ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)【試乗記】
街なかでもスポーツ 2008.09.22 試乗記 ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)……813万5800円
「ロータス・エリーゼ」にスーパーチャージャー付きの新グレード「SC」が登場。新しいエンジンと持ち前の軽量ボディがもたらす走りを、日本の峠道で試した。
カリカリチューンじゃないけれど
エリーゼにスーパーチャージャーを装着したモデルが登場した。インタークーラーを省略することで「エキシージS」より約8kg軽くなったエンジンは、NAモデル「エリーゼS」の136psに対して220psに、トルクは17.6kgmから21.6kgmへと増大。いっぽう、スーパーチャージャー付きの「エキシージS」(221ps、22.0kgm)や「エキシージS PP」(243ps、23.5kgm)と比べてみれば、ベースになったトヨタ2ZZ-GE型1.8リッター4気筒ユニットにとって、ギリギリまで絞り上げたチューンでないことがわかる。お手軽な軽度のチューンである。
実際に回してみると、6000rpmあたりからタコメーター内で赤いランプが点滅、警告を始めるものの、そのまま8000rpm辺りまで回ってしまうおおらかさ。ちなみに、メーターの目盛りにはレッドゾーンの設定もない。この6000rpmを過ぎてからもスムーズさは失われないものの、特別感激するようなパワーの盛り上がりは、ない。
このエンジンはむしろ、「2000rpmから5000rpmあたりの低中回転を使ってのんびり流す」とか、過給器付きエンジンの特性を活かして、エンジン回転で速度を上げるのではなく、ギアボックスを駆使して速度を変えるようないわば「マニュアルシフトを楽しむ運転」に向く特性といえる。スポーツカーといえども、必ずしもスピードやラップタイムと結び付けることなく、実用速度域で街乗りに使いたい人もいるわけで、そんな“スポーツカーのもう一方の楽しみ方”を求める人に向いている。
事実、2000rpmも回っていれば十分なトルクが得られるのである。2000rpmキープのまま各ギアの速度を読み取ると、16km/h、25km/h、34km/h、44km/h、56km/h、63km/h。このあたりの速度を目安に、静かで経済的な運転も楽しむことができる。なにせ、ボディは900kg程度と軽量。こんな低回転でもやすやすとストレスなく転がる。
手足を駆使して楽しめる
各ギアのステップアップ比は「1.51」「1.39」「1.27」「1.27」「1.26」とクロースしており、エンジン回転幅を1000rpm位であまり上下させなくとも、同じリズムでクラッチを操作し、ギアボックスを掻き回しているだけで速度を上げたり下げたりすることができる。
スポーツカーの面白さは、1にステアリングレスポンス、2にMTを介してのギアチェンジ、3にアンダーステア/オーバーステアのステア特性を楽しむことが挙げられる。特に英国製スポーツカーにおいてはその傾向があり、「エンジンこそクルマの魂だ!」みたいな信仰はなく、お手軽に他社から借りてきた大排気量の量産エンジンを載せたりしている。エリーゼSCはまさにそんな成り立ちのクルマであり、ただエンジンに頼るのではなく手足を駆使して楽しむのに適している。
近年はサーキット走行なども身近なものになり、ラップタイムやトップ・スピードなどが話題の中心になることも多い。ラップタイムの短縮は加速とブレーキで決まるのであり、コーナーはタイヤグリップに任せればいい。そんなクルマの力に委ねた走り方なんて、すぐ到達しまうものだ。それよりもクルマ本来のもつ旋回特性をテクニックで使い分ける方が余程面白いし奥も深い。
本来スポーツカーをドライブする醍醐味は、ドラテクを駆使していかにそのクルマの性能を引き出すか、あるいはパワーでタイヤやサスペンションを苛める作業に興じられるか、にあるはず。そこを練習するのにエリーゼSCは恰好のクルマだといえる。
速度だけを求めるならば中途半端なことはしないで、サーキット専用のレーシングカーに乗った方がいい。逆にいえば、エリーゼSCはサーキット向きではなく、レーシングカーのカタチをしたロードカーなのである。
NAモデルにない魅力
ちょっと話の筋がそれてしまったが、さらに、パワー特性の観点からこのスーパーチャージドユニットの面白さを紹介しよう。
昨今の直噴エンジンなどはまた感触が違うものの、そもそもスロットルはガバッと無闇に全開すればイイってもんじゃない。バタフライの角度が変わって、スーッと空気が吸入されていく過程で、スロットルの踏み込み量と回転上昇の間にタイムラグがあることはご承知の通り。昔のキャブレター方式ではさらに顕著だったが、空気とともに燃料がうまく吸い出されないとエンジンは綺麗に吹けあがらない。
空気の流れが負圧から正圧に変わっていくあたり、さらに可変バルブ機構や長いラムパイプを持つエンジンでは、空気の層が慣性により押し込まれる感触がある。そんな空気の流れはゆっくりスロットルを加減するときに体感される。
スーパーチャージャーによる過給は、そのレスポンスにおいてラグが少ないだけではなく、スロットルを開けていく過程で、エンジンの方から回りたがって催促されるような感触が得られる。でもあえてそれ以上は回さず、シフトアップしてはまた下から上げ直す、そんな微妙な操作がギアチェンジのたびに、エンジンとの対話として楽しめる。ATがいかに無神経で雑なフィールしか得られないことに気が付くだろう。
微妙なスロットルレスポンスでリアタイヤのグリップを探り、アンダーステアやオーバーステアをつくり出して旋回させることこそスポーツカーの醍醐味。アンダーやオーバーは、クルマ自体がもつ固有の特性ではなく、操舵と駆動あるいは減速の操作によってつくり出せるものだ。またいかに低い速度でドリフトやカウンターステアの体勢に持ち込むか……等々、そこにエンジンパワーが介入する限り、スーパーチャージドエンジンの持つ魅力は尽きない。エリーゼSCはまさにこの感触を楽しめるクルマなのである。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
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