フォルクスワーゲン・ニュービートル RSi【試乗記】
男っぽくて官能的 2003.01.07 試乗記 フォルクスワーゲン・ニュービートル RSi 世界限定250台、日本への割り当ては45台の「ニュービートル RSi」。3.2リッターV6搭載、巨大なリアスポイラーや18インチタイヤで凄みを増した高性能バージョンを、清水和夫がレポートする。会員コンテンツ「Contributions」より再録。ここまでやるか
フォルクスワーゲンの「ニュービートル」は世界的なヒット商品だ。「うら若い女性が安心して乗れる可愛いクルマ」であることが売れている理由のようだが、今回登場したド迫力のリアスポイラーを持つ高性能バージョン「RSi」は、とても細腕のドライバーには乗れそうもない。重めのクラッチとワイドなオーバーフェンダーは初心者にも辛いだろう。
「ここまでやるのか」と思わせるのがこのモデルの狙いだ。というのは外観が特徴的であるだけでなく、中身もものすごいからだ。エアロはビートルデザインの良さを失わないように控えめな感じだが、大きなリヤウイングがRSi最大の特徴。真っ赤な革シートとアルミ素材を使ったインテリアは、叶姉妹が見たら何というだろうか? 「お!ゴージャス」か「アラ、お下品」か。……そんなことはどうでもいい。
タイヤは18インチのミシュランパイロット、これは正しい選択だ。市販される18タイヤではミシュランが最高のパフォーマンスと品質である。
さて、RSiはギリギリまでローダウンされたサスペンションと組み合わされ、精悍な感じが漂う。エンジンは「ビートルカップ」のワンメイクレース車両に搭載されていたバンク角15度の2.8リッターV6を、ボア、ストロークともに延長した3.2リッターV6SOHC(225ps/6200rpm、32.6kgm/3000rpm)を搭載、駆動方式は4モーションと呼ばれる4WDシステムで、電子制御油圧多板クラッチの動作により、必要に応じて締結/開放を自動的に行う、いわゆるオンデマンド4WDだ。アウディTTと同じ考え方で作られている。
パワー不足だが走りはゴキゲン
このRSiを筑波サーキットで走らせたところ、なかなか"男っぽい"走り味だった。V6エンジンの音はまるでフェラーリサウンドのようにご機嫌である。が、気がつくとクルマが前に進んでいない。そう、RSi最大の悩みは音はともかく、エンジンのパフォーマンスが足りないことだ。
筑波バックストレートの最高速度は150km/h。ホンダのタイプR軍団と比べるとかなり遅い。でも、官能的な走りである点がRSiのいいところ。外観のわりにパワーが物足りないことを除けば、RSiの走りはとてもご機嫌だ。ステアリングのレスポンスもよく、コーナーでのアンダーステアリングが非常に小さい。サスペンションとタイヤ、それに駆動配分をセンターデフでうまくチューニングしている。
コーナーを激しく攻め込んでもアンダーが小さいので、いち早くアクセルを開けることができる。ステアリングの手応えもしっかりしており、この乗り味は、とても一世代古いゴルフIVのプラットフォーム使っているとは思えない。ブレーキも十分効くし、このようなチューンニングカーであっても、各輪のブレーキを個別に制御してクルマの横滑りを防ぐ、ESPなどの安全装備を怠らない点は、日本メーカーも見習う必要があるだろう。タイムアタックではESPをオフしにたが、基本性能が高いので作動させていてもタイムに影響はでなかった。
筑波サーキットでのベストラップは1分15秒3。ビートルカップのレーシングカーには及ばなかったが、ノーマルが確か1分23秒くらいだったから、恐ろしく速くなっている。価格を考えなければお奨めしたいが……。
(文=清水和夫/写真=フォルクスワーゲンジャパン/2001年11月27日)
