アウディA4/ S4シリーズ【試乗記】
塩味というより味噌味 2005.03.25 試乗記 アウディA4/ S4シリーズ 1972年デビューの「アウディ80」を祖とし、7代目へと進化した「A4」。新たなデザインアイデンティティを取り入れ、新エンジン2種を加えて登場した。『webCG』本諏訪裕幸は、エンジンにばかり気を取られていたが……。 拡大 |
拡大 |
拡大 |
売り上げの半数を占める重要モデル
日本では、常態となった不況と国産車のがんばりもあってか、全乗用車にしめる輸入車の販売台数が減少している。そのなかで5年連続台数を伸ばし続けているのがアウディ。ディーラー網をスクラッチ&ビルド、「プレミアム」のイメージを打ち出したのが、(今のところ)成功している。
そのアウディラインナップ中、主力となるのが今回第7世代に進化した、と謳われる「A4」。国内販売台数の約半数を占めるだけでなく、A4からさらに上級の「A6」に乗り換えるステップアップ組も多いというから、大事に育てなくてはいけないモデルなのだ。
まずモデルチェンジの概要を説明しておこう。
A6に始まる新世代アウディ共通のデザインアイデンティティであるシングルフレームのフロントグリルが、今回からA4にも取り入れられた。ライトを大きくしたヘッドランプ、アーチ状のテールランプなどがエクステリアの変更点。
日本仕様のエンジンは3種に集約。2リッター(130ps、19.9kgm)に加えて、2.0直噴ターボ(200ps、28.5kgm)と3.2リッターV6(255ps、28.5kgm)の新ユニット2種が投入された。ハイパフォーマンスモデル「S4」はキャリーオーバーの4.2リッターV8(344ps、41.8kgm)を搭載する。2リッターのみFF+CVT(マルチトロニック)で、他はクワトロシステム+6段AT(ティプトロニック)の組み合わせ。ボディはセダンのほか、S4を含めた全グレードに+18.0万円でワゴンボディの「アバント」が用意される。
多くのユーザーが待ち望んでいる2ペダルマニュアルトランスミッション「DSG」の採用はない。「A3スポーツバック」は2.0直噴ターボも、3.2もDSGなのに……、と思われる方もいらっしゃると思うが、これはエンジン搭載位置が関係している。A3がエンジンを横置きするのに対して、A4は縦置き。現在のところDSGは横置きエンジン用しか用意されていないのだ。
新型とはいいつつ大きな変化もなく、内容はビッグマイナーチェンジとも言える。変更の主な点は化粧直しと直噴エンジンの投入なのだ……と理解していた。それでは、新エンジンの味を楽しんでみるかと走り出すと、思わぬところで先代A4との違いを感じた。それは足まわりの大きな変化だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗り心地がいいのはS4
まずは、注目の新エンジン搭載グレード「2.0TFSI」のアバントに乗る。200psと28.5kgmというユニットは動力性能としては十分。とはいうものの、クワトロシステムが載ることにより、1680kg(セダンは1630kg)に達した重量は軽快な走りとはほど遠い、と感じた。足まわりは想像より柔らかい。また、ダンパーとスプリングの相性が悪いのか、低速高速問わずふわふわした乗り心地を見せた。
しかし「S-lineパッケージ」装着車で大きく印象が変わった。「S-line」とはS4を除くA4シリーズすべて(アバント含む)に用意される、スポーティな内外装やスポーツサスペンションを装備し、235/45R17タイヤを履くなどするパッケージオプション。この「2.0TFSI S-line」が個人的にイメージしていた「アウディ」に一番近い、しっかりした乗り心地。ボディ剛性の高さやクワトロシステム、タイヤのグリップがターボエンジンとうまくマッチし、上質な走りを味わえる。
さらにS-lineのもう一つの美点は、ステアリング裏に備わるパドルシフトである。先代ではステアリング表面のスイッチを親指で操作する方式だったのだが、ステアリング上にオーディオコントロールなどが付いた関係で、パドルシフトが採用されたという。パドルの方が操作性に優れると感じるリポーターにはうれしいオプションだ。
次にベーシックな2.0に試乗。シリーズ最軽量だが、それでも1470kg。そこで力不足をうまくフォローするのがCVTで、トルクゾーンをうまく使い、スムーズな加速を実現する。とはいうものの登坂路やブレーキング時に、ボディの重さを感じるのは事実。足まわりの印象はTFSIとほぼ同じ。
ハイパフォーマンスモデルS4でも、角が取れた印象を受けた。高速道路ではさすがに硬さを感じるが、普段乗りでは一番乗り心地がいいと思わせるぐらいしなやかだ。先代S4のガチガチに固められた足まわりと違い、乗り心地を重視しつつもスポーティさを損なっていないというセッティングレベルの高さを感じられる。パワーの十分さは言うまでもない。
拡大 |
拡大 |
アウディに求められるもの
総じてすべてのグレードで、乗り心地が先代に比べてマイルドになった。「日本車に近い」という表現を是と取るか非と取るかは人次第だが、そのようなソフトさである。ただし、サスペンションの細やかな動きはやはりドイツ車。日本車のことを悪くいうわけではないが、微低速から高速でのダンパーの働き具合はまだまだ差があるように感じる。
日本のユーザーが「アウディ」に何を期待しているかによるが、一般的に言うところの“ドイツ車”とは、硬い足まわりにガッチリとしたボディ、そこからくる重厚な動きと安心感だろう。今回のA4シリーズは、そういう意味では多少味が薄れてしまったといえる。個人的に残念ではあるが、とはいうものの好意的にとらえる人も多いはずである。ドイツの塩味から、濃厚なコクのある味噌味に変わった点は日本で歓迎されるに違いない。
ドイツ車好きのリポーターのように、がっちりとした塩味を好む方はS-lineを選ぶといいだろう。お薦めは2.0TFSIのS-line。エンジンと足まわり、装備などのバランスが一番よいと思われる。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=河野敦樹/2005年3月)

本諏訪 裕幸
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。





























