マツダ・アクセラ20C(4AT)【試乗記】
無難は敵 2003.11.15 試乗記 マツダ・アクセラ20C(4AT) ……213.0万円 マツダの世界戦略モデル第4弾「アクセラ」。2リッターセダン「20C」に乗った自動車ジャーナリストの笹目二朗は、たたずまいや走りに好ましさを感じたが、気になることもあるという。コーナリングを楽しめる
一見ワゴンにも見えるハッチバック「アクセラスポーツ」と異なり、「アクセラ」のセダンは、セダンらしいたたずまいを持ち、個人的にはこちらの方が好ましく見える。
試乗した2リッターの「20C」は、直後に乗った2.3リッターハッチ「アクセラスポーツ23S」よりノーズが20kg軽いため、軽快な動きが約束される。前後重量配分はハッチバックの方がリアが重く、ステアリング特性はアンダーステアが軽い。セダンの方がアンダーステアは強いけれども、軽快感を利してタックインを誘うなど、積極的に姿勢を変えてコーナリングを楽しめる素地は大きい。チューニングによっては、ハッチバックよりスポーティなセダンをつくり得る。ボディ剛性も高いように感じた。
穏便で紳士的
2リッター直4DOHC16バルブにバランサーシャフトは付かないけれども、ストロークは2.3リッターより10.9mm短い。コンロッドが長いぶんピストンの首振りが減少し、高回転域の滑らかさは上だ。いずれにせよ、ロングストローク型ユニットだから、シャープな吹け上がりよりはトルク感を楽しむタイプだ。巷にはさらに繊細で滑らかな4気筒エンジンもあるが、マツダはロータリーエンジンのスムーズさが高レベルにあるだけに、コンベンショナルなエンジンの、滑らかさの基準設定がむずかしいのかもしれない。
4段ATは、時代的にはやや遅れを感じさせるとはいえ、チューニングは良好。シフトショックは少なく変速作業はスムーズだ。ギアレシオはワイドだが、トルク幅の広いエンジンの性格を活かし、巧くつないで加速していく。これら穏便で紳士的なマナーは、おとなしい実用本位の4ドアセダンには好ましい性格である。
成功の鍵は“個性”
アクセラは、欧州で中核をなす“ゴルフ サイズ”のクルマで、サイズとして中間に属するだけに難しい面もある。ハッチバックのフォーマルセダンならば、もうすこし大きなサイズを求めるユーザーも多いようだ。
よって、アクセラセダンが認知されるには、徹底して実用性や効率を追求するとか、スタイリングを思い切って個性的に仕上げるなど、何らかの手段で強烈に魅力をアピールしなければならない。無難にまとめることは敵である。現状では、「ファミリア・セダン」のような、あえて言えば、営業車に使う低価格4ドアセダンのイメージが感じられた。アクセラは今後、埋没しないだけの個性を獲得できるかどうか、それが成功の鍵を握っていると思う。
(文=笹目二朗/写真=郡大二郎(K)、清水健太(S)/2003年11月)

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。