マツダ・ロードスターRS(6MT)【試乗記】
誰にとっても駿馬 2005.08.26 試乗記 マツダ・ロードスターRS(6MT) ……261万5500円 発表されたばかりの3代目「マツダ・ロードスター」に、筑波サーキットで試乗! “人馬一体”を謳うニューモデルは、どんな“馬”なのか?乗ったとたん、気が軽い
ちょっと遅刻してしまい、筑波サーキットに到着して息もつかぬ間に試乗となった。心構えもなく初めてのクルマに、テクニカルなことで知られる場所で乗るのだから、なおさら緊張する。
が、コースインして1コーナーに入ったとたん、気が軽くなった。まるで長い間乗っていたクルマのように馴染み、自分が思った通り、しかも、安心感をもって走ることができる。楽しくて自然と顔がニヤけた。
日本が誇る2シーターオープンスポーツ、ご存じ「マツダ・ロードスター」がフルモデルチェンジをうけ、3代目に進化した。今回乗ったのは『webCG』で以前紹介した北米仕様「Mazda MX-5」ではない、右ハンドルの「ロードスターRS」。6MTのみ、ビルシュタイン製ダンパーや17インチタイヤ、フロントサスペンションタワーバーなどを標準で備える、もっともスポーティなグレードである。日本ではこれに加え、エントリーグレード「ロードスター」(5MTと6AT)と、オレンジがかった茶色「サドルタン」の内装色が標準の豪華版「VS」(6MTと6AT)を設定。価格は220万円から260万円まで。世界限定3500台、日本では500台が販売される「3rd Generation Limited」は275万円である。
よい加減
試乗車には、オプション装備のBOSE製サウンドシステムやスマートキーなどが装着されていたが、アンチスピンデバイス「DSC」は未装着。サーキット試乗を考慮した、マツダの「粋なはからい」だろう。
RSのインテリアはブラックのみで、写真のサドルタン内装ほどではないとはいえ、ダッシュボードの質感やメーターやセンターパネルのデザインが垢抜けた印象。サイドポケットやセンタートンネル等にもうけられた、サイフや携帯電話をヒョイと入れられる小物入れは便利。2シーターオープンとしては気が利いている。
……なんてことに後で気づいたほど急いでコースインしたのに、3代目ロードスターは気安く楽しめるのが本分だと思う。2リッターのみに絞られたエンジンは、息が詰まるほど速くないが、アイドリングでクラッチミートしても前に進み、扱いはラクチン。回転の上がり、下がりも適当で、ギア比の幅が狭い6MTでも大急ぎでギアシフトしなくてすむ。コーナーでは、ステアリングホイールを切った状態でアクセルペダルをゆるめ、おしりを「ズルっ」とさせる余裕すらあった。なにもが、よい加減。先代「NB」のレース仕様「NR-A」で感じた、前と後ろがズレて動く感触がなく「剛性が高まったなぁ」「ラップタイムはかなり縮まったみたい。でも速く走らせるのは、あいかわらず難しいんだろう」「EBAの介入が、サーキットだとちょっと早いかな」なんて考えながら。
“素性”で本質をつくりこむ
試乗できたのは一般走行(危ないコーナー手前にシケインを設置)とフリー走行(シケインなし)が3周ずつと、走行シーン撮影の2周。その撮影タイムに、僭越ながらチーフエンジニアの貴島孝雄さんに運転をお願いし、助手席から「3代目ロードスターとは?」についてインタビューした。貴島さんはNA(初代)主査の平井敏彦さんと一緒に、人間の感覚をSAE(Society of Automotive Engineers)論文で発表した方で、リポーターの感じた漠然としたモノについて、説明していただけると思ったからである。
パドックからピットレーンに出る狭い曲がり角で、「ココです、こういうトコロでも楽しいのがロードスターなんですよ」と貴島さんはおっしゃる。ステアリングゲインやリニア感など「思った通りに走る感じ」は、低速でも高速でも味わえる。たとえば交差点でもOKだという。たしかに。
−−では、それはどこから生まれるのでしょう?
「ボディ剛性アップや軽量化、重心高を低め、前後重量配分の均等化、慣性モーメントの低減……」
−−クルマの動的性能を求めるにあたって、すごく基本的なことですね。試乗車のタイヤを見たら、前後が均等に減ってましたし。
「そう、基本を抑えてバランスよく仕上げました。素の部分で本質をつくりこむ。“素性”というものが、ロードスターをロードスターたらしめているんです」
−−目につくトコロや、乗った感触も立派になりました。
「見た目もそうなんですが、ボディ剛性やサスペンションの性能も、乗って立派になったと感じる一因でしょう」
「やはり軽さです」
約束の2周があっという間に終わったと思ったら、貴島さん、カメラカーにむかってニヤっと笑い、3周目に突入してくれた。楽しそうな横顔に話を続ける。
−−NA型や昔のMG、ロータスなど、プリミティブであることや、コーナリング時にリアが流れやすいから「楽しい」という方もいます。初代の評価が高い理由も、ある種そこにあるかと。
「そういう意見もありますが、現代のクルマに求められるものは満たさなければならない。リアが流れることは多くの方にとっては“非常に危険な状態”。また、思う通りに曲がることとも違います。挙動変化、衝突や安全性、剛性、質感などはNAと異なる次元にある一方、ロードスターたる感覚を実現する。それにあたって大事なのは、やはり軽さです」
−−ボディの強化や軽量化は目に見えず、ウリにしにくい。さらに、コストがかかるので、メーカーとして取り組むのは、なかなか……と聞いています。
「そうですね……。でもスポーツカー、特にライトウェイトスポーツにおいて、軽さが性能なんです。そこには惜しみなくコストをかけた。それを、多くの方の手に届く価格でご提供する」
−−タイヘンですね。
「まぁ、それが我々の仕事ですよ(笑)」
ロードスターから感じた印象に対する真っ直ぐなお答えは、ストライクゾーンぎりぎりに入った伸びのあるストレートのようで、手が出ない。リポーター、「100万円台で手が届けば……」ともつっこめなかった。
クルマを降りて、パドックに並ぶロードスターを眺める。写真で見るよりもリアフェンダーの張り出しは小さく、プレーンなフォルム。誰がどこで乗っても、走り屋チューンでもファッション系にしても、似合いそうだ。見た目も中身も、場所やシチュエーションを限定しない。3代目の掲げたテーマ“人馬一体”は、誰にとっても駿馬になることと見つけたり。
……なんて思いつつ、筑波サーキットを後にした。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2005年8月)

大澤 俊博
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。

































