第174回:「スズキ・アルト Eグレード」試乗!“標準価格米カー”で現代日本車の味を考えてみる
2004.11.22 小沢コージの勢いまかせ!第174回:「スズキ・アルト Eグレード」試乗!“標準価格米カー”で現代日本車の味を考えてみる
■なんともシブい廉価版
新しくなった「スズキ・アルト」に乗ってきました。これがまさに今乗れる日本車の底辺の味……もとい、“基本テイスト”なんだと体に染み込ませるように走ってきました。
というのもさ、実際問題、アルトが今日本で買える一番安い乗用車なんでしょ。いわば日本のクルマの“標準価格米”であり、ある意味、吉野家の豚丼というか、セブンイレブンのおにぎりにも匹敵する超大衆向け商品。
開発チーフの綾部さんによると、今回は特に初代アルト、47万円のインパクトを目指したそうな。「価格も一つの性能と考え、今、日本に求められるクルマとは? を社内で徹底的に論議した」という。うーん、メチャクチャ難しいよね。今、日本で売るクルマに求められる、最低限の品質や装備ってさ。
結果、生まれたのがATで70.0万円、MTで65.0万円という廉価版のEグレード。これがなんともシブいデキなのよ。
まずシビれたのは装備。Eグレードに備わるのは、運転席、助手席エアバッグとエアコンとパワステ。タイヤは12インチの鉄っちんホイール付きで、意外にも集中ドアロックが備わる。逆に省かれたのはパワーウィンドゥ。そう、パワステが残り、パワーウィンドウは消えたのだ。毎日使ううえで、ないとどっちが不便かを冷静に考えると、パワステなのかもしれない。そのぶん、レギュレーターの作動を徹底的に軽くしてある。うーむ、なかなか凄い見切りでありますな。
で、肝心の走り味だけど、ちょっと考えちゃいましたね。これが今の標準の味かぁと。
ハッキリ言って、メチャクチャ普通に走ります。高速でも操舵は安心、パワーは必要十分で、乗り心地も良好。昔の、ないないづくしの軽自動車と比べると雲泥の差。
ただねぇ、ステアリングフィールは薄いのよ。正直、走った気にはならない。そういう意味では昔の軽自動車の方が上でした。
■手応えと引き替えに……
これはクルマ自体の特性もさることながら、パワステの影響が大きいんだろうなぁ、。電動式だし。おそらくパワステを外すだけで、もうちょっと味が濃いものになるんじゃないでしょうか。もちろん、操舵は重くなるけどさ。
結局、最低限のクルマにもパワステを付けざるをえなかったところに、日本車の現状が出てると思いました。当たり前のことだけど、「手応え」より「ラク」を重視するってことなのよ。日本って、何かにつけてこういう部分があるんだよね。食べ物では、「味」より「保存性」を優先する部分があり、教育では「個性」よりも「協調性」を優先する部分がある。ヒトコトで言っちゃうと、ツマンナイってことなんだけどね。相変わらず効率重視の社会。ただし、これはスズキの問題だけではありません。日本の社会の“ノリ”の問題でしょう。
ただしデザインは、主従の関係が逆転して、メイン車種の「ワゴンR」より、意識的でカッコいいと思いました。今だったら逆にコッチに乗りたい!
欲をいえばもうちょっと生々しい走りが欲しい。生キュウリに味噌付けて食べる、みたいなね。今は難しいのかもしれないけどさ。
(文と写真=小沢コージ/2004年11月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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