スバルレガシィB4 2.0R(4AT/5MT)【試乗記】
エンジニアリングとハードウェア 2003.07.16 試乗記 スバル・レガシィB4 2.0R(4AT&5MT) ……258.0万円/253.0万円 「レガシィ」といえば、ターボエンジンを積むツーリングワゴンが主流だったが、先代から「B4」のサブネームを得たセダンの人気もジワジワと高まっている。新型B4の、NAツインカムを積む「2.0R」に、『webCG』記者が乗った。
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タイトな空間
2003年5月23日に発表された新型レガシィ。そのプレス向け試乗会が、山梨県は山中湖近くのホテルで開かれた。駐車場には、すでに発売されたツーリングワゴンに加え、1ヶ月遅れてリリースされるセダンバージョン「B4」も並ぶ。
今回は、試乗車にNA(自然吸気)ツインカムユニットを積む、「2.0R」を選択した(4ATと5MT)。レガシィの主力は、いうまでもなくGT系のツーリングワゴン。3BOXはニッチのイメージがあるが、3代目で「B4」の名を得てから人気を増し、全体の約3割を占めるまでに成長した。レガシィシリーズのターボ比率は約5割(6気筒や2.5リッターも含めての数字)だというから、単純計算でレガシィの約15%がNAのB4。ことさらマニアックなモデルというわけではない。
ちなみに、テスト車に2.0Rを選んだのは、リポーター宅のクルマが、納車されてまだ1年に満たない、先代B4の同グレード「RS タイプB」(5MT)という理由もある……。
最初に乗ったのは、4段AT仕様の2.0R。3ナンバー枠に拡大された新型だが、見た目はそれほど大きくない。ボディサイズ(カッコ内は先代比)は、全長×全幅×全高=4635(+30)×1730(+35)×1425(+15)mm(spec.Bの全高は1435mm)、ホイールベースは20mm長い2670mm。衝突安全や居住性向上など、ボディサイズ拡大のメリットは様々だが、レガシィの場合は、走行性能の向上(と、ハンドルの切れ角を増して、取りまわしをよくするため)が挙げられる。前後トレッドを拡大したことが、車両の幅に反映されたのだ。
なるほど、運転席はボディサイズから想像されるほど広くない。むしろ、居住性という観点では以前より狭く感じる。足元も狭い。幅の広いセンターパネルと、高いショルダーラインに囲まれたタイトな空間は、しかし「運転に集中する」ため、意図的につくられたものだという。一方、後席は拡大された全幅が活きて、横方向の広さ感が増した。
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全域で爽快
新しいパワーユニットはトルク曲線にも示されるように、2000rpm〜3200rpmのアウトプットを高めたフラットなトルク特性をもつ。低速でもアクセルペダルとクルマの動きが一致し、ドライバーに“よいフィーリング”を与えてくれる。新採用のスロットルバイワイヤも、“自然なフィール”に留意して、開発がすすめられたという。
さらに、バイワイヤは、ATのシフト制御と緻密に連携が図れるメリットもある。そのせいか、4段ATはシフト時もスムーズさが増した、気がした。マニュアルモードでの素早いアップ&ダウンシフトも印象的。シフト時のタイムラグで、“ヤル気”を削がれることはなさそうである。
トルクコンバーターをもたない5段MT仕様に乗ると、新型エンジンのリニアなトルク特性がより明確になる。従来のNAツインカムは、3000rpm未満のトルクが細く、中低速中心の都内や山道では、シフトダウンを怠るとアクセルペダルを踏み込んでも、思いのほか前に進まない感があったが、新型は中低速トルクに厚みがあり、大変扱いやすく、“速い”エンジンに変わった。3000rpm以上の吹けあがりは(ボクサーではない)6気筒並にスムーズで、35ps(ATは25ps)も高められた190ps/7100rpmをストレスなく出力する。総じて、新型のエンジンは全域で爽快である。
5段MTは、少なくともリポーター宅のB4にみられる、シフト時のひっかかるような“渋さ”が抜けた。高回転域までシューンとまわるボクサーエンジンを楽しむなら、MTがオススメだと思った。
軽量化されたことも、ドライブフィールの爽快感に一役買っていると思う。B4のNAモデルは、サイズが大きくなったにもかかわらず、先代の同等グレードと較べて50kgも軽いのだ。ハンドリングも軽快。タイトコーナーや素早い切り返しでも、ステアリング操作にボディ全体がすばやく反応するように感じた。短いスパンで左右に切り返しても、安定感を失わずに方向を変える。もちろん、ラリーウェポン「インプレッサ」のようにコーナーに切り込むような、汗くさいハンドリング(?)とは一線を画すが、「ちょっとスポーティ過ぎ?」とも思えるほど。シャープな走りだ。
乗り心地は、レガシィの美点であるフラットライドをもちながら、締まった安定感が増した。215/45R17サイズのタイヤを履くため、少々突き上げを感じたが、車両研究実験統括部の荻原浩主査によれば、2000kmほど走ると「馴染んでくる」という。
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レオーネからレガシィくらい
ブレーキは、全車先代と比較してローター径が1インチアップされ、2.0Rはフロントに16インチのベンチレーテッドディスクを装備する。ブースター作動時にシェルの変形を抑える「タイロッド式タンデムブースター」の採用などにより、ペダルタッチは剛性感のあるものとなった。以前はアシストが強く、低速と高速でペダルの踏み加減を変える必要があったが、今度はどの速度域でも思った通りにペダルを踏める。エンジンやハンドリングもそうだったが、クルマの反応がドライバーの感覚に沿う印象が、新型レガシィではグっと強まった。
そのほか、クラッチに採用したデュアルマスフライホイールが、発進時などエンジンに高負荷がかかった際に発生する振動をよく吸収し、アイドル付近で半クラッチを使ってもクルマの動きはスムーズ。パワーステアリングにはダンパーバルブを付けたことで、キックバックを低減して高級感を出した。とにかく、どこをチェックしても、自宅の先代B4からの進歩は予想以上。リポーターとしてはフクザツな気分だ。
「初代から3代目まで、レガシィはキープコンセプトで進化してきた。4代目は、乗る人がアっと驚くような性能のクルマがつくりたかった」と語るのは、開発を統括した清水一良プロダクトゼネラルマネージャー。自らをライバルに、1〜3代目の進化度合いと較べて飛躍的に進化させた新型は、「レオーネ」からレガシィになったくらい「変わった」と清水氏は胸を張る。しかも、変わった中身がコンセプトや企画といったソフトウェアでなく、エンジニアリングとハードウェアに依るところがスバルらしい。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2003年6月)

大澤 俊博
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