BMW X5 3.0i(5AT)【試乗記】
『オンのクルマ』 2001.05.03 試乗記 BMW X5 3.0i(5AT) ……742.0万円 SUV(Sports Utility Vehicle)はスポーツをしにいくためのクルマだが、BMW X5は、スポーツするクルマだ、と言いたいのだろう。ビーエムは、X5をしてSAV(Sports Activity Vehicle)と呼ぶ。オフロードコースを含む、静岡県は伊豆で開催されたX5 3リッターモデルのプレス向け試乗会に、webCG記者が参加した。オンもオフも
BMWとローバーグループの結婚は破綻して、ビーエム傘下のランドローバーは死して「HDC」を残した。いや、死んではいません。フォードのもとへ嫁いでいきました。
HDC(ヒル・ディセント・コントロール)とは、急な下り坂でスイッチを入れれば、ドライバーがブレーキを踏まずとも、クルマが自動的にABSを効かせて、速度を5から10km/hに保ってくれるシステムのことである。ランドローバー・ディスカバリー、同フリーランダー、そして親会社(当時)たるBMW初のSUV、X5に搭載された。
X5 V8モデルの試乗会をサーキットで開催して、SUVならぬSAV(Sports Activity Vehicle)ぶりをアピールしたバイエルンの自動車メーカーが、今度はやや遅れて導入された3リッター直6ユニット搭載のX5 3.0iを、オフロードコースを備えた静岡県は伊豆の「モビリティパーク」で披露した。
4輪独立懸架によるオンロードでの乗り心地のみならず、各輪のブレーキを個別に制御してデフロックの代わりとするADB-X(オートマチック・ディファレンシャル・ブレーキ)、その上位機能たるアンチスピンデバイスDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)、そしてHDCなどによる、未舗装路での走破性をも見てもらおうというわけだ。
コワいものはない
試乗会当日は雨だった。ぬかるんでいる。コース脇で撮影していた難波カメラマンがX5助手席側のドアを開けて、「乗っちゃっていいですかねぇ」と聞く。X5のV8版4.4iより190.0万円安いとはいえ、車両本体価格645.0万円のクルマに、ドロだらけの靴で乗るのがしのびないと思ったのだろう。
X5の魅力は、たくましい外観とはうらはらに、いったん運転席に座ると、視点の高さ以外はビーエムのサルーンとまるで変わらないところである。「クロカン」より「乗用車」がはるかに勝っている。セダンと同意匠のインパネまわり、ふんだんに使った革とウッドパネルの、有無を言わさぬ贅沢さ。シュアなハンドリングとフラットな乗り心地といったドライブフィールも、ドロ臭さと無縁のものだ。
とはいえ、今日は“泥の日”である。「HDC」と書かれた看板の前で停まると、センターコンソール最下段、ATシフター奥のボタンを押して、「ままよ」と逆落としの坂に挑むと、アラ不思議。ドライバーはステアリングホイールを握っているだけなのに、ガッガッガッとABSが作動して、X5はなんなく下る。HDCは、スロットルペダルを踏むといったん解除され、48km/h以下になると再び作動する「スタンバイモード」に入るから、HDCがオンであることを表すLEDが点いているかぎり、この日のオフロード初心者、つまりwebCG記者にコワイものはないのであった。
|
別れてシアワセ
X5 3.0iの3リッターストレート6は、吸排気両方のバルブタイミングを無段階にコントロールするダブルVANOSを備え、3ボックスモデルと同じ231ps/5900rpmの最高出力、30.6kgm/3500rpmの最大トルクを発生する。
モビリティパークを後にして、伊豆スカイラインを行くと、できのいい5段ATと合わせ、「X5は、やはり“オン”のクルマだなぁ」と思う。スニーカーより革靴、フリースよりスーツ、そしてバックパックよりアタッシェケースが似合う感じだ。
思い出すのは、先日乗ったフリーランダーである。シティオフローダー調のスタイリング、ローバー75ゆずりの「2.5リッターV6+5AT」というドライブトレイン、そしてフルインディペンデントの足まわりをもちながら、どこか前後リジッドの、“オフ”の味を残した小型SUV。
BMWとローバーグループは、いうなればシティ派とカントリー派が補完しあって、いい関係を築くはずだったが、まあ、別れた方がお互いシアワセだったようだ。フォードの旦那の胸に抱かれたランドローバーは、もはやビーエムの夢は見ないし、「HDC」で業績の下り急勾配をうまくコントロールしたバイエルンのやさ男に、田舎娘への未練はない。
(文=webCG青木禎之/写真=難波ケンジ/2001年5月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。































