助手席)&SRSカーテンシールドエアバッグ(前後席)(6万3000円)/HDDナビゲーションシステム(27万5100円)/S-VSC+アクティブコントロール4WD強調制御、ヒルスタートアシストコントロール&ダウンヒルアシストコントロール(ADC)制御(6万3000円)/ルーフレール(シルバーメタリック)(3万6750円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:170.6km
使用燃料:22.8リッター
参考燃費:7.5km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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