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【スペック】全長×全幅×全高=4340×1765×1411mm/ホイールベース=2690mm/車重=1440kg(ドイツ国内値)/駆動方式=FR/3リッター直6DOHC24バルブターボ(320hp/5800rpm、45.9kgm/1300-4500rpm)(欧州仕様車)

BMW M135i(FR/8AT)【海外試乗記】

秀逸なメーカーチューンド 2012.08.21 試乗記 渡辺 敏史 BMW M135i(FR/8AT)

BMWのコンパクト「1シリーズ」に、“M”の名を冠するスポーティーバージョンが登場。その走りを、本国ドイツで試した。
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「ポルシェ911」に迫る性能値

BMWといえば真っ先に立つ商品のイメージは「走り」。それをさらに際立だせるべく、ほとんどのモデルには、内外装や足まわりをよりスポーティーにする「Mスポーツパッケージ」が用意されている。そして一部銘柄には、BMWのモータースポーツ部門を統括するM社が開発およびアッセンブルを手掛ける「Mモデル」があるのもご存じの通りだ。

じゃあ今回の「M135i」が属するという「Mパフォーマンス」っつうのはなんなのよ? と問えば、市場に向けては「MスポとMモデルとの間を埋めるポジションに位置するBMWの新しいライン」と説明される。そう聞くと、アウディの「Sラインパッケージ」と「RSシリーズ」の間に位置する「Sシリーズ」を思い出す人もいるかもしれない。BMW本体とM社が共同で商品開発を行い、基準車の快適性や使い勝手をキープしながら、ポテンシャル的にはそれらを確実に上回り……と、事務的に説明すればそんな感じになるだろうか。

ちなみにヨーロッパではMパフォーマンスの銘柄はこのM135iが五つめ。既に、「5シリーズ」のセダンとワゴン、そして「X5」と「X6」に、トリプルターボ(!)で75.5kgmの爆発的トルクを発する3リッター直6ディーゼルユニットを搭載したモデルがラインナップされている。

ガソリンエンジンでは初となるMパフォーマンスモデル、M135iに搭載されるエンジンはバルブトロニックやピエゾインジェクターを採用した最新世代のN55型3リッター直6直噴ツインスクロールターボ。「335i」などに搭載されるそれに、独自のチップチューンを施しての最高出力は320ps。一方で、45.9kgmをわずか1300rpmから発生するフレキシビリティーも備えている。

組み合わされるトランスミッションは6段MTと8段ATの2種類で、後者のコンビネーションでは0-100km/h加速が4.9秒だから、その動力性能は“「ポルシェ911」イーター”の資質を備えるほどだと言っていい。一方でエネルギー回生システムやスタートストップシステムを備えることによりCO2排出量は175g/kmと、こちらは「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」並みに抑えられている。

「M135i」のリアビュー。マフラーエンドは左右2本出しとなる。
「M135i」のリアビュー。マフラーエンドは左右2本出しとなる。 拡大

BMW M135i(FR/8AT)【海外試乗記】の画像 拡大
一部アルカンターラが用いられるスポーツシート。日本に導入されるモデルも、同様のシートが与えられる。
一部アルカンターラが用いられるスポーツシート。日本に導入されるモデルも、同様のシートが与えられる。 拡大
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乗り心地のよさに驚く

M135iのディメンションは基本的に「1シリーズ」に準拠するが、サスペンションはもちろん専用チューニングとなり車高は10mmダウン。ECOプロモードも備えるダイナミックドライブコントロールと連動し、スポーツとコンフォート、二つのレートを使い分ける減衰力可変制御ダンパーが採用される。

組み合わされる前225、後ろ245幅の18インチタイヤはランフラットではなく通常の「ミシュラン・パイロットスーパースポーツ」となった。ブレーキではフロントに専用の対向4ピストンキャリパーを用いるなど、走りを意識したエクイップメントは随所に見てとれる。

試乗車は直近に追加された1シリーズの3ドアバージョンをベースにしたもので、トランスミッションは8段AT。エンジンのサウンドは室内にいると「心地よくスポーティー」という感じだが、はたで耳にすると相当どう猛で、音量こそ抑え気味ながら、その音質は“「トヨタ・スープラ」のイジリモノ”でも近づいてきたのか? と思うほどだ。何にせよ、最近耳にしなくなった直6ターボのたけだけしいサウンドに、古くからのクルマ好きは懐かしさも覚えるだろう。

走り始めからたっぷりのトルクを使って、直線的にトントンとスピードを乗せていく。その過程で驚かされるのは、乗り心地の良さだ。アシのまろやかな動きもさることながら、入力のインパクトの柔らかさなどを見るに、履いているタイヤの軽さやダンピング特性も相当効いているのだろう。
結果的にM135iは、コンパクトサルーンとしての性能が基準車より上であるばかりか、「3シリーズ」と比べても大差はないほど上質で洗練された身のこなしを、常速域で見せてくれる。


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1300rpmの低回転域から45.9kgmの大トルクを発生する3リッター直6ターボエンジン。カバーには「M Performance」のロゴが添えられる。
1300rpmの低回転域から45.9kgmの大トルクを発生する3リッター直6ターボエンジン。カバーには「M Performance」のロゴが添えられる。 拡大

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固有の魅力を備えている

さらに速度域が上がれば上屋の動きは大きくなるが、それを抑え込む上で効果を発揮していたのが可変制御ダンパーだ。
「ダイナミックドライブコントロール」をスポーツの側に設定すれば、高速域での挙動もピタリと安定。ビタビタと路面を捉えながら250km/hのリミットスピードまであれよあれよいう間に達してしまう。さすがに200km/hを超える領域では、速度の伸びや車体の安定感において空力的なロスも端々に感じられるが、アシの側は音を上げることはない。アウトバーンの合流から一気に200km/h超に達していく、その速さはお世辞抜きにポルシェ911にも比する勢いがある。

軽量なN55型エンジンの功(こう)もあって前後重量配分もこだわりのイーブンが保たれたM135iは、コーナリングのシャープさにおいても「コンパクトでスポーティーなBMWが欲しい」というニーズを裏切らない。
1.4トン台の車重(欧州仕様車)も、1シリーズとしての軽快感を削(そ)がないギリギリのところにあるといえるだろう。ステアリングを握る手首の動きだけでスイスイと向きを変えるアクティブさは想像通りだが、そこに一定のタメや粘りが感じられる辺りは、サスペンションセッティングの妙に加えて、ここでもあえてノーマルタイヤというM社のこだわりが効いている。
単にコーナリングスピードを追求しただけでなく、その過程にクルマの動きと対話する行間が持たされている。しかも、そのインフォメーションが普通のドライバーが公道で扱う上でも心地よいものに仕上がっているという点が、M135iの「Mパフォーマンス」たるゆえんといえるかもしれない。

ノーマル以上M未満――という、言葉にすれば中途半端な印象はみじんもない。速さと扱いやすさが気持ちよくバランスした秀逸なメーカーチューンド。M135iはそのラインナップにおいて、しっかり一本立ちできる魅力を備えている。

本国では5ドア版や四駆にも設定されるこのモデル、日本への上陸は2012年10月になる予定で、その仕様は5ドア+8段AT。価格は、500万円中盤の値札を下げていた先代の「135i」に近い、549万円となっている。

(文=渡辺敏史/写真=BMWジャパン)

「M135i」にはサーボトロニック付きの「バリアブル・スポーツ・ステアリング」が備わる。ワインディングロードでは俊敏なハンドリングを、高速道路では優れた直進安定性をもたらすという。
「M135i」にはサーボトロニック付きの「バリアブル・スポーツ・ステアリング」が備わる。ワインディングロードでは俊敏なハンドリングを、高速道路では優れた直進安定性をもたらすという。 拡大
運転席まわりの様子。8.8インチのディスプレイやiDriveコントローラー、オーディオシステムなど、快適装備の充実にもぬかりはない。
運転席まわりの様子。8.8インチのディスプレイやiDriveコントローラー、オーディオシステムなど、快適装備の充実にもぬかりはない。 拡大
ホイールのサイズは18インチ。大径の「Mスポーツブレーキ」が組み合わされる。
ホイールのサイズは18インチ。大径の「Mスポーツブレーキ」が組み合わされる。 拡大

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渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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