ホンダ・オデッセイL 4WD(5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・オデッセイL 4WD(5AT) 2004.02.10 試乗記 ……375.0万円 総合評価……★★★ “ちょっとワル”風のツラがまえで登場した3代目。ホンダを救ったミニバン「オデッセイ」の最新版はどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが報告する。
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終わりの始まり?
「立体駐車場に入らないのは大した問題ではない」と、車高1600mm余の軽自動車(「ザッツ」……おぼえてる?)を出したメーカーが放つ、“立体駐車場に入庫可能な”全長4765mmのミニバン。
……と、それはともかく、「扁平燃料タンク」「コンパクトなリアサス」「排気管の取りまわしを工夫」してフロアを下げ、室内空間を犠牲にすることなく、1550mmの全高を実現したのは立派。
ドライブフィールは、高めの着座位置をのぞけば、まるで普通のワゴンと変わらない。最小回転半径5.4m。「VGR」(可変ステアリングギアレシオ)、それに短くなったノーズの恩恵で、街なかでの取りまわしもさほど苦にならない。問題は、角度のついた太いAピラーのせいで、交差点ほかで曲がるたび、大きく視界が遮られること。オデッセイの開発陣は、本当にこれでイイと思ったのかしらん?
ニューオデッセイは、爛熟したジャパニーズミニバン市場のひとつの到達点。“デッカク”“ユッタリ”乗りたい守旧派ミニバン好きは、まもなくホンダの戦列に加わる(とウワサされる)「日産エルグランド」「トヨタ・アルファード」対抗モデルにまかせ、オデッセイは思い切ってアグレッシブにまとめられた。
でも、3代目のステアリングホイールを握っていると、「いったいミニバンである必要があるのか?」という根本的な疑問が生じるわけで、ミニバンがかくも普及すると、「そういえば、3列目って使わないな」と本気で気づくユーザーも現れるはずで、「4代目はサードシートがオプションでもいいんじゃないか」なんて気の早いことを考えはじめ、「そもそも2列シートにして、余裕の空間を得た方がいい」てな結論を導き出すと、これは「アヴァンシア」になっちゃってダメなんだな。売れないから。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年10月17日に発売された3代目オデッセイ。3列シート7名乗車のスペックはそのままに、「ミニバンを、発明しなおしました」をキャンペーンフレーズとする低い全高が特徴。立体駐車場に入庫可能な1550mm(4WDは1570mm)のハイトを実現しつつ、車内の床面を80mm低くすることによって、車内の高さは先代よりむしろ5mm高くなった、と謳う。2830mmのホイールベースは、先代と変わらない。
エンジンは、3種類のチューンを用意した2.4リッター直4(200ps/190ps/160ps)。トランスミッションは、FFモデルがCVT(アブソルートは5AT)、4WD車が5段ATとなる。
(グレード概要)
3代目オデッセイのグレードは、ベーシックな「S」、中堅の「M」、装備を充実した「L」、そして外観をスポーティに装い、ハイチューンのエンジンを搭載した「アブソルート」で構成される。いずれも、FFほか4WDあり。
テスト車のLは、Mグレードと比較すると、16インチのホイールがアルミとなり、前席サイドエアバッグ、1から3列目までをカバーするカーテンエアバッグが標準装着となる。携帯するだけで施解錠できる「スマートキー」や8wayのパワーシート(運転席)、ゾーンコントロールできる空調関係など、快適装備が強化される。また、サードシートをスイッチひとつで床下に収納できる「3列目電動床下格納シート」も標準となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
SFアニメから抜け出てきたような、どこかおどろおどろしいインストゥルメントパネル。デザイン面で思いっきりアグレッシブに振って、少々「やり過ぎちゃった」感がある。とはいえ、保守的ミニバン層は、次なる新型ミニバンで拾うから、これでいいのだろう。
ナビゲーションシステムを操作するための“突起したマウス”ことオプションの「プログレッシブコマンダー」は、画期的に使いやすい。一方で、デザインに偏重した、空調、オーディオ関係のボタン類は、操作性がいまひとつ。いずれも、注視しないと使えない。走行中のオーディオ類の操作は、ステアリングホイールのボタンで行え、ということか。
どうせなら、シーケンシャルシフトを備えたATシフターを痕跡レベルまで省略し、その分、電装系、快適装備のコントローラーを極限まで充実したらおもしろかったのに。
(前席)……★★
立派な見かけをもち、「ホールド性を高め、疲労軽減を徹底追求した」と資料で説明されるシートだが、身長165cm、体重60kg、足短めのリポーターには、体圧が上手に分布しないためか、「疲れる」と感じた。体が「シート奥に引き込まれるよう、スプリングを後ろ下がりに設定」されたのが、個人的な好みに合わなかったのかもしれない。
角度のついた太いAピラーは、特に右折時の視界に大きな問題をもたらす。
(2列目シート)……★★★★★
エアコン、ライト、テレビと、いたれりつくせりのセカンドシート。ゆったりした座り心地。じゅうぶんに取られた、膝前、頭上の空間。ミニバンの常識通り、2列目は特等席。
真ん中も、スペース的には座れるが、なぜかヘッドレストがないので、首の後ろが、スースー冷たい。ここは肘かけの場所と心得るのが正解。
セカンドシートは分割可倒式で、ダブルフォールディングもできる。
(3列目シート)……★★
ほどほどに座れるサードシート。さすがにこのクラスになると、コンパクトミニバンのように、3列目乗員が「物品扱いされる」悲哀を感じずにすむ。最低限のヘッドクリアランスとニースペース、そしてクッションが保証される。座面はやや後ろさがり。リクライニング機能はない。長いステーをもつヘッドレストは加点、セカンドシートの頑丈な骨に邪魔されて、足先を2列目シート下に入れにくいのが減点要素。
荷室サイドのスイッチで収納可能なサードシートにはオドロク。そして呆れる。練熟したミニバン文化の到達点!?
(荷室)……★★
床面最大幅98cm、奥行き44cm、1m以上ある天井までの高さと、サードシートを使っていても、ほどほど実用的なラゲッジスペース。
サードシートを床下に収納し、セカンドシートを畳めば、2mを超える奥行きをもつ、広大なラゲッジスペースが出現する。セカンドシート背もたれ背面には、サードシートとの隙間にわたす「カーゴボード」が用意され、両席間を平らにつなぐことができる。うーむ……。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
3世代目オデッセイは、先代にあった3リッターV6が落とされ、2.4リッター直4一本となった。とはいえ、テスト車の160ps版でも、独り乗車では「オッ、V6か!?」と思わせる出足の力強さがある。日常レベルで使う分には、動力性能に不満を感じることはないだろう。
ニューオデッセイに採用された「i-VTEC」は、バルブのリフト量を切り替える、いわずとしれた「VTEC」に加え、吸気バルブのバルブタイミングを連続的にコントロールする「VTC」を加えたインテリジェントなパワーソース。VTECは、低回転域では2本の吸気バルブのうち1本を休止する、燃費にふったタイプ。ハイテクを活かして、環境性能と動力性能のバランスを上手にとった。
トランスミッションは、FFモデルには新開発のCVTが、今回の4WD車には5段ATが組み合わされる。シフトはスムーズで、プログラムもいい。従来、4気筒モデルは4段ATだったから、スペック面でも不足はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
オデッセイは、初代からミニバン分野では頭抜けたハンドリングのよさをもっていた。車高が下がったニューモデルでは、名実ともに「ミニバンにしては」のことわりが不要になった。
「低床化のためのコンパクトなサスペンション」と聞くと、乗り心地への悪影響が心配されるが、新しいオデッセイは、ライドコンフォートの面でむしろ向上した、と思う。市街地でのドライブでは舗装の荒れや凸凹をやんわりいなし、高速巡航も安楽。ハンドリング面でも破綻はない。もちろん、フル乗車で、公道をサーキットがわりに走った場合には、保証の限りではないが……。
なお、4WDシステムは、FFをベースに必要に応じてトルクを後輪に分配するオンデマンド型。機構的には、多板クラッチを用いたこれまでの「デュアルポンプ式」に、ワンウェイカムを追加したのが新しい。前後に回転差が生じた際の、つまりフロントがスリップしたときの応答性を上げるのが狙いだ。
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年12月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1206km
タイヤ:(前)215/60R16 95H(後)同じ(DUNLOP SPORT230)
オプション装備:Honda HDDナビゲーションシステム+本革シート+AFS(アダプティブ・フロントスライディングシステム)+リアエンターテインメントシステム
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):高速道路(2)
テスト距離:--
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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