トヨタ・カローラ フィールダー1.5G “AEROTOURER”(FF/CVT)【試乗記】
運転が楽しいカローラ 2012.07.26 試乗記 トヨタ・カローラ フィールダー1.5G “AEROTOURER”(FF/CVT)……218万2223円
2012年5月にフルモデルチェンジした「トヨタ・カローラ」。セダンよりもスポーティーな足まわりが与えられたステーションワゴン「フィールダー」の1.5リッターモデルに試乗した。
セダンより格段にスポーティー
「これって、セダンとは全然別物のクルマじゃないの」――。新型「カローラ フィールダー」のステアリングを握ってすぐにそう感じた。この日はトヨタ主催の試乗会で、最初にセダンの「アクシオ」を1時間、続いてステーションワゴンの「フィールダー」を1時間試すことができた。どちらも同じパワートレインを積んだ1.5リッターモデルであり、乗り味も似たようなものだろうと高をくくっていたら、予想が完全に外れてしまった。
先に試乗したアクシオは、良くも悪くもカローラらしい乗り味。車体の挙動は安定志向で、パワートレインは燃費重視。乗り心地はやわらかく、静かでラクチンだけれども、ドライバーが能動的にクルマを操ろうとすれば、いろいろな面でダイレクト感に欠ける。これに対して、フィールダーの乗り味は格段にスポーティー。ハンドリングは軽快で、ドライバーの意図する方向に鼻先がすっと動く。アクセル操作に対するパワートレインの反応もより俊敏で、CVT特有の不自然さも気にならないレベルだ。乗り心地はアクシオより固いが、「スポーツワゴン」と考えればむしろ適切だろう。ドライバーにとって、運転して楽しいのは間違いなくこっちである。
これは、筆者的にはちょっとうれしい驚きだった。私事で恐縮だが、筆者が住むマンションの機械式駐車場は高さ制限1550mm以下のスロットにしか空きがなく、ミニバンなど背の高いクルマには買い換えられない。子供連れで旅行に出掛けると、コンパクトカーでは荷室が足りないし、セダンでは保守的すぎる。そんなわが家の愛車は7年落ちのステーションワゴンであり、将来の買い換えの最有力候補もステーションワゴンだからだ。
ミニバン全盛の昨今、日本の道路事情にマッチした小型ステーションワゴンは“絶滅危惧種”になりつつある。全幅1700mm以下の5ナンバーサイズに限れば、フィールダー以外には「日産ウイングロード」「ホンダ・フィットシャトル」くらいしか選択肢がない。ウイングロードはデビューから既に7年目。フィットシャトルのスタイリングはモノスペース的で、ステーションワゴンらしくない。そう考えていくと、最新の小型ステーションワゴンは事実上フィールダーの一択になってしまう。筆者にとっては寂しい限りの現状だが、フィールダーが運転して楽しいクルマなのは一筋の光明だった。
フィールダーだけの特権
ところで、セダンとワゴンでなぜこうも乗り味が違うのか。試乗会場に来ていたトヨタのエンジニアに質問すると、実は足まわりに2種類のセッティングがあることがわかった。フィールダーには1.8リッターと1.5リッターのモデルがある。このうち1.8リッターはスポーツグレードの位置付けで、標準で185/60R15のシューズを履く。1.5リッターの標準は175/65R15だが、メーカーオプションのアルミホイールとセットで185/60R15を履かせることができる(1.5Xを除く)。そして、185/60R15の装着車の足まわりには専用のダンパーやスプリングがおごられ、ステアリングのギア比もクイックに設定されているのだという。
今回試乗したのは1.5リッターだったが、タイヤはオプションの185/60R15を履いていた。いわば1.8リッターの足まわりに1.5リッターのパワートレインを搭載したモデルだ。一方、セダンのアクシオには1.8リッターがなく、1.5リッターでも185/60R15は選べない(標準は175/65R15)。つまり、スポーティーな足まわりはワゴンのフィールダーだけに与えられた特権なのである。とはいえ、同じフィールダーでも175/65R15の足まわりはより穏やかなセッティングが施されている可能性が高く、注意が必要だ。購入を考えている向きは、両方乗り比べることを強くお勧めする。
アクシオとフィールダーの味付けの違いは、主にマーケティング上の必要から生じている。アクシオは個人オーナーの平均年齢が64〜65歳に達しており、歴代カローラを乗り継いできたファンが多い。これに対し、フィールダーはスポーツやアウトドアが好きな20〜60代の幅広い年齢層に支持されているという。より若くてアクティブな顧客像に訴求するため、フィールダーだけにスポーティーな乗り味が与えられたのである。
ちなみに、新型カローラは車体の取り回しの改善や部品共通化によるコストダウンを狙って、車台が先代よりも一回り小さい「Bプラットフォーム」に変更された。シャシーの開発を担当したエンジニアによれば、Bプラットフォームはもともと「操舵(そうだ)感や乗り心地がしゃきっとしている」のが特徴で、アクシオの開発ではカローラらしいやわらかな乗り心地を再現するのに苦労したそうだ。逆に言えば、フィールダーではBプラットフォームの持ち味がストレートに生かされているのかもしれない。
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このままじゃもったいない
前回のアクシオの試乗記でも触れたように、新型カローラはAピラーの付け根を先代より100mmほど後退させたり、ドアミラーの取り付け位置を工夫したりするなどして、運転席からの斜め前方の視界を広げた。もともとは死角を減らしてシニアドライバーの運転をラクにするための配慮だが、これはスポーツドライビングでの安心感にもつながる。特に見通しの悪い右コーナーで前方の路面状況や対向車が見えやすいのは、フィールダーの美点と言えるだろう。
このように、クルマとしての出来はかなりいい。休日のアクティビティーのためのトランスポーターとしてだけではなく、目的地への移動そのものも楽しみたいドライバーにとって、悪くないチョイスだと思う。「カローラ=退屈なクルマ」と決めつけずに、試乗する価値アリだ。
だが、それだけにもったいないと感じる点もいくつかある。まず、内装のカラーが黒しかないこと。新型カローラのインテリアは、インパネからドアにかけて座席を囲むようにファブリックを貼ったパネルが配されており、デザイン上のハイライトになっている。アクシオの場合、ファブリックはブラウン、ベージュ、グレーの3色があり、シートの色もベージュとグレーから選べる。
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ところが、フィールダーはパネルもシートも黒一色で、選択肢がまったくない。しかも、1.5リッターモデルではパネルの表面がファブリックからカーボン調のシボ加工を施した樹脂に変わり、かなり安っぽく感じた。メーカーとしてはスポーティーなイメージを強調したいのだろうが、「黒=スポーティー」という発想はもう古い。フィールダーの顧客層はせっかく幅広いのだから、スポーツウーマン向けのカラフルな配色や、アクティブなシニアドライバー向けのシックな内装があってもよいのではないか。
グレード、装備、価格などの構成も、ややちぐはぐな印象を受けた。新型カローラの売り物の一つは、フリクション低減などの大幅改良で燃費性能を高めた1.5リッターエンジンと新開発のCVTである。動力性能は過不足なく、オプションのアイドリングストップ機構を装着すると燃費はJC08モードで21.2km/リッターに達する。これに対し、1.8リッターはアイドリングストップ機構が装着できず、燃費は同16.6km/リッターにとどまる。筆者としては最新の1.5リッターを積極的に選びたい。
しかし1.5リッターでは、1.8リッターに標準装備される185/60R15タイヤ、HIDヘッドライト、スマートエントリー、革巻きステアリングホイールなどがすべてオプションになってしまう。前述の通り、185/60R15タイヤはスポーティーな足まわりを得るために必須のアイテムだ。これらのオプションにアイドリングストップ機構を加えると、29万円の価格差がわずか数万円に縮小し、割高感がぬぐえない。ぜひとも見直してもらいたいところだ。
(文=岩村宏水/写真=高橋信宏)

岩村 宏水
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