フィアット500ツインエア スポーツプラス(FF/5MT)【試乗記】
MTバンザイ! 2012.07.08 試乗記 フィアット500ツインエア スポーツプラス(FF/5MT)……240万円
高いエコ性能と愛らしい“音振”で人気(!?)の「フィアット500」ツインエアユニット搭載車に、5MT仕様が登場した。手ずから操る2気筒エンジン、その運転体験とは?
250台の限定モデル
“MT派”が思わずガッツポーズしたくなる、そんな「フィアット500」が登場した。これまでも1.2リッターモデルには5MTの「フィアット500 1.2スポーツ」が用意されていたが、0.9リッター直列2気筒ターボ「ツインエア」では、シングルクラッチタイプの2ペダルMT「デュアロジック」しか選べなかったのだ。
もちろん、オートマチックのデュアロジックがあるからこそ、フィアット500は日本でもこれだけ広く受け入れられたわけである。そう思うと、この2ペダルMTの果たした役割はとても大きい。それは重々承知している。
しかし、MTの操作が苦にならない、あるいはMTが好きという少数派は、シフトアップ時に生じる空走感にいらだちを覚え、「ああ、これでMTだったらなぁ」と深くため息をついていたに違いない。
そういう私もMT派の端くれだから、250台の限定販売とはいえ、5MTの「500ツインエア スポーツプラス」を導入したインポーターに、とにかく「あっぱれ、よくやった!」と言いたいのだ。それでは順番に、その内容を見ていくことにしよう。
プラス20万円の中身
500ツインエア スポーツプラスの価格は235万円。限定ではないカタログモデルの「500ツインエア ポップ」が215万円だから、ちょうど20万円アップの計算である。“イタリアデビュー5周年記念モデル”という位置付けだけに、充実の装備が自慢である。
まず目を引くのは、ピアノブラックにペイントされたルーフとリアルーフスポイラー。流行のマットブラック仕上げの16インチアルミホイールとともに、ちっこくてかわいい500をスポーティーに彩っている。
ドアハンドルに加えて、テールゲートやフロントのモールディングがチタンマット仕上げになるのもこのクルマならでは。インテリアも、やはり鈍く光るグレーのデコラティブパネルや、ブラックとシルバーのシートを持ち込むなど、スポーティーな雰囲気づくりに積極的だ。
さらに、フロントフォグランプが付き、通常6万8000円のメンテナンスプログラム「イージーケア」が無償となるというのだから、20万円のエクストラを払っても、十分に元が取れる内容である。
早速、運転席に陣取り、アクセル、ブレーキ、クラッチのペダル配置にあまり違和感のないことを確認。輸入コンパクトの右ハンドル/マニュアル車では、往々にしてペダルが左にオフセットしていて運転しにくいことがあるものだが、このクルマの場合は特に気にならない。
アイドリングストップとの相性もバッチリ
エンジンをスタートさせると、ツインエアエンジン特有のポコポコという音と、それに伴う振動がキャビンに伝わってくる。どこか懐かしい雰囲気に浸りながら、クラッチをつないで走りだすと、1速のギア比が低いおかげで、発進はもたつかずに済む。
反面、気を抜くとあっという間にエンジンが回転を上げ、メーターのサインがシフトアップを催促してくる。「そうそう、マニュアルだった」と肝に銘じ、早めのシフトアップを心がける。すると500ツインエア スポーツプラスは、小気味よくスムーズにスピードを上げていった。
街中を流すくらいなら、せいぜい2500rpmまで回せば十分な加速が得られるツインエアエンジン。カタログを見ると、14.8kgmの最大トルクを1900rpmで発生するというが、感覚的には2500rpmを超えたあたりからトルクが盛り上がる印象で、追い越しや高速の合流では高回転に頼ることになる。
もちろん、0.9リッターといっても、数字よりはるかに力強い加速を示すのは、デュアロジックの500ツインエア ポップですでに証明済みだ。
5MTはアイドリングストップとの相性もいい。クルマが停止し、ギアをニュートラルに入れてクラッチペダルから足を離すとエンジンが自動的にストップ。逆に、クラッチを踏み込めばエンジンが再始動する。
これがオートマチックだと、ブレーキを緩めたときにエンジンがスタートする。クラッチ操作が省かれて発進の準備が素早く整うだけに、クルマが動き出すまでのごくわずかなタイムラグに、かえってイライラさせられるクルマは少なくないのである。そういう意味でも、このMTはイライラの解消に一役買っているわけだ。
唯一、気になったのは乗り心地だった。500ツインエア ポップの175/65R14から195/45R16に2インチアップされたシューズのせいで、路面によってはバネ下がバタつき、動きに粗さが目立った。とはいっても、十分受け入れられるレベルであり、このクルマの魅力をスポイルするほどではない。
というわけで、MT派にとっては見逃せない500ツインエア スポーツプラス。今回は限定モデルだが、ぜひ通常のカタログモデルへの昇格も検討してほしい。そのときは、タイヤのインチアップは控えめに。また、個人的には、「500C」に5MTを設定してもらえたら、もう言うことはない。
(文=生方聡/写真=小林俊樹)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
NEW
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
NEW
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
NEW
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(後編)
2026.8.30思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」をドライブ。前編ではそのパワートレインの中間加速のよさを語った山野。後編ではそこをもう少し掘り下げて聞くとともに、止まる、曲がるも含めたシャシー全体の印象を聞いてみた。 -
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.8.29試乗記「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。



































