ポルシェ911ターボカブリオレ(6MT/5AT)【海外試乗記】
文句ないカブリオレ 2003.08.08 試乗記 ポルシェ911ターボカブリオレ(6MT/5AT) ターボルックに先を越された(?)「ポルシェ911ターボカブリオレ」のプレス試乗会が、イタリアはトスカーナ地方で行われた。走りながらも、トップを開閉できるオープンポルシェ。自動車ジャーナリスト、河村康彦が報告する。290km/hのオープン
史上最速のカブリオレ――そんな称号を与えられそうな1台が、2003年9月のフランクフルトショーを期に発売される「ポルシェ・911ターボカブリオレ」だ。
けれども「その姿、最近、すでに見たおぼえがある」という方がいるかもしれない。もちろん、“デジャブ”などではない。911ターボカブリオレのルックスは、つい1ヵ月ほど前にオーストリアはチロルの山中で爽快なドライビングを楽しんだ「911カレラ4Sカブリオレ」のそれとウリふたつ……。
いやいや、そんな表現をしたらターボカブリオレに失礼というものだろう。そもそもは、カレラ4Sの方こそ、別名“ターボルック”と呼ばれるように、911ターボの衣装を拝借したものであるからだ(カレラ4Sカブリオレの試乗記
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013561.html)。
というわけで、カレラ4Sカブリオレとターボカブリオレは、ほとんど同じ遺伝子を備えた姉妹モデル。ただし、走りのパフォーマンスはもちろん、ターボカブリオレの方がグンと強力だ。
実際、ルーフを閉じた状態での最高速は、MT仕様車が305km/hと、クーペボディの「ターボ」とまったく同じ。そんなコトをするヒトがいるかどうかは別として、「ルーフを開いた状態でも290km/hはカタイ」というのだから、“史上最速のカブリオレ”の面目躍如である。
拡大 |
拡大 |
カブリオレの嬉しい特長
最低気温摂氏5度と、オープンエア・ドライビングには少々の忍耐を必要としたカレラ4Sカブリオレのテスト舞台に反省してか(?)、ポルシェ本社がターボカブリオレの国際試乗会に選んだロケーションは、大きく南に下ったイタリアはシエナ近郊。が、ヨーロッパのほぼ全域を熱波が襲うというタイミングと重なったこともあり、こちらはこちらで最高気温が35度超! 容赦なく照りつける強烈な日差しは、たちまち人間の体から大量の水分を奪っていく。それが、実感される!!
こんなときに嬉しいのが、911カブリオレシリーズの「50km/h以下であれば、走行中でもトップの開閉が可能」という特長。ヨーロッパ各地の速度規制は、「集落を通過する際は50km/h」とおおよそ相場が決まっている。暑さを感じたら、こうしたタイミングを利用してルーフを閉じればいいし、木漏れ日のなかを気分よく走れそうとなれば、逆の操作をすればいい。
ちなみに、911シリーズが3.6リッターエンジンへとマイナーチェンジしたのを期に採り入れられたこの機能。弟分たるボクスターでも採用するのは、「残念ながら困難でアル」と担当エンジニア氏。911シリーズのカブリオレは、すべてがスイッチの操作ひとつで完結する完全自動式。これに対し、ボクスターではウィンドウフレームへのロック操作だけは手動で行わなければならない。それが、採用不可の理由である。
望外な乗り心地
それにしても、911ターボカブリオレのドライビングは、痛快そのものだった。正直いって、イタリア・トスカーナ地方の美しい風景のなかをこんなクルマで存分に走りまわるのは、「最高の“役得”だ!」と、読者の皆さんにちょっと申し訳ない気持ちだ。
カレラ4Sカブリオレ同様、A、Bピラー下部とサイドシルの接合部分に専用の補強が加えられたボディは、多くの人が「911」というクルマに期待するであろう高い剛性感を約束する。420psというツインターボ・パワーを無理なく受け止めるタフネスぶりを感じさせてくれる。フロントに225/40、リアには295/30という18インチのシューズを履くことを考えれば、その乗り心地も「望外なもの」とぼくには思えた。
さすがに、段差の強い踏み切りを乗り越えたりしたときに、ブルブルッとくる振動感は、「クーペと同じ」とはいわない。が、オープンエアでの爽快な走りという、クローズドボディには真似のできない特技をアドオンしてくれることを考えれば、その程度のことに文句を付けようという人は、そういないはずだ。
そんな魅力的な最新911ターボカブリオレ。“2004年”モデルとして、カレラ4Sカブリオレと同時に日本にも導入されそうである。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2003年8月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。





































