トヨタ・カルディナ GT-FOUR(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カルディナ GT-FOUR(4AT) 2005.03.16 試乗記 ……333万7950円 総合評価……★★ 先々代「カルディナ」で、ユーラシア大陸を横断した金子浩久。レガシィキラーとして、装いも中身もスポーティに生まれ変わった「カルディナGT-FOUR」の印象は……。ドライな味わい
熟成されたターボエンジンと四輪駆動システム、専用開発されたダンパーとサスペンションなど、ステーションワゴンのカルディナを速く走らせるために特別に仕立てられたグレードが「GT-FOUR」である。
たしかに、どんな速度、どんなエンジン回転数、どんなギアにあっても、スロットルペダルを踏み込めば、加速は鋭い。
ステアリングのわずかの動きにもクルマは機敏に反応し、向きを変える。乗り心地は引き締まっており、スポーティな雰囲気は大いに楽しめる。だが、数日間試乗してみて残った印象は、「スポーティって、これだけじゃないはずなのにな……」というものだった。
世のなかには、さまざまな種類の“スポーティ”な走りっぷりのクルマが存在しているものだし、カルディナ流はそのうちのひとつに過ぎないのだ。スポーツワゴンというカテゴリー自身は、イギリスの「シューティングブレイク」に代表されるように、由緒正しいものだ。カルディナGT-FOURが、“速く、スポーティなステーションワゴン”を目指したのは、理解できる。だって、ちょっと魅力的だもん。速く、運転して面白い、ステーションワゴンって。クルマ好きならば、誰でも一度は想い憧れたはずだ。
ならば、カルディナGT-FOURが欲しくなるかというと、すぐには首肯できないのだ。その理由は、あまりにも明快なカルディナの“スポーティ”さは、すぐに飽きてしまう類のものだからだ。
サスペンションやステアリングシステムを支えるシャシー全体のキャパシティが不足しているから、運転していて疲れてしまう。スポーティな感覚が楽しめる余裕を生み出さないからだ。もちろん、エンジンパワー、四輪駆動システム、足まわり、操舵系統など各々の部分はクラスの水準から秀でている。だが、それが1台のカルディナGT-FOURというクルマにまとめられると、トータルでの印象がほとんど残らない。つまり、技術はスゴいんだけど、クルマとしての魅力に結び付いていない。そこが、同じGT-FOURといっても、セリカとカルディナの大きな違いだ。
2003年に先々代のカルディナを運転して、ユーラシア大陸を横断した者から言わせてもらえば、カルディナの良さというのは、ほどほどのサイズのボディに見合ったパワーのエンジンを載せているところにあったと思う。それで、淡々と走るところにカルディナらしさがあるのだ。ドーピングしたようなカルディナなんて、ピンと来ない。日本での販売価格を考慮すれば酷な指摘なのかも知れないが、総じて、味わいや趣に欠け、底が浅い。
広大で使い易い荷室に魅力を感じる人には、同じ2リッターでも大人しい「1AZ-FSE」や1.8リッター「1ZZ-FE」ユニット搭載モデルを勧める。
マイナーチェンジによって、レンズカバーが透明になったテールライトユニットも理解できない。なぜ、わざわざ古臭くするのだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1992年に初代がデビューしたトヨタのスポーツワゴン、現行モデルは、2002年9月13日にフルモデルチェンジした3代目である。2005年1月にマイナーチェンジを受け、内外装が小変更された。ちなみに、02年9月から05年2月までの累計販売台数は6万1176台。月割りすると約3400台/月を販売する、中堅モデルである。
「ザ・ツーリングマシン」を標榜する新型は“走り”をセリングポイントとし、ツーリングワゴンの雄、「スバル・レガシィツーリングワゴン」をライバルとする。エンジンは、1.8リッターNA、2リッターNAと、2リッターターボの3種類をラインナップ。トップグレード「GT-FOUR」には、フロントサスペンションに倒立式ダンパー、リアにはモノチューブショックアブソーバーを採用するなど、走行性能が強化された。
(グレード概要)
「GT-FOUR」は、ターボチャージドエンジンを唯一搭載する、カルディナのトップグレード。「セリカ」の最強バージョンと同じGT-FOURを名乗る、スポーティなカルディナのイメージセッターである。
エンジンは、熟成された「3S-GTE」型2リッター直4DOHC 16バルブターボ(260ps/6200rpm、33.0kgm/4400rpm)、トランスミッションはシーケンシャルモード付き4段ATのみの設定。センターデフにビスカスカプリングを使ったフルタイム4WD方式による、全天候での安定性を謳う。
足まわりは、フロントにコイルバネ付きパフォーマンスロッドを採用して、ボディ剛性をアップ。ブレーキは、前後とも他グレードより1インチ大きいサイズとなる。GT-FOURが装着する、倒立式ダンパー(前)とモノチューブショックアブソーバー(後)は、マイナーチェンジで不採用となった。
豪華&スポーティに、レカロスポーツシートや本革巻きステアリングホイール&シフトノブ、CDチェンジャー&MD付きオーディオなどが標準で備わる。アンチスピンデバイス「VSC」を標準装備するのは、GT-FOURだけだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
黒色主体のインテリアデザインには、優れたところも、ハッとされるような奇抜なところもない。センターコンソールの銀色のトリムが、本物のアルミニウム製ではないことは、価格を考えれば当然とはいえ、トヨタならもうすこし質感を高くできる気がする。スポーティモデルとして、スピードメーターの速度を表示する数字が正しい向きに向いているのが80〜100キロだけで、他の数字は傾いていたり、横を向いていたりするのは、“デザイン”だか“悪ふざけ”かわからない。
デビュー直後も、メーターまわりのデザインには疑問が残ったが、マイナーチェンジでも改良されていないことにがっかりした。
(前席)……★★★
レカロの名前が刻まれたスポーツタイプだけあって、シートの座面が硬めなのはクルマのキャラクターに合っていて好ましい。一方、前後スライドや背面の角度調整など、ノッチの幅が大き過ぎる点は改める必要があるだろう。ちょうどいいところに決められない。ちなみに、前席にはいずれも、空気ポンプ式のランバーサポートがつく。
(後席)……★★
空間はボディサイズ相応だが、シートの掛け心地が悪すぎる。“掛け心地”以前の問題で、揺れ動く身体をキチンとホールドしてくれない。これでは、長距離や長時間を走ったら、背中や腰が痛くなってくるだろう。そのせい(?)で、荷室の項目が★5つになったともいえるが……。
(荷室)……★★★★★
荷室の広さと使いやすさは、カルディナ最大の美点。ワゴンを目一杯使いこなしたい人のためによく工夫されている。荷室の空間を少しでも多く確保するために、後席シートは多くの日本車メーカーのエンジニアが嫌う“2アクション”式をあえて(というか、良心的に)採用した。つまり、座面を前に跳ね上げ、シートバックを前倒しするタイプである。タイヤハウスの荷室内への張り出しは皆無だから、荷室の下半分はほぼ完璧な直方体だ。クルマに荷物をたくさん積んだ経験のある方ならご存知だろうが、この“直方体”が積載量と使い勝手を決めるのである。カッコばかりのワゴンではなく、荷物をたくさん積んで移動することをちゃんと考えて造られている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
260馬力を発生するまでに熟成された3S-GTEエンジンは、前述の通り、どの回転域、どの速度域、どのギアから踏み込んでも、鋭く加速していく。が、それだけ。高性能エンジンが持つはずの気持ちよさ、官能性のカケラもない。ターボエンジンの悪癖である回転落ちの悪さが気になるし、ガサツな排気音もやかましい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
ステアリングを素早く切れば、クルマもピピッと向きを変えてくれる。そこだけに注目すれば悪くないが、その特性だけが目立つような性格になっている。ゆっくり切ったときや、少ししか切らない場合には、なにをやってもクルマは緩慢に反応するだけ。つまり、手だけで曲げているような感覚、といえるだろうか。わかりやすい演出だが、これでは買ってすぐに飽きるだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2005年2月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:1746km
タイヤ:(前)215/45R17(後)同じ(いずれもブリヂストン・ポテンザRE040)
オプション装備:音声案内クリアランスソナー(4万2000円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション月ワイドマルチAVステーション(24万450円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:106km
使用燃料:19リッター
参考燃費:5.8km/リッター

-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
NEW
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
























