BMW525i Hi-Line(5AT)【ブリーフテスト】
BMW525i Hi-Line(5AT) 2001.01.25 試乗記 ……638.0万円 総合評価……★★★★ (価格はテスト時/掲載時の車両本体価格は568.0万円)4つのリング
現行5シリーズのいわゆるマイナーチェンジバージョンが、ここに紹介する新型モデル。外観上ではヘッドライトとテイルランプのデザインが小変更を受けた。4灯式ヘッドライトを囲む発光リングにスモールライト機能を持たせ、テイルランプには、LED(発光ダイオード)と光ファイバーを組み合わせた新技術を用いたのがジマン。
メカニズム的には、直列6気筒エンジンの改良がメインメニュー。吸排気系やマネージメントシステムのリファインにより、出力を大幅にアップ。また、従来の2.8リッターユニットは、ストロークアップにより3リッターに格上げされた。
というわけで、最も簡単な新旧識別法は、スモールランプを点灯させた際、フロントマスクに4つのリングが浮き上がれば新型。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1995年にデビュー、翌年から日本に導入された、BMWのミドルレンジを担う高級スポーティモデル。2000年11月にマイナーチェンジを受け、2.5リッター/3リッター直6と4.4リッターV8を載せたセダンと、2.5リッター/3リッターのワゴン「ツーリング」がラインナップされた。装備充実仕様の「Hi-Line」を全車に、エアロパーツなどを奢った「M-Sport」をセダンに設定する。
(グレード概要)
525i Hi-Lineは、先のマイナーチェンジで導入された、新型のオールアルミ製2.5リッター「M54」型ユニットを搭載。従来型より22psアップを果たし、192psを発生する。標準装備されるDVDナビゲーションシステム、本革シート、ハンズフリーテレフォンシステム、クルーズコントロールは、上級グレードHi-Lineの証。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
日本専用グレードである「Hi-Line」は、ヒーター付きレザーシートやVICS対応DVDナビゲーションシステム、クルーズコントロールなどを標準装備とする上級グレード。多彩な装備に対応しファンクションスイッチ付きステアリングホイールを用いるが、その分「走りのBMW」というイメージは薄れる。
3メディアVICS対応のナビは、画面がワイド化されたが、「ダイヤルを回して項目を選ぶ」という従来同様の操作方法は、相変わらず使い勝手が良くない。
(前席)……★★★★
「モンタナレザー」と呼ばれる革張りシートは、素材ゆえの滑りも問題にならないレベル。ホールド性は良好。ただし、いかにも質実剛健なデザインで、アメリカ車のレザーシートのような、見た目のゴージャス感は薄い。
各種の調整機能を備えることでドライビングポジションはバッチリと決まる。ここまで充実装備のモデルだと、ステアリング調整機構が手動式なのが、むしろ不自然。
(後席)……★★★
後席は基本的に大人ふたりのための空間。全幅は1.8mもあるが、センタートンネルの張り出しが大きく、3人がけはきつい。
5シリーズに限らずBMW車の場合、「特等席」はドライバーズシート。メルセデスベンツに較べ、ショファードリブンとして使われる事例が少ないのは、こうしたBMW車のキャラクターを物語る一例かも知れない。
それでも、電動式リアブラインド、リアヘッドエアバッグなど、装備は充実。
(荷室)……★★★★
トランクの高い「ハイデッキ」スタイルを特徴とするプロポーションを活かし、FFレイアウトに対してハンディキャップを背負うという「常識」を覆して、クラス最大級のトランクルームを実現。トランクルーム内部の空間形状がスクエアに近いのも使いやすさの一因。宅配便システムの普及した日本で用いるにあたっては、およそ「これほどの広さに何を積めば良いのか?」というのが大方の意見になりそう。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
新開発M54型エンジン搭載。マネージメントシステムや吸排気系などのリファインを受け、2493ccの排気量は従来と同様ながら170psから192psへと、大幅な出力向上を果たした。
可変バルブタイミング機構付きエンジン特有の「高回転域でのトルク抜け感」もなく、低回転域でトルクキー、かつ高回転域ではパワフル。適切なシフトプログラミングを備えるとともにシフトショックも小さい、できのよい5段ATとの組み合わせもあり、動力性能は「フィーリング的」にも「絶対的」にも◎。加速感は、2.5リッターモデルとは思えない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
乗り心地は走り出した瞬間からしなやか。常に高い4輪の接地感も、重量配分にことのほかの神経を注ぐBMW車ならではのテイストだ。ステアリング切り始め部分の応答性は特に高くないが、一方で、高速域での舵の正確性は特筆レベル。「アウトバーン生まれ」の実力はこのあたりに息づいているのだ。長時間の高速クルージングでも疲れを感じさせないところは、やはりセルシオとはひと味違う。なお、日本仕様の5シリーズは、これまで用いてきたオールシーズンタイヤを改め、2000年10月中旬生産分より、本国と同仕様のサマータイヤを使うことが決定した。
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2000年11月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:1032km
タイヤ:(前)225/55R16 95H M+S/(後)同じ(いずれもContinental ContiTouringContact)
オプション装備:メタリックペイント(7.0万円)/電動サンルーフ(13.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:-
使用燃料:-
参考燃費:-

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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