BMW 523dブルーパフォーマンス Mスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
オトナ味のBMW 2013.03.07 試乗記 BMW 523dブルーパフォーマンス Mスポーツ(FR/8AT)……777万1000円
2リッター直4ディーゼルターボを搭載したミドルクラスセダン「523dブルーパフォーマンス」に試乗。環境性能と走りのバランスを確かめた。
時代にふさわしい価値
「X5」にて口火を切って以降、ブルーパフォーマンスの名で展開するディーゼルエンジン搭載車のラインナップを瞬く間に充実させたBMWは、今までの、何より走りが前面に出ていたブランドイメージを急速に転換させているように見える。従来だってBMWは、環境への配慮という今の時代においては必須の価値をないがしろにしていたわけではない。むしろ先んじていたブランドである。しかし、それがディーゼルというある意味で分かりやすい商品にて訴求されたことによって、より明確にユーザーへと伝わった。そう感じられるのだ。
うれしいのは、そこはBMWの仕事だけに、代償として走りの良さを差し出すようなことはしてないということ。新しいかたちの“駆けぬける歓び”が高い環境性能と一体になって、時代にふさわしい価値を生み出している。そんなふうに見えるのである。
これらBMWのディーゼルモデルの中でも、個人的にイチ推しとしたいのが今回試乗した「523dブルーパフォーマンス」だ。その心臓となる直列4気筒2リッターディーゼルターボエンジンは、6気筒エンジンを積むX5以外のブルーパフォーマンスモデルに共通するもので、最高出力184ps/4000rpm、最大トルク38.7kgm/1750-2750rpmのスペックにも変わりはない。トランスミッションは8段AT。エンジン・オート・スタート/ストップシステムが備わるのも、やはり共通だ。しかしドライブフィーリングは、これが想像以上に違った印象をもたらすものとなっている。
ジェントルでスムーズ
スタートボタンを押してエンジンを始動する。ここでまず、ディーゼルエンジン特有のカラカラという音や振動がほとんど伝わってこないことにうならされる。率直に言って、「3シリーズ」や「X3」ではこれが結構盛大で、いかにもディーゼルという感じなのだが、このクルマの場合は、確かに遠くでそれっぽい音がしてはいるが、それだけ。音量は小さいし、ステアリングが震えることもない。これで不快に思う人は、まずいないはずだ。
一方、トルクフルな加速感は、いかにもディーゼルエンジンらしい。発進の際には、アクセルペダルを深く踏み込むまでもなく、スッと軽やかにクルマが動きだす。さらに80kgも車重のあるX3ですら十分な余裕を感じさせるエンジンだけに当然ではあるが、実際にトルクは「523i」とは比較にならず、「528i」すらもしのぐ分厚さなのである。
その後も、市街地で流れに乗る程度の加速ならば、エンジン回転数が2000rpmを超えることはめったにない。回転計の針がそこに達する前に8段ATが小刻みにシフトアップを繰り返しながら、気付けば速度が乗っているという感覚である。
信号などで停止すると、大抵の場合はエンジンが自動停止する。先述のように音や振動は気にならないレベルにあるのだが、停止してしまえばそれすらも皆無となる。また、再発進の際も、トルクがあるだけにアクセルを深く踏み込む必要がないから、アイドリングストップ状態のクルマで時々やってしまう、発進の際の一瞬のタイムラグに焦ってアクセルを踏み込み過ぎ、いきなり急加速するような事態も、ほとんど起きない。とてもジェントルでスムーズな運転へと自然に導いてくれるのだ。
飛ばさない時の気持ちよさ
こういう特性なので、少なくとも強力なエアコンの効きを必要としない季節であれば、通常の走行はほぼECO-PROモードのままで十分。つまり、さらに効率を究めることができる。
そもそも低速域からトルクがあるので、Mスポーツが備えるシフトパドルの出番はほとんどない。とは言え、その気になれば4000rpmを超えてもスムーズさを失うことはないから、思い切り引っ張ることもできる。ワインディングロードなどでは、そうやって走らせた方がリズムが取りやすいのは確かだ。
今回の試乗車はMスポーツということで、若干締め上げられたサスペンションに、前後異サイズの18インチタイヤを履いていた。かつてのMスポーツのように乗り心地が荒っぽいということはなく、これでも十分に快適ではあるが、個人的には選ぶならゆったりとしたストローク感を持つ5シリーズのサスペンションのうまみが生きるノーマルを選ぶ。その感触は絶品で、速度域や路面状況を問わず、しっとりとした乗り味を満喫できる。
いずれにしても、この523d ブルーパフォーマンスが本当に爽快なクルマであることに変わりはない。とりわけ飛ばさない時の気持ちよさがイイ。ゆっくり走らせていてもエンジンは力がみなぎっていて頼りがいがあり、上まで回そうという気にさせず、それでも十分に快感がある。
こんなふうにいい気持ちで走っていると、それはゆとりにつながり、周囲のクルマに対する譲り合いの気分が生まれる。それは安全にもつながるし、もちろん燃費にだって貢献するだろう。クルマにせかされないこの感じ、まさかBMWで味わえるだなんて思わなかった。
もちろん、そこはBMW。いざ鞭(むち)を入れてやれば、上々のスポーツ性を披露することに変わりはない。ディーゼルに懐疑的な人も、一撃でノックアウトされるだろうことは保証する。要するに523dブルーパフォーマンス、普段は悠然と構えつつ、でもやる時はやる。まさにオトナ味のBMWなのである。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。


































