ロータス・エリーゼ(5MT)【試乗記】
ピュアゆえの味わい 2005.07.13 試乗記 ロータス・エリーゼ(5MT) ……511万3500円 ライトウェイトスポーツとしての「ロードスター」の魅力、それのみを純粋に昇華させたような存在が「ロータス・エリーゼ」だ。軽量で優れたシャシーを作り続けるロータスならではの魅力が、エリーゼにはある。ロータスの起死回生
エリート、エラン、ヨーロッパ、エスプリ……と、いちいち車名を挙げるまでもなく、ロータスとライトウェイトスポーツは、まるで同義語のように直接的に結びついているが、それでも1980年代後半には、そんなイメージはやや曖昧になっていた。
「ユーノス・ロードスター」がデビューしたのは、まさにその時。大艦巨砲主義のようなスポーツカーが跋扈するなか、軽量コンパクトな車体にFRレイアウトで登場したコンパクトオープンは、その外観の雰囲気も手伝い、そしてもちろんそのピュアな走りの歓びによって、まさにエランの再来と歓迎されたのである。
90年代後半になってロータスがエリーゼを登場させることができたのにも、そのロードスターのヒットは無関係ではないだろう。なにしろ彼ら自身はその頃、FFエランに賭けていたくらいなのだ。すくなくともロードスターが軌道修正の力となったことは想像に難くない。そしてこのエリーゼが、結果的には瀕死のロータスを見事に甦らせる大ヒットとなったことも、説明は要らないだろう。
興奮はすぐそこに
エリーゼの走りの魅力は、軽いこと、そしてピュアなことに集約されると言っていい。「当たり前じゃん」と言われるかもしれないが、エリーゼの場合はどちらの要素も純度がきわめて高いのが特徴だ。
まず軽さ。それはもうギアを入れてクラッチを繋いでいる途中からすでにハッキリ体感できる。なんの抵抗感もなく、車体が“スッ”と前に出るその感覚が一度染み付くと、他の一般的なクルマはすべて、それこそロードスターですら「ヨッコイショ」と言いながらのっそり動き出すように感じてしまう。
前へ出る動きのみならず、それはノンパワーアシストのステアリング、スロットル、ブレーキ、すべての反応に共通している。切れば切っただけ、踏めば踏んだだけ、即座に結果が返ってくるレスポンスのよさ。これぞまさにライトウェイトスポーツだ。それは飛ばさなくたって、交差点をひとつ曲ればすぐ理解できるし、思いきり鞭を入れてやれるような状況ならば、なおのこと際立って感じられる。操舵はグラッと傾くロールを見越してする必要はなく、思ったときに思ったように切れば、思った通りに向きが変わる。ミドシップとはいっても絶対的には軽いから、タイヤが粘った挙げ句、リアが一気に振り出されるのを怖れる必要もない。もちろん最後の最後ではコントロールに難しさはあるのだろうが、公道でそこまで辿り着くのは無理なほど、シャシー性能は高い。だいいちそこまでいかなくても十二分に速く、そして昂奮できる。
決定的な差は“演出”
この軽さは、もうひとつの要素である“ピュアであること”が醸す味わいにも繋がっている。軽さのおかげで加減速もコーナリングもすべてがシャープでダイレクトだから、そこにやたらとクイックなステアリングギア比だとか、意図的なリアの限界の低さだとか、ちょっと触れただけでワッと吹け上がる電子制御スロットルの必要はないのである。そういった“演出”は最初は刺激的に思えても、次第にあざとく見えてくるもの。決して走りの奥の深さには繋がらない。特にハンドリングの面において、ロードスターとエリーゼに決定的な違いがあるとしたら、そこではないだろうか?
無論、ロードスターのようにカジュアルに使える魅力をエリーゼは持っていない。しかし、そうした部分も含めて、ロードスターで本格的に走りに目覚めた人が必然的に目を向けたくなる魅力があふれているのがエリーゼである。“走り”とその愉しさにおいて、コイツとタメを張るのは簡単ではないはずだ。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年7月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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