トヨタ・ノアS(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ノアS(CVT) 2004.10.14 試乗記 ……319万8300円 総合評価……★★★★ フルモデルチェンジから約3年、50万台を売り上げたヒットミニバンがマイナーチェンジを受けた。全車にCVTを採用し、燃費向上を図った新型のスポーティグレード「ノアS」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。トヨタ主義的
このクルマは、ユーザーがどう使うかで評価は分かれる。背の高いワンボックス車的な外観と、シートがそれを象徴している。シートは畳んで使うことを前提としたつくりになっており、いわば貨商車的な用途も想定している。
頻度はすくなくとも、大きな家具や敷物、あるいは長いサーフボードなどレジャー用品を運ぶ機会のある人ならば、大家族(8人乗れる)ファミリーカーとしても便利なクルマだ。ただし、ほとんどの用途をピープルムーバーとして、つまりシートを倒すことなく座って移動するだけの手段に使うのであれば、もっと他に選択肢はある。そのように使う場合、★は3つとなる。真ん中2列目や3列目の雰囲気はライトバン的であり、テレビCMに見るような、ファミリーカーとして楽しそうにドライブするクルマではなさそうだ。
しかし目的地に着いてしまえば、多彩な展開が可能で、ピクニック中に雨に見舞われても、バックドアは大きな屋根に早変わりする。あれこれ盛り込まずに、FFに徹するとか、モーター駆動4WDなど発想を変えれば、さらに低いフロアも可能で大いに魅力を増すはずだ。徹し切れないでそこそこ感を残すところが、トヨタ主義的なクルマである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月、商用ベースの「タウンエースノア」「ライトエースノア」の後継として誕生。新設計のFFプラットフォームを使ってパッケージングを一新、近代化を図った。兄弟車に「ヴォクシー」があり、「ノア」はファミリー指向、ヴォクシーは若者向けと、キャラクターが分けられる。
2004年8月にマイナーチェンジを受け、エンジンを希薄燃焼型から、理論空燃費で燃焼する「ストイキD4」に変更。さらに、トランスミッションを無段変速機「Super CVT-i」に換装し、「平成17年度基準排出ガス50%低減レベル」と「平成22年度燃費基準+5%」をクリアした。
外観は、ヴォクシー、ノアとも、フロントグリルやバンパー、ヘッドランプの意匠を変更し、スポーティ感や力強さを強調。リアコンビネーションランプなどにはLEDを採用し、視認性を高めた。インテリアは、センターメーターとヒーターコントロールパネルのデザインを改め、質感と使いやすさの向上を図った。オプション装備も拡充。一部グレードに、デュアルパワースライドドア、パワーバックドア、ブラインドコーナーモニターなどを設定した。
5人乗りの2列シート車「ヴォクシーTRANS-X」と「ノアYY」の新設定もニュース。荷室スペース重視の新グレードで、取り外し可能な3枚のデッキボードとシートアレンジとを組み合わせることで、多彩な使い方を実現したという。両モデルの「X」グレードに、助手席側のセカンドシートが電動でせり出す「サイドリフトアップシート装着車」を設定したことも新しい。
(グレード概要)
「ノアS」はスポーティグレード。エクステリアに、専用ラジエーターグリルや前後大型バンパー、リアスポイラーなどのエアロパーツを装着。インテリアは、シート表皮やメーターデザインがスポーティなものとなる。このグレードと、ヴォクシーの同グレード「Z」にのみ、CVTがステアリングホイール上のスイッチで7段シフトできる「ステアシフトマチック」が備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ノアSは、エアロパーツを装着するスポーティな仕様で、たとえ商用目的で使っているときでも楽しく運転できるように、CVTはマニュアルでも7段シフトが楽しめる。ダンパー減衰力を切り換える「H∞TEMS」も備わり、荷物の積み具合によって足の硬さを変えられるのは便利だ。オプションとはいえ、GPSナビゲーションシステムの使い勝手はよく、細部にわたって設けられた収納部も便利である。センターメーターは目から遠く、老眼対策ともとれるが、みんなで監視できる楽しみもある。
ただし、足踏み式サイドブレーキの2度踏みリリース方式は不便だ。
(前席)……★★★
コラムシフトゆえフロアが広々としており、横方向だけでなく後席ともウォークスルーを可能にしている。後部スライドドアと共に、狭い場所に駐車するのにも便利。シートそのものは形状的にやや平板ながら必要な横方向サポートに対しては盛り上がりで対処する。各種調整機構も完備しており、高めに座って見渡す視界の良さは上々。
(2列目シート)……★★★
折り畳みを優先している形状ゆえ見た目は平板ながら、座っているとそれなりに馴染んでくる。乗り心地は、軽い荷重で乗っているとやや上下動が大きく、もっとフラット感が欲しい。
なんといっても、天井が高く居住空間的に広々としているのがイイ。大きな両側スライドドアはそれなりに便利。横に狭い場所への駐車でもドアをぶつける心配がない。
(3列目シート)……★★★
バックドアのガラスがすぐ後ろに迫っていて、後部からの追突に対する不安はあるものの、空間的には十分な余裕がある。横並び3人がけはちょっときついが、犠牲になっている感覚は薄い。乗り心地としてはややトラック的な硬さがある。ピッチングによる上下動は気になるが、ロードノイズなど音的な分野はよくチェックされている。
(荷室)……★★
このクルマはシートアレンジも多彩で、折り畳んで使うことを前提にしている。よって荷物を積みたければ大量に積める可能性を持つ。だから純粋な意味でのトランクはそれゆえに犠牲にされているから★は1つだが、FFシャシーらしく低く深い物入れがあって★を1つ追加。本来ならばもっと利用できそうな空間は確保できるはずだが、これは4WD仕様も想定したフロアのための妥協とみられる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
「ストイキD4」エンジンはクリーンな排気と低燃費の実現を目指したものだが、ドライバビリティとしては、もっと低回転でのトルクが欲しい。組み合わされるのはCVTでもあるし、6500rpmも回さなくていい。昔のようにフリーホイールの慣性マスを大きくするとか、レスポンスよりも排気量なりのトルクを重視したチューンが望まれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
1人から8人乗りという荷重変化に対応したサスペンションチューンは、えてして最大荷重の領域を考慮することになり、軽荷重での乗り心地は硬めになりがち。ハンドリングも乗り心地も、まさにそうした妥協の産物的なレベルにあり、ここから抜け出すためには、さらにひと工夫が必要。膨大な車種をかかえるトヨタ車のなかにあっては、抜けがけが許されないのだろうか。
(写真=峰昌宏/2004年10月)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年9月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:683km
タイヤ:--
オプション装備:H∞-TEMS(7万3500円)/音声案内クリアランスソナー(4万2000円)/デュアルパワースライドドア(10万5000円)/前席SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(7万3500円)/ノア・シアターシステム(G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション+NAVI・AIシフト付き)+音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター&ブラインドコーナーモニター(53万1300円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:336km
使用燃料:37.6リッター
参考燃費:8.9km/リッター

笹目 二朗
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
NEW
車両開発者は日本カー・オブ・ザ・イヤーをどう意識している?
2025.12.16あの多田哲哉のクルマQ&Aその年の最優秀車を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。同賞を、メーカーの車両開発者はどのように意識しているのだろうか? トヨタでさまざまなクルマの開発をとりまとめてきた多田哲哉さんに、話を聞いた。 -
NEW
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】
2025.12.16試乗記これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。 -
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか?
2025.12.15デイリーコラム2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。 -
第325回:カーマニアの闇鍋
2025.12.15カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。 -
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】
2025.12.15試乗記フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!?







































