三菱パジェロ ロング エクシードII(5AT)【ブリーフテスト】
三菱パジェロ ロング エクシードII(5AT) 2004.04.21 試乗記 ……413万4900円 総合評価……★★★ “パリダカ”などでの活躍で知られる、日本を代表する本格オフローダー「パジェロ」。3列7人乗りのロングボディ版「エクシードII」に、自動車ジャーナリストの生方聡が試乗した。“リアル・オフロード志向”の方へ
「パジェロ」は、乗用車的な部分を取り入れながらも、オフロードの走破性に妥協を許さない本格派オフローダーだ。本来ならオフロードの試乗を行うべきところだが、今回は実際に使われることの多いオンロードでの試乗となった。
オフロードでも十分走れるタイヤを装着するため、多少静粛性が犠牲になったり、比較的フロアが高いせいで乗降性があまりよくなかったり……などの理由から、やや点が辛くなってしまった。もちろん、オンロードだけではこのクルマの魅力を語り尽くせないのは、重々承知している。オールマイティなワゴンとして、非常に高い性能を持つことも確認できた。
SUVの多様化は喜ぶべきことだ。本格的なオフロード性能を求める人、SUVのスタイリングとパッケージングを求める人、高級車としての価値を望む人など、様々なニーズに応えるモデルが揃っている。それだけに、街なかの快適性を求める人がパジェロを選ぶと「期待はずれ」……ということも考えられる。パジェロは、本当にオフロード志向の人に乗ってほしいクルマなのである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
いわゆる“パリダカ”などでの活躍で知られる、日本を代表する本格オフローダー。初代は商用バンとして1982年5月にデビュー、83年3月に乗用車登録できるワゴンが加わった。以後、91年1月と99年9月にフルモデルチェンジを受け、99年のフルモデルチェンジで、3世代目にあたる。現行モデルは、ラダーフレームから、フレーム内蔵モノコックボディに変更。サスペンションもリジッドから4輪独立サスペンションになった。エンジンは直噴「GDI」などを採用して近代化を図るとともに、ボディサイズを拡大した。
ボディバリエーションは、「ロング」(5ドア)と「ショート」(3ドア)の2サイズ。ロングは3列シートの7人乗りとなる。2002年9月にはフロントスタイルをすこし改め、ロングに「エクシード」という名の比較的廉価なグレードが加わった。
エンジンは、ディーゼルが3.2リッター直4DOHC16バルブターボ(175ps)、ガソリンユニットは、3リッターV6SOHC24バルブ(180ps)と、3.5リッターV6DOHC24バルブ「GDI」(220ps)を用意。トランスミッションは、ごく一部のグレードにのみ5段MTが設定されるが、4段ATと、スポーツモード(シーケンシャル)5段ATがメインとなる。駆動方式は、セレクターレバーで切り替える4WD。「スーパーセレクト4WD II」と呼ばれ、フルタイム4WD/直結ハイレンジ4WD/直結ローレンジ4WD/後輪2WDの4つの走行モードを選択できる。
(グレード概要)
パジェロ ロングのグレードは、下から「ZR」「エクシード」「エクシードI」「エクシードII」「スーパーエクシード」の5種類。下位2グレードは、3リッターV6を搭載。他はすべて、3.5リッターV6、またはディーゼルを搭載する。トランスミッションは、ZRにのみ5段MTと4段ATが設定され、エクシード&Iが4AT、上位2機種は5段ATのみ。装備の差別化は快適装備にあり、オーディオのグレードなどが異なる。
エクシードIIは、パジェロ ロングの上級グレードだけに、装備は充実。7インチ液晶パネルとTVチューナーや、CDプレーヤー+6スピーカー、フルオートエアコンなど、快適装備で不足するものはない。車両安定性を高める「ATCS」(アクティブ・スタビリティ&トラクション・コントロール)が装備されるのは、エクシードIIとスーパーエクシードのみ(エクシードIにオプション)。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
SUVなのにSUV色をひた隠しにするモデルが多いなか、このパジェロのインテリアには“らしい”部分が残されている。たとえば、幅広いセンタートンネルには4WDの切り替えレバーが堂々と生え、また、メーターパネルには速度計と回転計の間に水温計、燃料計、4WDのインジケーター、ドア閉め忘れ警告灯がブロック状に並び、ワイルドなイメージを与える。エアバッグのカバーはディンプル加工が施され、こちらも機能的な印象。ただ、横に並ぶウッド調パネルは、ややミスマッチな感じがする。
(前席)……★★★★
比較的高いフロアに据え付けられた運転席は、サイドサポートの張り出しが大きいスポーティなデザイン。しかし、見た目とは裏腹に、シートクッションやシートバックはソフトで、包み込むように乗員を支えてくれる。オフロード走行時の、大きな揺れに備えているのか。
アイポイントが高く、ボンネットの見切りもよいことから、大きなボディのわりに取りまわしはラク。運転席のまわりには収納スペースが充実しており、しかも、容量が大きいのでなにかと便利だ。
(2列目シート)……★★★
前席同様、ソフトな座り心地の2列目シート。前後スライドはないが、前席の下に余裕があるため、爪先も膝まわりもゆったりしている。おまけにリクライニングも可能だ。走行中はリアタイヤが路面の凹凸を伝えるが、さほど気になるレベルではなく、十分快適な部類だ。一方、フロアが高いので、子供や高齢者には乗り降りが面倒かもしれない。
(3列目シート)……★★
パジェロのロングタイプは床下収納や取り外しができるサードシートを標準装着し、乗車定員は7名。ただ、サイズもスペースも、大人が長時間乗るには不十分だ。膝の前にはこぶし1個分のスペースがあるが、フロアから座面までの高さが足りないために、乗員は膝を抱える格好を強いられる。シートバックも短く、あくまで緊急用と考えた方がいい。
(荷室)……★★★
サードシートを収納した状態で、幅110〜135cm、奥行き80cmのスペースが確保される。大人4人が旅行に出かけるには十分な大きさだ。セカンドシートは6:4の分割可倒式で、シートを前に跳ね上げれば奥行きは145cmにまで拡大できる。しかも、跳ね上げたセカンドシートが乗員と荷物を仕切る役割を持つので、荷室に重量物を積んでいても安心感は高い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
搭載されるエンジンは、ガソリン直噴エンジン「GDI」タイプの3.5リッターV6。3750rpmで最大トルクの35.5kgmを発生するが、排気量が大きいだけに2000rpm以下でも十分力強い。低回転を多用する街なかでも、ちょっとアクセルを踏み込んでやると必要な加速が得られるから、大きなボディのわりには軽快に運転できる。高速でもトルクに余裕があるが、キックダウンして加速する場合などは、エンジンからのノイズが多少気になるかもしれない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
SUV用のオールシーズンタイヤを履くことから、オンロードでは接地感がやや稀薄で頼りなく、ロードノイズも目立つ。路面の荒れたところでは、細かいショックを遮断しきれない場合もある。しかし、おおむね乗り心地は良好で、しかも、高速道路では意外にフラット。ワインディングロードでも、ロールはやや大きめながら、コーナーの入り口で倒れ込むようにロールすることはないから、運転していてさほど不安を感じずにすむ。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年2月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年9月登録
テスト車の走行距離:9665km
タイヤ:(前)265/70R16 102S(後)同じ(いずれもヨコハマ GEOLANDER G039)
オプション装備:寒冷地仕様(2万6250円)/チャイルドシート固定専用バー(8400万円)/マルチディスプレイステーション&7インチワイドセンターディスプレイ+ダイバシティガラスアンテナ+TVチューナー&TVアンテナ+リヤビューカメラ+ナビ取付用ハーネス+後席7インチワイド液晶ディスプレイ(15万7500円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:256.0km
使用燃料:52.4リッター
参考燃費:4.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
NEW
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
NEW
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
NEW
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
NEW
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。 -
NEW
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2025.10.15試乗記スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。 -
第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して
2025.10.15エディターから一言レクサスがラグジュアリーブランドとしての現在地を示すメディア向けイベントを開催。レクサスの最新の取り組みとその成果を、新しい「RZ」と「ES」の機能を通じて体験した。