ホンダ・オデッセイM FF(CVT)【試乗記】
悪そうだが、涙もろい 2003.12.23 試乗記 ホンダ・オデッセイM FF(CVT) ……282.5万円 立体駐車場に入れられる3代目「ホンダ・オデッセイ」は、つまりどういうクルマなのか? 『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠が、ニューモデルに乗って考えた。勝ち気な人から生まれたミニバン
クルマは作った人を語る。初代のオデッセイは、それまでの所帯じみた多くの国産ミニバンとはまったく違って、生活臭の少ないあか抜けた印象が何よりも魅力だった。他のミニバンより知的な感じさえしたものだ。
大ヒットとなったこのモデルの開発に携わったのが杉山智之さんで、今でもおつき合いさせていただいている彼は、初代オデッセイどおりの知的でジェントルな方である。
で今回は3代目。最初に見たときには「おお、悪そうになったな!」と感じたところにLPLの竹村宏さんにお目にかかり、何となく納得した。誤解しないでいただきたい。別に竹村さんは悪い人でもないし、ジェントルマンでもある。でも、何か妙な気迫があるのだ。実際にすごく勝ち気なタイプだという評判だが、それはそのまま新型オデッセイにも表れている。
初代オデッセイは、ミニバンを「茶の間クルマ」から「リビングあるいはスタジオ」へと変えた。そして3代目もまたミニバンに新しい価値を付与した。極限するならパーソナルカーとしてのミニバンとでもいった感じを与えた。単に屋根が低くて駐車場に入れやすいだけじゃないし、重心が低いおかげでハンドリングが向上しているということだけでもない。「走って楽しくなければミニバンといえどもクルマじゃない」、そう訴えるタイプになったのだ。
その性格がもっともシンボリックに表れているのがアブソルートだが、今回乗った“標準型”というべき「タイプM」でも、その基本姿勢は変わらなかった。
よくできた乗用車
Mタイプでも結構鋭い目でにらみを効かせた形を意識しながら新型に乗る。低めのポジションだけでも「疲れたサラリーマンのオトーサン」といった気分は薄くなる。確かにアイポイトはこの種のクルマとしては低いが、通常のセダンよりはやや高い。ちょっと新鮮な感覚である。かといって上下に薄いという感じもない。開発スタッフの、フロアを低めようとした懸命な努力がうかがい知れる。
ただしルーフも低めたための弊害がまたある。それはAピラーを大きく傾けざるを得なくなったことで、しかも衝突安全性も確保しなければならないから、この斜めのピラーがひどく太い。
実はこのクルマに初めて乗ったのは、ホンダのテストコースでだった。ヨーロッパの道を模したそこでは、敢えて右ハンドルのまま右側通行した。そんな状況ではひどく右前の見切りが悪かった。これに比べれば通常路の左側通行では多少救われるが、それでも狭い道で対向車が現れたときは注意が必要だ。
これを除くなら新型オデッセイは、“よくできたミニバン”というよりは、“よくできた乗用車”だった。つまり比較的水準の高い乗用車でありながら、サードシートも持っていて7人乗れるクルマと理解した方がいい。慣れるまでは何となくボディの長さが気になるが、意外と小まわりがきくのもいい。
アブソルートはいらない?
2.4リッターのエンジンはノーマルでは160psだが、それでもそこはエンジンのホンダ。全域スムーズで気持ちがいいし、大きなボディにふさわしい中低速トルクを持つ。それ以上にCVTに感心した。ホンダのCVTはどんどん進化している。別に普段は使わなくても、マニュアルモードだと7段切りというのも面白い。
215/60R16の「ダンロップSPスポート230」が与える乗り心地もかなりいい。速度の如何に関わらず、フランス車のようなしなやかさが感じられるし、ノイズも比較的少ない。ハンドリングもミニバンとしては相当に軽快だから、個人的にはアブソルートは要らないと感じた。
一見突っ張っていて悪そうだけど、実は意外となみだもろい人。新型オデッセイはそんなクルマである。たぶん、竹村さんもそういう人だろう。
(文=webCG大川 悠/写真=荒川正幸/2003年12月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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