レガシィ・ツーリングワゴン3.0R spec.B/B4 2.0GT/アウトバック2.5i【試乗記】
完成形でも成長する 2005.06.22 試乗記 レガシィ・ツーリングワゴン3.0R spec.B(5AT)/B4 2.0GT(5AT)/アウトバック2.5i(5AT) ……395万3250円 /343万3500円 /330万2250円 「スバル・レガシィ」シリーズがマイナーチェンジを受けた。変更点は、サスペンションやATの改良が中心で、実質的なもの。「ツーリングワゴン」「B4」「アウトバック」の3台にNAVI編集委員鈴木真人が乗った。レガシィの成熟
のっけからこんなことを言ってはいけないのだが、短い試乗では今回のマイナーチェンジでの改良点をそれほど感じることはできなかった。これは、決して悪い意味ではない。今さらのように「いいクルマだなあ」と思ったのだ。なにしろ、2003年に4代目となった時点で「水平対向エンジン+4WD」というオリジナルな機構を貫いてきた「レガシィ」は、ある意味完成形となっているのだ。つまり、もとがいい。もちろん様々な小改良は施されているものの、改めてレガシィの成熟を噛みしめることとなった。
スバルらしく、派手さやけれんみのないチェンジなのだ。ボディ色の追加や、ナビゲーションシステムの新たな設定などの細かな変更もあるが、主な改良点はサスペンションの設定の変更と、3リッターAT車の変速タイミング制御の改良で、地味だが実質的なものである。また、ツーリングワゴン、B4の「3.0R spec.B」に5AT車を、「2.0i」に5MT車を新たに設定した。
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星の数よりコーナリング
はじめに乗ったのは、6気筒モデルの「ツーリングワゴン3.0R spec.B」。キーをひねって久しぶりに「エレクトロルミネセントメーター」が順次点灯する様を眺める。ドライバーを喜ばせる演出だ。インストゥルメントパネルの造形や質感は、デビューから2年を経ても堂々としたもので、4代目となってこのあたりのクォリティが大幅に向上したのだったことを思い出す。「洗練」という言葉を躊躇なく使えるようになったのだ。
もちろん、アイドリングで排気干渉による「ドコドコ音」が聞こえてくることはない。「等長等爆エグゾーストシステム」の採用によって「ボクサーサウンド」が消えたことを惜しむ声が、当初は特にレガシィファンの間から漏れたものだった。しかし、しばらくたつとそういった意見は少なくなって、素直に静かでスムーズなフィールが歓迎されるようになったのだそうだ。
走り出すと、やはり重心の低さをはっきりと感じる。そこにこそ限りボクサーエンジンを採用し続ける意義があるわけだが、その代わりに排ガスの面ではどうしても不利になる。触媒の温度を上げるのは、取り回し上どうしても困難なのだ。星の数を犠牲にして得られたコーナリングでの気持ちよさを堪能する。記憶の中では、以前はもう少し乗り心地が硬かったのだが、これがサスペンションの仕様変更の恩恵なのだろうか。ATの変速の滑らかさも、好印象である。
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愛嬌の「アウトバック」
次に乗ったのは、「B4」の「2.0GT」で、2リッターDOHCエンジンを搭載するモデルだ。発進して一瞬もたついた後に、エンジン回転がすうっと上昇して唐突にスピードがついてくる感覚を懐かしく味わった。試乗会に来る前に寄ったガソリンスタンドで、レガシィファンの従業員に声をかけたのを思い出した。試乗会に行くんだけど何か伝えたいことある? と聞いたら、即座に「低速トルクなんとかして」と返ってきたのだ。今回はエンジンにはほとんど変更はないそうで、残念ながら彼の願いが叶うのは次の機会になる。
「アウトバック」は、2.5リッターエンジンの「2.5i」に乗った。SUV的な性格を持たせた「クロスオーバービークル」たるこのモデルは、半年ほど遅れて投入されたのだが、そのときにワゴン/セダンよりもむしろ好感を持ったものだ。あまりにも理詰めなクルマよりも、愛嬌を感じさせるほうがホッとするのである。その印象は今回も同様で、ちょっとした荒れ地にも迷いなく入っていけて荷室も広いアウトバックは、「一般的なユーザー」にはいちばん魅力的なのだと思う。
そんなわけで、派手で明瞭な改良点を報告することはできない。前回のマイナーチェンジでも、一見してわかる引きの強い変更は行われなかったわけで、相変わらずスバルは大向こうをうならせるよりも実質を重視しているようだ。
販売戦略的にはもう少し欲を出してもいいような気もするが、レガシィはこういう姿勢を支持するユーザーによって支えられてきたのだ。全世界での累計生産が300万台を突破したそうで、作り手も乗り手もクルマ好きという関係が発展してきたことを素直に寿ぎたい。
(文=鈴木真人/写真=岡田茂/2005年6月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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