ポルシェ911カレラ4シリーズ【海外試乗記】
シーンを選ばぬ安定性 2012.12.06 試乗記 ポルシェ911カレラ4シリーズ「ポルシェ911」シリーズに四駆モデルの「カレラ4」が加わった。RR派を自認する筆者をうならせた(?)新型「911カレラ4」の走りをオーストリアからお届けする。
グラマラスな肢体
2012年11月初旬のオーストリア・グラーツ近郊はとても冷え込んでいて、山間部にはもう積雪が見られる状況だった。例年ならば、秋の終わりの気持ちの良い季節だそうだが、今年のヨーロッパは冬の訪れがいつになく早いのだ。しかし、そんなコンディションは今回ばかりは、むしろおあつらえ向きだったと言えるかもしれない。何しろ試乗したのはポルシェの新型「911カレラ4」と「911カレラ4S」だったのだから。
メカニズムに触れる前に、触れずにはおれないのがそのアピアランスだ。先代と同様、ワイド化されたボディーはリアセクションが44mm幅広になり、タイヤサイズも10mm増に。スーパースポーツ的な華やかさをたたえた「991」シリーズの肢体を、さらにグラマラスに演出している。
特に印象的なのはリアビュー。左右テールランプを結ぶストリップがワイド感を一層強調している。駆動方式より何より、ルックスで選ぶ人がいても、これなら全然不思議じゃない。
無論、中身だって十分にソソってくる。フルタイム4WDシステムは先代の後期型から使う電子制御式のPTM(ポルシェ・トラクション・マネジメント)の最新型。しかもカレラ4Sには、MT車にPTV(ポルシェ・トルク・ベクトリング)、PDK車にPTV Plusが搭載される。つまり前後だけでなく左右輪間の駆動力配分まで自在に制御できるわけだ。
目に見える四輪駆動の効果
「カレラ4」に「カレラ4S」、「クーペ」に「カブリオレ」とさまざまな組み合わせを試したが、共通して言えるのはステアリングフィールがRRモデルよりわずかに重みを増しているということ。今回の試乗車はすべてウインタータイヤが履かされていたが、その分を差し引いても手応えには確かに違いがある。実際、メーターパネル上にリアルタイム表示される4輪の駆動力配分を眺めていると、通常走行時でも想像以上に前輪に力を配分していることがわかる。
しかも、そこはさすが電子制御。運転を見て、今は効率性重視なんだと判断すると、クルマの方で自動的に前輪への駆動力配分を減らす、なんてロジックも搭載されている。また、PDK車の場合、コースティング時にはできる限り走行抵抗を減らせるよう、PTMのクラッチも切られる。できる限りの安定性を、できる限り走行抵抗を減らしつつ獲得できるよう、コンマ1秒単位で制御されているのである。
手のひらに確かなグリップ感が伝わるだけでなく、こうして目に見えるかたちでフルタイム4WDの効果が示されることで心理的にも楽になるのか、常に絶大な安心感の下にステアリングを握ることができる。つかの間の晴れ間にも、あるいは豪雨の中でも、同じ気分でアクセルを踏み込めたのは、そのおかげだ。
もちろん気分だけでなく、実際に挙動が多少乱れても、そのまま一瞬待っていれば、駆動力が4輪に適切に配分され、PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネジメント)の介入を待つまでもなく自然に挙動は収束されてしまう。それを一度体感すれば、なおのこと大胆に攻めていける。リアエンジン独特の挙動を安心して引き出しやすいあたりは、本来RR派の筆者でもたまらないものがあった。
これがポルシェの電子制御
この新型911カレラ4/4Sには、他にもさまざまな新機軸が盛り込まれている。まずスポーツクロノパッケージ付きの7段MT車には、“SPORT PLUS”モードでの自動ブリッピング機能が備わった。シフトダウン時にアクセルを煽(あお)って回転合わせをする作業を、クルマがやってくれるのだ。
試してみると「それぐらい自分でやるよ」と思う一方、自分より明らかにうまいシフトダウンに、ちょっと悔しい気持ちに。一般道でも役立つが、それこそサーキットなどでは、回転合わせに失敗して姿勢を乱す可能性が減るだけに、一層安心して攻められそうではある。
ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と、PAS(ポルシェ・アクティブセーフティ・システム)にも注目。前者は、先行車との間で車速や車間距離を自動調整するもの。そして後者は、追突の危険性を察知するとブレーキをスタンバイ状態にし、表示と音で警告して、それでもダメなら最終的には自動ブレーキをかけるシステムである。まさかポルシェに、こんな装備が……とも一瞬思うが、その制御はさすがポルシェで、ACCなど本当にきめ細かくストレスのない走りをのっけから実現しているのだから参ってしまう。
ポルシェ911はデイリーユースできるスポーツカーの最右翼。そう定義するならば、雨の日も風の日も構わず乗れる比類ないスタビリティーを、何も犠牲にすることなく実現したカレラ4/4Sは、まさに理想の911と言えるかもしれない。それでも個人的には、RRモデルこそ911……という思いはまだ強い。けれども、新型カレラ4/4Sで一日中、目まぐるしく変わるコンディションの下を走りに走って、その気持ちに今までにないぐらいの揺らぎが生じたことも、これまた本当なのである。
(文=島下泰久/写真=ポルシェジャパン)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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