トヨタ・アルファードAX「Lエディション」8人乗り(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルファードAX「Lエディション」8人乗り(4AT) 2005.08.03 試乗記 ……357万8400円 総合評価……★★★ 「アルファード」シリーズがマイナーチェンジを受け、内外装に小変更が施された。4気筒2.4リッターエンジンを搭載するモデルのスポーティなグレードに試乗した。もっともっと、「おもてなし」を
セダンなどの乗用車に乗っていてミニバンに乗り換えた直後は、多少なりともナーバスになる。車体は大きいし重心も高いという思いがあるので、どうしても運転に気を遣ってしまうのだ。特に「アルファード」のような大型ミニバンに乗ると、路地ではすり抜けに苦労し、コーナーではオーバースピードにならないように慎重にアプローチする。
しかし、少し慣れてくると、これらの心配がまったく杞憂であったことに気づくのだ。高いアイポイントから見切りのいい前方視界が確保され、ギリギリの幅でもストレスなく通り抜けることができる。また、山道でのコーナリングでもさほどロールを感じることなく、不安感を抱かずにクリアしていく。
3リッターV6モデルにも乗ったのだが、やはり力強さとスムーズさでは少々ヒケを取る部分がある。それだけV6モデルの出来がよかったわけで、この2.4リッター4気筒でもさして不満があるということではない。料金所ダッシュや追い越しのときに、無粋なエンジン音の侵入が煩わしい程度である。軽快感という面では、むしろこちらのほうが分があるだろう。ただし、乗車定員の8人フル乗車したときには違う感想を持つかもしれない。
ただ、マイナーチェンジしたとはいえ、昨今のミニバンの進化を考えると、今となっては時代遅れなところもある。内装の質感は現在の基準からすると見劣りするし、収納やシートアレンジなどのユーティリティも物足りない。「フラッグシップ・ミニバン」だけに、なんでも詰め込まなくてはならないことはわかるが、目を引くわかりやすい特徴が欲しいように思う。安い買い物ではないだけに、もっと「おもてなし」されている感覚を持ちたいのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年にデビューしたトヨタの7/8人乗りのミニバンが「アルファード」。プラットフォームやパワートレインは多くを「エスティマ」と共用するが、広い室内に「もてなし感」をプラスして「最上級ミニバン」に仕立てている。「アルファードG」はトヨペット店、「アルファードV」はネッツ店で販売される
エンジンは3リッターV6と2.4リッター直4の2種があり、それぞれにFFと4WDのモデルがある。セカンドシートのタイプにより、7人乗りと8人乗りに分かれる。
2005年4月にマイナーチェンジし、フロントグリル、ヘッドランプ、リアコンビネーションランプなどに変更を施した。
(グレード概要)
2.4AXの8人乗りは、セカンドシートが6:4分割式で、回転対面シート仕様となる。内装色はアイボリー。「Lエディション」には、アルミホイールやクリアランスソナーなどが標準で用意される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
オプティトロンメーターの視認性はすこぶる良好で、スイッチ類の配置はトヨタ流の使い勝手のよいもの。しばらくトヨタ車に乗っていると、この楽で安心感のある環境に慣れきってしまうので困る。ダッシュボードやステアリングホイールの質感は、もう少しうまく演出する方法がありそうだ。収納スペースは十分ではあるが、この広さならもっと簡便に使える場所を増やすこともできるはずだ。
(前席)……★★★
Aピラーのいい位置にグリップがあって、ステップを利用しての乗り降りは容易だ。古風な柄のファブリックシートは厚みがあり、アームレストを出せば立派な応接室感覚である。とはいえ、アイボリー内装のセンターパネルの明るい茶色はちょっと目立ち過ぎの感もあって落ち着かない。また、カップホルダーは作りが華奢で、うっかり壊してしまいそう。広いウィンドスクリーンがもたらす開放感は、高いアイポイントとあいまって気分がいい。
(2列目シート)……★★★★
前後のスライド量が豊富で、3列目に乗員がいない場合はシートを目一杯後ろに持っていけば、広大な空間が出現する。また、6:4分割式のシートがそれぞれ回転し、3列目と対座させることもできる。この場合も間には十分なスペースが確保され、足がぶつかる心配もなく、ババ抜きぐらいは余裕でできそうだ。電車の対座シートに比べれば、圧倒的に快適である。9型ワイドディスプレイをオプションで選べば、間違いなくこのクルマの特等席となるのが2列目だ。
(3列目シート)……★★★
荷物を大量に積むのでない限り、3列目にも十分な足元スペースが確保されている。頭上に余裕があるので、閉塞感を感じることはほとんどない。エアコンの吹き出し口からは勢いよく冷気が流れていて、前席と同様な快適さが保たれている。乗り心地も2列目と比べて大きく劣るところはない。ただ、これは2列目にも言えることだが、3人が並んで乗車するのはつらそうだ。
(荷室)……★★★
3列目を最後部まで下げると、荷室にはほんの小さなものしか載らなくなる。広大なスペースを存分に利用できるのは、3列目シートを横に跳ね上げた場合だ。ちょっとしたキャンプに行く時などには有用なモードだろう。ただ、シートを上げ下げするのにはこつを飲み込まなくてはいけないし、力も必要だ。最近の傾向からすると、ワンタッチでこなせるような機構が欲しくなってくる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
3リッターモデルの余裕からすれば、さすがに山道の登りや高速道路での加速で力不足を感じることがある。ファミリーで乗る状況ではむしろ急な加減速は好まれないだろうから、実用的には問題のないレベルだ。ワインディングロードでも、セレクトレバーを使ってシフトを行えば、さほどもどかしい思いはせずに済む。ただ、3リッターモデルに採用された5段ATがあれば、と感じる場面も幾度か経験した。もちろん、シフトの躾け自体は優秀で、嫌なショックを感じることはない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
3リッターモデルに比べると、乗り心地は少々落ち着きのないもの。とはいえ、2列目3列目でも不快な思いをするわけではない。ドライバーが後席のことを考えてジェントルな運転をすれば、乗員は快適な旅を満喫できる。不安を感じさせるようなロールも抑えられているので、その気になればこの巨体からは想像できないペースでもコーナーをクリアしていける。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:鈴木真人(NAVI編集委員)
テスト日:2005年7月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:2483km
タイヤ:(前)185/60R15 84H(後)同じ
オプション装備:デュアルパワースライドドア+スマートドアロックシステム(8万9250円)/SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグ(7万3500円)/HDDナビゲーションシステム=39万2700円/G-BOOK ALPHA専用DCM(6万3000円)/ETCユニット(4万950円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:338.0km
使用燃料:43.66リッター
参考燃費:7.7km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
-
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
-
トヨタ・カローラ クロスZ(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.10 「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジモデルが登場。一目で分かるのはデザイン変更だが、真に注目すべきはその乗り味の進化だ。特に初期型オーナーは「まさかここまで」と驚くに違いない。最上級グレード「Z」の4WDモデルを試す。
-
ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】 2025.9.9 クラッチ操作はバイクにお任せ! ホンダ自慢の「E-Clutch」を搭載した「レブル250」に試乗。和製クルーザーの不動の人気モデルは、先進の自動クラッチシステムを得て、どんなマシンに進化したのか? まさに「鬼に金棒」な一台の走りを報告する。
-
NEW
スズキeビターラ
2025.9.17画像・写真スズキの電動化戦略の嚆矢(こうし)となる、新型電気自動車(BEV)「eビターラ」。小柄でありながら力強いデザインが特徴で、またBセグメントのBEVとしては貴重な4WDの設定もポイントだ。日本発表会の会場から、その詳細な姿を写真で紹介する。 -
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。