スバル・レガシィアウトバック2.5i(4AT)/3.0R(5AT)【試乗記】
吉とでるか凶とでるか 2003.11.08 試乗記 スバル・レガシィアウトバック2.5i(4AT)/3.0R(5AT) ……297.5万円/345.5万円 オンロードだけでなくラフロード走行も考慮した“クロスオーバービークル”の「スバル・アウトバック」。先代「ランカスター(輸出名アウトバック)」の“隠れファン”という、自動車ジャーナリストの森口将之が箱根での試乗会に参加した。グランドワゴンからアウトバックへ
2代目レガシィツーリングワゴンをベースとし、1995年にデビューしたときは「グランドワゴン」。それが2年後に「ランカスター」の名が現れ、その後のモデルチェンジでもそのままだったのでこのまま行くかと思いきや、2003年10月のフルモデルチェンジでは「アウトバック」という名前になった。海外では最初からアウトバックとして売られていたので、世界統一名称に改めたといえばそれまでだが、それにしてもひんぱんに車名が変わるモデルだ。
バリエーションは「3.0R」と「2.5i」の2つ。3リッターエンジンはツーリングワゴンやB4と同じく、フラット6のDOHC24バルブ。日本ではアウトバック専用となる2.5リッター4気筒は、旧型にあたるランカスターのDOHCからSOHCの16バルブになった。パワーは先代に比べ170psから165ps、トルクは24.3kgmから23.0kgmへとダウン。しかし、250ps、31.0kgmを発生する3リッターモデルとのすみ分けがはっきりして、むしろ好ましく思える。
ちょっと驚いた
最初に乗ったのは2.5i。外観は大型バンパーやオーバーフェンダー、サイドシルプロテクター、大径タイヤなどでアウトバックであることを主張するが、ツーリングワゴンとの差別化は以前より控えめになった。200mmの最低地上高を確保するために、フロアとシートが高くなったものの室内もワゴンと変わらない。乗り降りのしやすさと視線の高さを除けば、ツーリングワゴンとまったく同じだった。
2.5リッターエンジンは、アイドリングではスバルサウンドをかすかに響かせるが、走り出すと他の新型レガシィと同じように、独特の音は聞こえない。さすがに大きな4気筒だけあってトルキー。
ふつうに加速するなら2000rpmぐらい回せばすむし、それ以下の回転数でも、クルマを前に押し出してくれる。レスポンスはおだやか。アウトバックのキャラクターにあった、ゆったりしたリズムが心地よい。ATは4段のままだが、まったく不満がなかった。
ところがシャシーは、エンジンとは対照的。しなやかなストローク感、たおやかなロールが特徴だった旧型ランカスターとははっきり違っていて、ツーリングワゴンに限りなく近い。つまり硬くて、低速では鋭いショックを伝えてくるが、高速ではフラットになる。そしてステアリングは軽く、切れ味はかなり鋭い。旧型の延長線上にある乗り味を期待していた僕は、ちょっと驚いた。
2.5iの4WDシステムはいわゆる「アクティブ・トルク・スプリット4WD」。通常「前:後=60:40」のトルク配分をとり、必要に応じてトルク配分を変化させる。コーナーでは、フロントが外にふくらむ気配をみせたあと、リアの駆動力を増やして安定させるというタイプだ。M+S(マッド&スノー)タイヤということもあって、グリップのレベルはほどほどだが、リアから滑り出すことはほとんどない、安全第一の性格だ。このあたりは、旧型に近かった。
開発スタッフに話を聞くと、旧型はストローク感のあるサスペンションのために、高速での操縦安定性が不足していた。また、海外に比べて日本での売れ行きがイマイチで、ユーザーの年齢層が高いことが悩みだともいっていた。そこで新型では、性格を人気のツーリングワゴンにかなり近づけたという。このほうが、販売面では成功を収めるかもしれない。しかし、旧型の国産車らしからぬ鷹揚な乗り味が好きだったひとりとしては、残念な変更に思った。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
あっているのは6気筒
気をとりなおして(?)3.0Rに乗り換えると、こちらはエンジンとシャシーのバランスがとれた乗り物だった。
フラット6は、低回転のトルク感は2.5リッター4気筒に劣るが、3000rpm以上ではキャパシティの違いをアピールする。回せば回しただけ元気が出てくる感じだ。だからアクセルを積極的に踏んで、ハイペースを保ちたくなる。こちらのATは5段のマニュアルモード付きだが、それが当然に思えてくる。
2.5iよりボディが重くなったおかげもあって、乗り心地はしっとり感が加わった。細かい揺れが少なくなり、ショックの伝わりかたはマイルド。それでも硬めではあるが、エンジンとのリズムがあっているので、違和感はなかった。
先代ランカスターでの6気筒はあきらかにノーズへビーだったが、アウトバックではそうは感じない。それでいてノーズの重さは、ステアリングの重さや切れ味を自然にしてくれている。こちらの4WDシステムは「VTD-AWD」。トルクを「前:後=45:55」に不等配分する高度なシステムで、かなりのスピードまで、ステアリングを切ったぶんだけ曲がってくれる。スポーティな走りに向いたハンドリングだ。
アウトバックが6気筒メインで開発されたことが、はっきりわかった。開発スタッフもそれを認めていた。限りなくツーリングワゴンに近いシャシーには、6シリンダーのほうが合っている、と思った。エンジンの重さがいろいろな意味でいい方向に働いている。でも、これでは車高以外に、ツーリングワゴンと違うところがないのでは?
長い目で見たとき、アウトバックの性格をツーリングワゴンに可能な限り近づけたことがはたして吉と出るのか。ランカスターの隠れファンだったひとりとして、興味をもって見守りたい。
(文=森口将之/写真=清水健太(S)/峰昌宏(M)/2003年11月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。































