アウディA6 3.2 FSIクワトロ(6AT)/4.2クワトロ(6AT)【試乗記】
技術で攻めて欲しい 2004.10.05 試乗記 アウディA6 3.2 FSIクワトロ(6AT)/4.2クワトロ(6AT) ……768.0万円/888.0万円 伝統のダブルグリルを一体化させて威圧感ある顔となった、アウディのミドルサルーン「A6」。新エンジンを搭載する「3.2 FSIクワトロ」と、トップグレード「4.2クワトロ」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。
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メッセージ性はあるが……
「アウディA6」の新しい顔は、たしかに新型に変わったというメッセージを強く伝えてくる。往時のアウトウニオン・レーシングカーを思い出させる「シングルフレーム」の大きなラジエーターグリルは、後続車としてバックミラーでとらえる姿に迫力があり、威圧感に満ちている。
しかし、これではあまりにも、メルセデスベンツ・コンプレックス剥き出し、という感じもする。アウディというクルマは、保守本流をちょっと外した少数派ながら、知性を感じさせるカッコよさがあり、孤高の気品すら感じられたものだ。
フロントの顔は変化を強調する意味では、追いかける者の意思として許容するとしても、相対的にリアはやや弱い。細めのCピラーと傾斜の強いリアウィンドウにより、セダンらしい落ちつきが削がれている。
ディテールの処理については、旧型のデザイナーから発表時に聞いた話が記憶に残る。あの独特の丸味は、長い間(4年だったと思う)手元に置いて眺め、気に入るまで微修正を加えた結果だそうだ。最近のデザインは、パッと閃いたアイディアを即座に具現してしまう技法が流行りらしく、じっくり時間をかけて熟成されたものとは違う。粗削りなほど斬新、という風潮もあるようだが……。
新しいボディは、全長で110mm長く、幅で45mm広くなり、高さも5mm高い。ホイールベースは80mmプラスされ、いまや「A8」に迫るほどになった。全長4.9mは、もはや立派なフルサイズ高級車である。
そして、当然重量も増した。4.2クワトロで1850kg、3.2クワトロで1790kgと、予想よりは増えていないけれども、実際に乗ってみるとやはり大きく重くなったことは否めない。従来のA6の軽快なスポーティ感覚は鈍化した。緩慢な動きは高級化の証かもしれないが、アルミボディの硬質さが感じられるA8の方が、むしろアウディらしく感じられる。
完成域にあるクワトロ
搭載されるエンジンは3種あって、2.4リッターFFはこれまでどおりアウディの伝統的なボア81mmを使ったV6で、177psと23.4kgmを発生。3.2のV6と4.2のV8は、84.5mmのボアと92.8mmのストロークを共用する、90度バンクのモジュラー型である。FSI(直噴)の燃料供給により、それぞれ255ps/33.6kgmと335ps/42.8kgmのパワー/トルクを発生する。V6の3.2は数字は同じでも、「TTクーペ」などに搭載されている横置き狭角V6とはまったく違うユニットだ。
ギアボックスは2.4リッターにCVTを組み合わせるが、3.2と4.2には6段ATが与えられる。これはA8の時にも記したが、ZF流にローギアがワイドな設定で、1速から2速へ上げたときにギアが離れすぎていて回転数が落ちてしまい、加速感が物足りない。それもあってか、ATはドイツ車にありがちな2速発進を拒否し、必ず1速からスタートする。アウディ・ファンとしては早期に、シーケンシャルギアボックス「DSG」を縦置きエンジンにも装着できるよう努力して欲しいところだ。その際には、ギア比をクロースさせることをくれぐれも忘れないで欲しい。
4WDのクワトロシステムについては、もはや完成域にありこれ以上望むべくもない。
しかし、こうしてみると、新しい顔を肯定した上でも、今度のA6にはアウディらしい新味が感じられなかった。妥協しないで技術的にガンガン攻めるのがアウディのカッコ良さである。この程度で十分と甘んじてしまい、素人受けする「売れるアウディ」を目指したときに、アウディらしさは失われる。今度のA6からは、そんな雰囲気が感じられた。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏/2004年10月)

笹目 二朗
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