ボルボV60 T6 AWD R-DESIGN ポールスター パフォーマンス パッケージ装着車【試乗記】
由緒正しい公認チューン 2012.12.27 試乗記 ボルボV60 T6 AWD R-DESIGN ポールスター パフォーマンス パッケージ(4WD/6AT)……649万円
ボルボが、モータースポーツでタッグを組むポールスター・レーシングと共同開発した「ポールスター パフォーマンス パッケージ」。新車保証も実燃費も犠牲にしないという、メーカー公認チューニングの実力を試す。
プラス20万円で得られるプラス25ps
2012年11月。箱根でボルボの「ポールスター パフォーマンス パッケージ」装着車のプレス向け試乗会が開かれた。ポールスター パフォーマンス パッケージとは、T6エンジン(B6304T)こと3リッター直6ターボのエンジン・マネジメント・プログラムを変更して、最高出力、最大トルクともに向上させるパッケージのこと。
ノーマルT6エンジンは、82.0×93.2mmのボア×ストロークから、過給機の力を得て、最高出力304ps/5600rpm、最大トルク44.9kgm/2100-4200rpmを発生する。ポールスター パフォーマンス パッケージでは、最高出力が25ps増しの329ps/5400-6500rpm、最大トルクは4.0kgm太い48.9kgm/3000-3600rpmとなる(いずれも目安)。
会場には、北欧のハンサムカー、4ドアサルーンの「S60」とツーリングワゴン「V60」が用意されていたが、同じエンジンを積むボルボ車なら、ほかの車種でもポールスター パフォーマンス パッケージを適用することが可能だ。具体的には、「XC60」「V70」「XC70」「S80」の、それぞれT6モデルだ。
自分の愛車が該当するなら、最寄りの正規ディーラーへ持ち込めば、メカニックが専用プログラムをインストールしてくれる。費用は、作業工賃込みで20万円となる。もちろん、施術によって、車両の保証が損なわれるようなことはない。新車保証はそのまま継続されるので、万が一の場合にも、安心だ。
開発パートナーはサーキットの女房役
ポールスター パフォーマンス パッケージの「ポールスター」とは、モータースポーツにおけるボルボの公式パートナーである、ポールスター・レーシングのこと。今回のスペシャルプログラムの開発を手がけたレーシングチームである。
ポールスター・レーシングとボルボの関係は深い。ポールスター・レーシング・チームの前身にあたる、フラッシュ・エンジニアリング・レーシング・チームは、1994年にボルボがBTCC(英国ツーリングカー選手権)に参加したときからの付き合いで、当初は「850」のレースカーを走らせていた。96年にBTCCに倣ったSTCC(スウェーデン・ツーリングカー選手権)が発足すると、850に続き、「S40」、「S60」と、次々とボルボのレースカーをつくっていった。
2005年にオーナーが変わったのを機に、ポールスター・レーシングと名前が変わった。ボルボのパートナーということもあるのだろう、このチームは“環境フレンドリーな"レーシングガレージを標榜(ひょうぼう)し、バイオ燃料を使うハイパフォーマンス「C30」のプロトタイプを開発したり、同様にE85(ガソリンとアルコールの混合燃料)で走る「S60」を、レースコースに投入したりもしている。ちなみに、今回のポールスター パフォーマンス パッケージを導入しても、燃費性能に悪影響を与えることはないという。
試乗会場に用意されたブルーの「S60」。そのイメージの源泉は、「TTAレーシング・エリート・リーグ」で活躍する「ボルボS60TTA」だ。TTAとは、スウェーデンで開催されるシルエットフォーミュラ・レースのこと。サーブ、BMW、シトロエンなどが参加していて、2012年のマニュファクチュラー・チャンピオンは、ボルボである。
魅力は「走り」だけじゃない?
“公式"スペシャルチューンが施されたV60をドライブすると、なるほど、2000-5000rpmあたりのパワーがノーマルモデルよりもうひと伸びする、ような気がする。しかし、それはたぶん、事前にエンジン特性の表を見ていたからであろう。1900rpm付近から、パフォーマンス パッケージの効果が表れ、エンジンが吹けきるまでピークパワーを維持する。ノーマルでは、やはり1900rpmあたりから台形になるトルク特性が、3000-3600rpmまで太り続ける。
もともと300ps超のターボ車である。パフォーマンスに不満があろうはずがない。エンジン・マネジメント・システムに手が入れられたことにより、クルマはもとより、ドライバーのハートもチューンされ、しゃかりきに走る。すると、「もう少しサポートがいいシートが欲しい」「アップダウンが激しいコースでは、ブレーキの容量を増やしたい」「アシをもっと硬めて……」と、いつしか気持ちは「ポールスター パフォーマンス パッケージ ステージ2」へと向かっているが、しかしステージ2の用意は、まだ(?)、ない。
ポールスター パフォーマンス パッケージ装着車とノーマルモデルの外観上の違いは、小さな四角い「polestar」リアエンブレムだけ。むしろ大事なのは、オーナーズブック(英語版)とは別に、わざわざポールスター・レーシングから郵送される「ポールスター・パフォーマンス認定書」だろう。これぞ、スペシャルボルボに乗っている証し。「自分のクルマはサーキットとつながっている」という、心のよりどころである。
(文=青木禎之/写真=河野敦樹)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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