ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(後編)】
冷たい猛牛(後編) 2003.07.05 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルド(6MT) 500psの5リッターエンジンを搭載するランボルギーニ・ガヤルド。“手頃なランボ”を世に出すにあたって考慮されたことは? 『webCG』記者による試乗インプレッション。慎重な予防線
アウトモビリ・ランボルギーニは、ガヤルドのトップスピードを309km/h、0-100km/h加速は4.2秒と豪語する。今回の試乗会は、「対向車に怯える田舎の山道」と「速度感を得にくいサーキット」という不利なステージが続いたが、それでもベイビィブルは「たしかに速い」と思った。
停止状態から、ロウに入れたままエンジンをフルスケール使うと、たちまち100km/hに達する。日本では、ドコへ行くにもギアレバーを左上に入れたままで済む……はずはないが、10気筒をチョコっと回して、ポン、ポン、とギアを上げていけば、トップギア2400rpmで100km/h巡航ができる。そして、細かく刻まれたギアの必要性を疑うほど、どのギアも低回転から十分な加速を見せる。
スロットルペダルとエンジンの連絡には、「ドライブ・バイ・ワイヤ」(ペダルとエンジンが電気的につながれる)が採用された。新しいV10は、いまひとつ強い個性に欠けるけれど、太いトルクに加え、優れたレスポンスが大きな長所だ。不用意にムチを入れると容赦なくドライバーのケツを蹴ッとばす。
さて、リポーター同様、必ずしも運転のプロフェッショナルとは限らないリッチピープルのために、ボローニャ(とインゴルシュタット)の自動車メーカーが、500psカーをリリースするにあたって採った手段は、「4輪駆動システム」と、乱れた挙動を安定させる電子デバイス「ESP」の搭載である。毎日使える手頃なランボルギーニとして、大パワーに潜む危険性に対して、慎重に予防線が張られたわけだ。
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あわやスピン!
ガヤルドの駆動系は、キャビンの背後に置かれたV10から後にむかって、デフ、ギアボックスと続く。フロントへ駆動力を渡すプロペラシャフトは3分割され、エンジンの(ノーズにむかって)右側を通る。ドライブトレインが左右対称にならないのを気持ち悪く感じる感じる向きもあろうが、ガヤルドの開発にあたっては「低い重心」が優先された。
センターデフは、アウディクワトロ御用達のトルセン式ではなく、先代12気筒モデル「ディアブロ」にならったシンプルなビスカスカプリングが用いられる。トルク配分は、前:後=30:70がベースだ。
リアのデファレンシャルは、ロッキングファクター45%の強力なリミテッドスリップデフが組まれ、一方、フロント左右輪は、空転した車輪にブレーキをかける「ABD」がLSDに換えられた。
道の両側から吹き出す水のトンネルのなか、500psのエンジンを唸らせてタイトカーブに挑む。ウェット路面のハンドリングコースは、うまくアンダーステアを導き出すレイアウトになっていて、試しにスロットルを抜き、ステアリングを強引に切り込んでリアを振り出してみる。と、「あわやスピン!」という段階でESPが介入し、横を向く手前で車速がグンと落ち、グリップが回復する。
ガヤルドのESPはセンターコンソールのスイッチでカット可能だが、最終局面では機能が復帰するという。とはいえ、実際に“回っている”テスト車も目にしたから、当たり前のことながら、すべてを救済できるわけではない。
クールな外観と
「4WD」「低い重心」「ESP」のおかげで、ランボのミドシップスポーツは安定感抜群。おっかなビックリ、何度か“曲がり”にトライしたあとは、不安を感じることなくハードコーナリングを楽しめた。リアのブッ太い「ピレリPzero」が路面を蹴る感覚が痛快だ。押し出されるフロントは、必要以上に頑張らず、それでいて接地感を失わない。
タイヤサイズは、前輪が「235/35ZR19」、後輪が「295/30ZR19」である。
“カッティング・エッヂ”な見かけとは裏腹に、ランボルギーニ・ガヤルドは、「刃の上を歩くような(歩いたことはないが)緊張感をともなわずにハイスペックを満喫できる」と思った。本当に限界を超えた後の挙動についてはリポーターの知るところではないが、よくも悪くも、オーソドクスで安心感高い動きに終始する。
試乗会が開催される約半年前、2003年2月に、アウトモビリ・ランボルギーニは、サンタアガータの工場に新しい生産ラインをひいた。もちろんガヤルドのためで、シングルシフトで日に8台を組み立てることができる。2003年は最低600台、04年には1300台前後、ムルシエラゴと併せて1500-1700台をロールアウトさせたいと、ランボルギーニ(とアウディAG)は目論む。フェラーリの、だいたい半分にあたる。
「フェラーリ360モデナ」の好調ぶり−−モンテゼーモロ社長自ら、ポルシェに負けじと「毎日使ってください」とアピールした−−を見るにつけ、新型スーパースポーツをして“every day basis”と主張するファイティングブルの声にも力が入るというものだ。
ランボルギーニはアウディという新しいパートナーを得て、かつての「ウラッコ」が果たせなかった夢、ポルシェ911に代表され、いまやフェラーリが大きな成功を収めている“比較的台数の出るエクスクルーシブスポーツカー市場”に再び挑戦する。ガヤルドがクールなのは外観だけではない。成り立ち、基本レイアウト、気筒数、ハンドリング、そして販売戦略まで、背後に冷たい計算を隠している。
(文=webCGアオキ/2003年7月)
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(中編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013521.html
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013503.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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