「VW ニュービートル」に乗る

1999.08.27 自動車ニュース webCG 編集部
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「VW ニュービートル」に乗る(8/27)

フォルクスワーゲンジャパンが9月18日より発売する「VW ニュービートル」に試乗した。

注目を集めることは簡単だけど、それが優しい眼差しであるとはかぎらない。その点、「ニュービートル」は、笑顔を誘う天才である。そんな待望のニューモデルがついに日本に上陸した。

ご存知のとおり、ニュービートルは1994年1月のデトロイトショーで披露された「コンセプト1」の量産モデルだ。当時、アメリカにおけるフォルクスワーゲンの販売台数はピークの10分の1まで落ち込んでいた。そんな冬の時代をなんとか抜けだそうと、アメリカ出身のデザイナーたちが提案したのがコンセプト1だった。

一見してフォルクスワーゲンとわかるデザインだが、先代ビートルとはなにもかもが違っている。デザイナーの狙いはココにあった。最新のデザイン手法を用いて、ちょっとレトロで誰が見ても懐かしく思うスタイルを作り出したかった。そして、多くのアメリカ人がこのクルマの市販を望むほど、大きな反響を呼んだのである。

日本でもコンセプト1には熱い視線が注がれた。1995年の東京モーターショーには、デトロイトのショーカーよりもひとまわり大きな2代目コンセプト1が展示された。大きさの違いは想定するプラットフォームの違いで、開発の過程でベース車両がポロからゴルフに移ったことを示している(アメリカではポロの販売計画はなかった)。

アメリカだけでなく日本での人気に手応えを感じたフォルクスワーゲンは、1996年3月のジュネーブショーで「ニュービートル」のプロトタイプを披露。そして1998年のデトロイトショーで正式なデビューを飾った。

それから1年半、ようやく日本に上陸したのは標準版の「ニュービートル」(239万円)と豪華版の「ニュービートル・プラス」(289万円)の2種類。搭載される2リッターSOHCエンジンやDSP(ダイナミックシフトプログラム)付4段ATは共通だから、グレードのチョイスは比較的簡単だろう。

今回試乗したのは、本革のインテリアやアルミホイール、スライディングルーフなどが奢られる豪華版のプラス(私個人としては布のシートで充分なのだが……)。運転席に陣取ると、あまりに奇妙な眺めに戸惑った。ウィンドシールドが遠くにあって、ダッシュボードが異様に広い。それほど大きなボディではないのに、クルマの四隅が見えないうえにフェンダーが膨らんでいるから車両感覚がつかめず、不安は募るばかりだ。

弧を描いて落ちていくリアウィンドーの弊害でリアシートのヘッドルームはミニマム。大人が長時間座るのは辛いから、「プラス2」と割り切ったほうがいい。

一方、「走る、曲がる、止まる」については、ベースのゴルフを凌ぐほどだ。ゴルフ時代の2リッターSOHCをリファインしたAQY型エンジンは、街中で使いやすく躾られていて、低中回転域で頼もしく、レスポンスにも優れている。それでいて上まできちっと回り、静粛性も格段に向上しているから、パートナーにはもってこいだ。乗り心地は、205/55R16サイズのオールシーズンタイヤがややドタバタするけれど、固すぎず柔らかすぎずの適度なセッティングになっている。

少なくともパッケージングの点では誉められないニュービートルだが、このクルマを否定する必要はまったくない。そう、広い室内が欲しければゴルフを買えばいいのだ。反対に、ニュービートルが気に入った人だけ、あるいは自分のライフスタイルに合う人だけ、このクルマを選んでほしい。(報告=生方 聡/写真=小林 稔)

 
「VW ニュービートル」に乗るの画像

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