トヨタ・カルディナ GT-Four Nエディション(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カルディナ GT-Four Nエディション(4AT) 2003.01.09 試乗記 ……319.0万円 総合評価……★★★★スペシャルでスポーティ
“打倒レガシィ”を合言葉に(?)開発され、スペック上ではめでたくそれを達成しながら、走りの質感や“本物感”ではどうしてもスバル「レガシィ」を凌駕できなかった先代「カルディナ」。そこで今度は、レガシィと真っ向から勝負するデザインは諦めて(??)、思い切りスペシャル&スポーティな装いで登場した。それが、3代目となる新型カルディナだ。コンセプトは変われど、「今度こそライバルに負けじ!」という開発陣の思い入れは激しかった様子。走りの点で、定評あるレガシィが再度ターゲットとされたことはいうまでもない。
新型の目玉は、2リッター直4DOHCターボエンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせた「GT-Four」。レガシィワゴンで最もスポーティな「GT」シリーズの対抗馬だ。なかでも“Nエディション”は、フロント倒立式ダンパーやスポーツABS、レカロ製フロントシートなどを備えた走りのスペシャリスト。そのデキやいかに?
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1992年に初代がデビューした、トヨタのステーションワゴン。現行モデルは、2002年9月13日にフルモデルチェンジした3代目である。「ザ・ツーリングマシン」を標榜する新型は“走り”をセリングポイントとし、ツーリングワゴンの雄、スバル「レガシィツーリングワゴン」をライバルとする。エンジンは、1.8リッターNA、2リッターNAと、2リッターターボの3種類がラインナップされる。トップグレード「GT-Four Nエディション」には、フロントサスペンションに倒立式ダンパー、リアにはモノチューブショックアブソーバーを採用するなど、走行性能が強化された。
(グレード概要)
GT-Four“Nエディション”は、シリーズ中最もスポーティなトップグレード。Nエディション専用のショックアブソーバーを開発。フロントサスペンションは倒立型、リヤには高圧ガスを封入したモノチューブ型を採用した。さらに、ボディのたわみを効率良く吸収するという「フロントコイルバネ付きパフォーマンスロッド」、トルセンLSDやスポーツABSなどを装備する。インテリアは、フロントにレカロ社製スポーツシートを装着するのが、ノーマルとの違い。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
カルディナの室内に初めて乗り込むと、センタークラスター部が“アルファロメオのグリル型”なことに驚く。1度気になると、同じ造形のATセレクターのベース部分までも“アルファの記号”に見えてしまう。
とはいえ、トヨタとしてはもちろん「そんなつもりは毛頭ない」。アルファ流“盾型デザイン”は、「大胆で斬新なイメージを狙った結果、こうなったに過ぎない」というのだが……。
オーディオパネルまで専用デザインとしたセンターコンソールのルックスは、確かになかなかフレッシュだ。しかし、そこに多数散在するスイッチの、操作性の悪さには閉口する。空調温度を変えたいときも、いちいちスイッチを注視しなければならない。ついでにいえば、目盛り線が何となく煩雑なスピード&タコメーターの視認性も、あまりよいとは思えなかった。
(前席)……★★★★
“Nエディション”のみ、フロントシートに「自動車シート界のルイ・ヴィトン」(??)たるレカロ製を標準装備する。ただし、いわゆるフルバケットタイプではなく、コンフォート指向の「AM19」と呼ばれるタイプ。リクライニング調整がダイヤルのため、角度を一気に変えたい場合はチョイ不便だが、それ以外の機能性はさすが。ノッチ式と違い、ごく細かい調節が利くのも利点だ。スポーツ走行でもサポート性は高く、乗降性もまったく犠牲になっていない。エア式のランバーサポートも有効で、長時間ドライブの疲労感も少ない。欲をいえば、高さ調整機能が欲しかった。
(後席)……★★★
6:4のスプリット可倒&リクライニング機能付きのリアシートは、生地を前述レカロのフロントシートとコーディネイト。ルーフラインが後ろ下がりなため、ヘッドスペースはフロントほどには大きくないが、大人2人なら各方向に十分ゆとりある空間を確保する。3人分が標準のヘッドレストは、着座の際にきちんと引き出さないと、敢えて上体と干渉するデザイン。リクライナーをルーフ部分に内蔵させてまで中央席用シートベルトを3点化したことも含め、安全への真摯な取り組みは評価したい。
(荷室)……★★★★
新型カルディナのラゲッジスペースは、「スタイリッシュワゴンの外観から想像するよりも広い」印象だ。リアエンドにかけてアッパーボディの絞込みがきつく、リア・オーバハングも“5ドアハッチバック”風に短いこのクルマの荷室は、ステーションワゴンとしては小さい思われるかも知れない。だが、テールゲートを開くときれいにフルトリミングされ、さらに奥行きの大きなラゲッジスペースが広がる。直方体状のこのスペースは、そのままではゴルフバッグの横積みを拒否するが、荷室両サイドに備わる収納ボックスのリッドを、片側だけ外すことで、それを可能とする。日本で使うには、十二分の容量といえるだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)…★★
ハッキリいって、ドライブトレーンはこのクルマのウイークポイント。260psと33.0kgmのパワーは強力だし、2リッターターボで「優ー低排出ガス」のクリーン度もエライ!しかし、エンジンの回転フィールはどことなくザラついて粗いし、今どき4段仕様のATにも満足できない。お陰でせっかく「シーケンシャルモード」を備えるのに、積極的に使う気にはなれなかった。ギアの、隣合うポジションのステップ比が大きく、シフトするとエンジン回転数が大きく変動するためだ。実はこのクルマに搭載されるエンジン&トランスミッションは、共に基本設計が古い。もちろんそれぞれリファインされてはいるが、そろそろ抜本的な刷新を望みたい部分だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
テストコースで食した印象では、この項目の点数は“5つ★に近い4つ★”だった。けれども、その後一般道を700kmほど走った印象は、“4つ★に近い3つ★”。乗り心地が、テストコースの時ほど洗練されていなかったからだ。
確かに高速走行でのフラット感は高く、段差をいなすしなやか感も強い。けれども、首都高速の大きな目地などでは、期待より強いショックが伝わるし、混雑した街中=低速域での揺すられ感も強めだった。“Nエディション”が履くタイヤは、真円率の高い「新工法による少量生産品」だが、低速域でのパターンノイズと、わだちでのワンダリング(ステアリングのとられ)の大きさが減点対象である。ただし、操安性能は一級スポーツカー並の秀逸さ。さすがは「独ニュルブルクリンクサーキットで走り込んだ」というだけのことはある。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2002年9月30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)215/45ZR/17(後ろ)同じ
オプション装備:DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションII+ガラスプリントTVアンテナ+音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター=25.7万円/音声案内クリアランスソナー+レーンモニタリングシステム+ブラインドコーナーモニター+ステアリングスイッチ付きスポーツ3本スポークステアリング=6.2万円
走行状態:--
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。

























