アウディA4 2.0 TFSIウルトラ(FF/7AT)
新たな“台風の目”現る 2016.01.06 試乗記 アウディの基幹モデル「A4」が8年ぶりにフルモデルチェンジ。2リッターガソリンターボエンジンを搭載した「2.0 TFSIウルトラ」に試乗した。注目は新しいプラットフォーム
アウディの基幹車種であるA4。そのフルモデルチェンジは実に8年ぶりである。この手のクルマが通常の期間よりも改変に多くの時を費やすことは、法人需要や車検代替での安定した商機を逃す恐れもあるわけで、本来は相当イレギュラーなことだ。それでもアウディがそれを断行したのは、このモデルが新たなプラットフォームを世に問う最初のものであり、ライバルのブラッシュアップを上回るクオリティーを確保する上で時間を要したからではないかと思う。
間もなく日本に投入されるだろうグレードの詳細は、現状ではわかっていない。件(くだん)のディーゼルに関しては同時導入をもくろんでいたようだが、グループの現況や日本の市況も鑑みて当初はラインナップから外される可能性もある。いずれにせよ、逆風からの船出にはなってしまうだろう。が、それがなかったとしても新型A4の技術的な見どころは非常に多い。
社内では「MLBエボ」と呼ばれる新しいプラットフォームは、モノコックの主要構造材やサスペンションメンバーなどに熱間成形の超高張力鋼を多用、アウタースキンのアルミ化など材料置換を行き届かせたことで、従来のA4に対して最大120kgの減量に成功している。エボという呼称が示す通り、基本思想はエンジンをキャビン側に押し込んだ先代A4からの縦置きFFのそれを継承するが、中身は完全に別物。象徴的なのは「トラペゾイダル」と呼ばれていたダブルウィッシュボーン系のリアサスが置き換わり、サス形式は事実上前後マルチリンクとなったことだ。
一頭地を抜く内外装のクオリティー
四捨五入で車寸を示せば、全長が4730mmで全幅が1840mm、そして全高が1430mmと、新型A4は「直接的なライバルに対してちょっと大きい」というスタンスを相変わらず守っている。これは内外装造形の自由度のみならず、縦置きFRプラットフォームの「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」に対して、居住性や積載力で明らかに優位に立つためのポイントだ。ただし、駐車場環境の特殊な日本市場では、1840mmに達した車幅が不利に働くことも考えられるだろう。
アウディの魅力のひとつである静的質感、特に内外装の精緻な作りこみは、新型A4でも間違いなく大きなセリングポイントとなるだろう。個人的には内装よりむしろ驚かされたのは、一見代り映えしないデザインにみえるかもしれない外装の精緻さだった。
パネル間のチリ詰めは前型でも強烈な領域に達していたが、新型でさらに際立っているのはプレスラインの鋭さで、特にドアをまたいで前後のランプをつなぐアウディ共通のキャラクターラインの精密さには驚かされる。
ドアまわりにこれほど繊細なラインを入れるということは、工場での生産精度が高くなければ途端にアラが出るばかりでなく、ドア落ちなど後々の経年劣化に対しても絶対の自信をもっていなければできないことだ。ライバルが果たしてこの突き詰めっぷりをどう捉えているかは非常に興味深い。
動力性能も燃費も申し分なし
新型A4に搭載されるパワートレインはディーゼル(TDI)が4種類、ガソリン(TFSI)が3種類の計7バリエーションになる。前述の通り、日本導入のそれは不透明ながら、導入が確実視されるのはまったく新しい2リッター直4 TFSIだ。
このエンジンは、ターボチャージャーによって圧縮・送入される吸気をバルブの早閉じで適切に制御することで吸気行程時間を短縮、ポンピングロスを減らして高効率化をはかるなど、ミラーサイクルをアウディ的解釈で採り入れたもの。そのパフォーマンスは非の打ちどころがなく、この手のエンジンが不得手とする高回転域でもフィーリングは軽快そのもので、6000rpmオーバーのレッドゾーンに至るまでパワーの乗りも申し分ない。また、複雑になった動弁系を持つにもかかわらず稼働音も静かだ。試乗車は恐らく日本仕様と同じだろう7段Sトロニックが組み合わされていたが、活発な性格もあってスポーツドライビングにも存分に応えてくれる小気味よさをみせてくれた。ちなみにこのエンジンは、0-100km/h加速7.3秒、最高速210km/hという動力性能と共に、欧州複合モードで4.8リッター/100km(約20.8km/リッター)と燃費性能も見事に両立している。
競争はより激しいものに
エンジンルームからの侵入音のみならず、風切り音やロードノイズの類いもしっかり封じられた車内はとにかく静かだ。アウディが言う「A8」並みというのはいささか大げさに思えるも、Eセグメント級の静粛性は十分に備えている。アコースティックガラスの採用やCd値では0.23という優れたエアロダイナミクスがキャビンまわりからの異音低減にひと役かっていることは間違いない。そして、うねりや突き上げるような凹凸をいなし、上屋をフラットに保つ乗り心地の良さもまた、先代からの大きな進化としてみてとれる。先代に対すればコーナーでの見事なロードホールディングはそのままに、軽量化による身のこなしの軽さも十分に感じ取れるものの、個人的には新型A4、快適性の側により大きな伸びしろが感じられるというのが試乗しての印象だった。
ジャガーやレクサス、キャデラックも加わって、プレミアムDセグメントの覇権争いはCセグメント以上に激しい様相を呈している。が、新型A4の登場によって、ライバルたちは間違いなく何らかの目標を再設定することになるだろう。ちなみにこのセグメントでフルモデルチェンジを控える銘柄は、ここ1~2年はないはずだ。携わるエンジニアだけでなくお客さんの側も、並べて悩んではもんもんとする時がしばし続くことになるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=アウディ)
テスト車のデータ
アウディA4 2.0 TFSIウルトラ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4726×1842×1427mm
ホイールベース:2820mm
車重:1405kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190ps(140kW)/4200-6000rpm
最大トルク:32.6kgm(320Nm)/1450-4200rpm
タイヤ:(前)245/40R18 97Y/(後)245/40R18 97Y(ハンコック・ベンタスS1 evo2)
燃費:4.8リッター/100km(約20.8km/リッター、欧州複合モード、205/60R16サイズのタイヤ装着車)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。






























